<連載> ワクチン接種Q&A

日本局番のスマホも使え、予約は5分かからず 翌日にワクチン接種

疑問・質問「コロナとワクチン」番外編(下) モデルナ社製コロナワクチン体験記@シンガポール

2021.05.26

 モデルナ社製の新型コロナウイルスワクチンをシンガポールで接種した科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんは、予約から接種まで、素早く、スムーズな手続きにも感心したそうです。シンガポールと日本では、どこがどう違うのでしょう。

ワクチンの説明
1回目の接種前に受け取ったワクチンの説明文書

家族IDカード未達でも、思いがけず予約が取れた

 筆者がシンガポールに渡航した3月中旬は、現在よりは入国規制が厳しくありませんでしたが、それでも日本からの場合、観光客や短期滞在者としての入国は認められていませんでした。そのため筆者は、長期就労パス(ビザ)を持つ夫の帯同家族パスを取得して入国しました。

 モデルナ社製ワクチンで起きた赤い腫れや発熱などの副反応の様子をお伝えした「体験記・上 1回目に赤い腫れ、2回目は発熱の副反応」の冒頭で、「思いがけず」ワクチン接種を受けることができたと書いたのは、予約を入れた時、まだ帯同家族パスの手続きが完全には終了していなかったからです。

 パスの取得が認められたという労働省からのメールは受け取り、日本のマイナンバーに相当する外国人対象のID番号は割り振られていましたが、顔写真と指紋付きIDカードの発行を受けないと手続き完了となりません。筆者がワクチンの予約をした際には、カードが発行されていなかったため、たぶん無理だろうと思いつつ、夫のワクチンを予約したついでに試しに筆者の予約もしてみたところ、思いがけずに予約が取れた、というのが実情です。

ショートメッセージ受け取りは日本局番のスマホで

 予約はスマートフォン(スマホ)で5分もかからず、予約の翌日に接種を受けることができました。予約する過程では、保健省から筆者のスマホにショートメッセージが何回か届くのですが、グローバルな国らしく、筆者が日本のキャリアと契約している日本局番の電話番号でも大丈夫でした。

ワクチン接種登録
ワクチン接種の登録画面。ショートメッセージを受け取るスマホは日本局番の電話番号でも大丈夫だった

 接種当日も、会場での受け付けから接種終了の登録まで、スマホと会場備え付けのコンピューターでスムーズに終了しました。紙媒体は、接種するモデルナ社製ワクチンの成分や予想される副反応などを詳しく説明した冊子と、1回目と2回目にどのような種類のワクチンの接種を受けたかという説明の紙だけでした。2回目接種を終えた時には、シンガポール政府が作った「#iGotMyShot(ワクチン打ったよ!)」というロゴのついた、洗って繰り返し使えるマスクをプレゼントされました。

スムーズな手続きに「先進国に来たなぁ」を実感

 都内に住む80代の母を含め、日本の各地で65歳以上の方たちが予約を取るのに苦労しているのを知っているだけに、予約から接種まできわめてスムーズなシンガポールのワクチン接種会場を後にした時には、「先進国に来たなぁ」と感じずにはいられませんでした。

 シンガポールでは昨年末からワクチン接種が始まりました。医療従事者や、感染対策に従事する人たちへの優先的な接種が1月中にはほぼ終わり、次に70歳以上の高齢者、続いて60歳以上の高齢者への優先接種が始まりました。3月下旬からは、接種対象が45歳以上に拡大されました。人口の4割が外国籍なので、外国人も接種対象です。

 60歳以上の人には郵送で接種の案内が送られましたが、60歳未満の人には郵送での通知はありません。原則として自分でオンライン予約するよう求められています。

 シンガポールも日本同様、現状ではワクチンをすべて輸入に頼っています。それでも日本より接種や予約がスムーズに進んでいます。英オックスフォード大学などが運営する「Our World in Data」によると、人口100人当たりのワクチン接種件数(5月17日時点)は、日本が5.29人なのに対し、シンガポールは58.24人です。

国別のワクチン接種件数

 この差は、日本の人口が約1億3000万人、シンガポールは約570万人という国の規模や人口差だけではないと思います。

行政サービスのデジタル化、日本の現状と大きな差

 シンガポールで接種が進んでいる理由は複数あると考えています。一つは、先行して製薬企業と契約を結び、日本より約1カ月半早く、輸入を始めることができた点です。

 また、シンガポールでは国民番号登録制度があり、日本のマイナンバーにあたるID番号が、国民や永住権を持つ人、就労ビザなどを持っている長期滞在の外国人に割り振られているという背景もあります。この番号を使うことで、予約や接種登録が簡単にできています。

 加えて、政府機関や行政サービスにおけるICTの導入がかなり進んでいる点も大きいと思います。たとえば、日本に入国する際には、14日間、自主的に自宅などで待機(隔離)生活を送りますという「誓約書」の提出が求められています。誓約書のひな型は外務省のホームページに載っているのですがオンライン提出はできず、印字して持参しなければなりません。一方、シンガポールの入国に必要な手続きはオンラインです。

 ワクチン接種はひとつの象徴ですが、日本の新型コロナウイルス対策、そして将来、いつ発生するかわからない新興感染症への備えについて、まだまだ改善するべき点が多くあることを、シンガポールでのワクチン接種体験で改めて実感しました。

(大岩ゆり)

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回は「ワクチンの副反応・アレルギー、なぜ女性が多い?」です。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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