<連載> ワクチン接種Q&A

ワクチンのメリットとデメリット 年代や性別、感染状況でどう違う?

疑問・質問「コロナとワクチン」(4)感染予防の恩恵と、副反応・アナフィラキシーのリスク

2021.05.14

 ウイルスに感染したくはないけれど、ワクチンの副反応やアナフィラキシーも気にかかる。新型コロナのワクチン接種では、相反する二つの思いに揺れ動く人も少なくありません。ワクチン接種のメリットとデメリットは、実際どの程度なのでしょう。年代や性別、感染状況によって、どんな違いがあるのでしょうか。

天秤イメージ

メリット=感染予防の効果、デメリット=副反応のリスク

Q1: 「一番心配なのは副作用です。あまり臨床試験(治験)も行われないまま接種すべきだという雰囲気になっていますが、血栓ができたなどのニュースもあり、不安です。アナフィラキシーなどの副反応が起きることより、接種による感染防止の方が重要という考え方に違和感があります」(60代前半女性
Q2: 「デメリットを知りたいです。何をもってワクチンが安全で、接種を勧めているのか。データや数字で根拠を知りたいです」(50代前半女性)

A: ワクチンを含めたほとんどの医薬品には何らかの副作用(副反応)が伴います。政府はワクチン接種のメリット(感染予防の恩恵)がデメリット(副反応のリスク)を上回るという判断から、国民に新型コロナウイルスのワクチンを打つよう勧めていますが、接種は強制ではありません。自分自身にとってのメリットとデメリットを比較し、最終的には自分で打つかどうかを決めることができます。

 ワクチンのデメリットは副反応です。現在、国内で接種が進むファイザー・ビオンテック社製のワクチンでよくみられる副反応は、体内の免疫反応に伴って生じる接種部位の痛みや発熱、疲労感などです。とくに接種2回目の疲労感や頭痛は過半の人が感じるなど、他のワクチンよりも発生頻度が高くなります。ただ、症状は数日以内に収まり、こういった副反応で亡くなった人はいません(詳細は、連載2回目「ワクチン副反応、国内の状況は? 年齢で副反応に差?」をご覧ください)。

 まれに起こる副反応には、ワクチン成分に対して起こる激しいアレルギー反応、アナフィラキシーがあります。厚生労働省によると、2月17日~4月25日までに633件のアナフィラキシーの報告がありました。専門家が精査した結果、このうちアナフィラキシーと認定されたのは94件でした。これは、100万回の接種につき37件の頻度(0.0037%)になります(詳細は連載3回目「新型コロナのワクチン、アレルギーあっても打てる? 花粉症や鼻炎は?」をご覧ください)。アナフィラキシーは、アドレナリンの注射など適切な治療を受ければ回復します。5月12日現在、接種後のアナフィラキシーで亡くなった人はいません。

新型コロナの陽性者数と死亡者数

 海外では、比較的若い世代で、まれな種類の血栓症が発生し、亡くなった人が報告されています。欧州医薬品局などは、ワクチン接種と因果関係があると考えられるとしています。まれな血栓症が起きたのは、英アストラゼネカ社製と米ジョンソン&ジョンソン(J&J)社製のワクチンで、どちらも「ウイルスベクター」を使っています。どちらも国内では接種が行われていません。アストラゼネカ社製は現在、国内で審査中です。J&J社製は国内で臨床試験中です。

感染予防、高齢者へのメリット大きく

 ワクチンのメリットは、感染を防げる点や、感染しても重症化するのを防げる点にあります。厚労省によると、国内では感染者の1.5%が亡くなっています。感染者約65人に1人の割合です。死亡率は年齢とともに高くなり、70代では4.8%、80代以上では13.2%になります。国立感染症研究所によると、季節性インフルエンザの死亡率は0.1%程度ですので、インフルエンザよりも10倍以上、死亡率が高いことになります。

 現在、国内で接種が進むファイザー・ビオンテック社のワクチンは、ワクチンを接種しない場合に比べて、感染のリスクを95%減らすことができます。臨床試験では65歳以上も効果は同じでした。一方、副反応やアナフィラキシーに関しては、年代別では高齢者ほど、性別では男性のほうが起こりにくいことが、これまでの接種後の追跡調査などからわかってきています。

副反応・発熱の場合

医療体制のひっ迫を回避する効果も

 また、数値化は難しいですが、ワクチンは地域の流行を抑え、他の人の感染や重症化を防ぎ、地域の医療への負担を減らす、というメリットもあります。新型コロナウイルスの死亡率が高い一因に、医療機関の受け入れ余裕がなくなる、医療提供体制の逼迫(ひっぱく)があります。地域によっては、重症化した患者が急激に増加したために、新たな患者の受け入れが難しい病院が増え、症状が悪化してもすぐに入院できない人も出てきています。ワクチンで重症化する人が減れば、医療機関の負担が減り、こういった事態を回避できると考えられます。

 英ケンブリッジ大学の、科学的な証拠に基づいたリスクコミュニケーションを研究するウィントン・センターは、実際のメリットは、新型コロナウイルスがどれぐらい流行していて、自分がどれぐらい感染するリスクがあるのかによっても変わると指摘しています。その上で、アストラゼネカ社製のワクチンでまれな種類の血栓ができるリスク(デメリット)と、ワクチンによって集中治療室での治療が必要になるのを防ぐメリットを年代別に評価しました。

 英国で流行の程度がもっとも低い状態である1日の新規感染者数が人口1万人あたり2人の場合には、20代でのみ、デメリットがメリットを上回りますが、それ以外の年代ではメリットがデメリットを上回ります。もっと流行している場合には、全年代でメリットがリスクを上回っています。

 日本と英国では医療体制が異なりますし、重症化率も異なるので単純には比較できませんが、メリットとデメリットを考える上でのひとつの参考になるのではないでしょうか。

 新型コロナワクチンの効果と副反応については、連載「ワクチンを知ろう」の4回目「ワクチンの効果どう測る? 新型コロナの発症予防「95%」とは?」や5回目「ワクチン副反応は2回目接種後が強め? アナフィラキシーの頻度は?」などでも詳しく説明しています。参考にしてください。

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回は「ワクチンの副反応・アレルギー、なぜ女性が多い?」です。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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