<連載> ワクチン接種Q&A

コロナワクチンの副反応、なぜ女性に多い? 男女の違いはどこから?

疑問・質問「コロナとワクチン」(5) 副反応・アナフィラキシーの男女差と免疫力の関係

2021.06.04

 新型コロナウイルスのワクチンは、女性のほうが男性より接種後の副反応が起きやすく、激しいアレルギー反応であるアナフィラキシーも女性に多いといわれています。男女差は実際、どの程度あり、その違いはどこから生じるのでしょうか。

体温計のイメージ写真

2回目接種後の発熱、女性は4割超、男性は3割弱

Q: 「ワクチンの副作用(副反応)が女性の方に多いのはどうしてでしょうか?」(60代前半女性)

A: 女性ホルモンの働きにより、女性はもともと男性よりも免疫反応が強い傾向があります。この傾向は、新型コロナウイルス感染症を含めた様々な感染症に対して強い抵抗力があるという利点をもたらす一方で、体内の免疫反応を利用して特定の病原体に免疫をつけようとするワクチンにおいては、副反応(副作用)が起きやすくなる原因にもなります。

 今年2月からファイザー社製ワクチンの先行接種を受けた医療従事者について、その副反応を調べた順天堂大学などによる調査では、接種後に発熱や頭痛、倦怠感(疲労感)が生じた割合は、女性の方が多くなっています。

副反応・発熱の場合

 たとえば2回目接種後、37.5度以上の発熱があったと報告した人の割合は、どの年代も女性のほうが男性より大きくなっています(上図を参照)。全世代の平均でみると、男性が3割足らずなのに対し、女性は4割を超え、発生頻度は1割以上の差がつきました。全体で約7割の人が感じた全身の倦怠(けんたい)感も同様で、男女で1割以上の差がありました(下の図を参照)。

 インフルエンザワクチンでも、女性の方が副反応が起きやすいことがわかっています。一方で、女性は、ワクチンによって男性より強い免疫力が備わることもわかっています。

 ワクチンの副反応があらわれやすいこと、そして、ワクチン接種でより強い免疫力が得られること、このどちらも、女性の方がもともと免疫反応が強いからだと考えられています。もとの免疫力(免疫反応)が強いから、同じワクチンを打っても副反応が起きやすく、ワクチン接種で得られるウイルスへの免疫力・抵抗力(感染や発症のしにくさ)も大きいというわけです。

副反応・倦怠感

免疫力の強さ、女性ホルモン・エストロゲンから

 免疫力の強いことはもろ刃の剣です。負の側面としては、ワクチンの副反応が起きやすいだけでなく、関節リウマチやバセドウ病、膠原(こうげん)病など、免疫反応が過剰に起きて自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患も、男性より女性の患者の方が多くなっています。

 一方、プラスの側面としては、新型コロナウイルス感染症に限らず、さまざまな感染症への抵抗力が強いという点が挙げられます。

 厚生労働省によると、5月26日現在、新型コロナウイルス感染症による女性の死亡率は1.4%なのに対し、男性の死亡率は1.7%と、1.4倍の差があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響の性差を調べている「The Sex, Gender and COVID-19(新型コロナウイルス感染症の性差、ジェンダー差)Project」によると、世界的にも、男性の死亡率は1.5倍高く、集中治療室での治療が必要なほど重症化する割合も男性の方が1.8倍高くなっています(4月27日現在)。

 女性の方が免疫反応が強い一因は、女性ホルモンのエストロゲンに、免疫反応をより強く起こす働きがあるからだと考えられています。英国や米国の大学の研究チームによると、エストロゲンには、免疫細胞の1種、T細胞の反応を高めたり、病原体に対する抗体や、病原体を攻撃するサイトカインの産生を増やしたりする働きがあるそうです。

性染色体も免疫反応を強めている一因か

 女性の免疫力の強さは、遺伝的な背景も関係していると考えられています。

 多数の遺伝子が集まっている「染色体」のうち、生物学的な性差を決める性染色体には、女性に2本あり、男性には1本しかない、X染色体というものがあります。このX染色体上には、ウイルスなどの異物が体内に侵入してきた際にまず病原体を攻撃する「自然免疫」と呼ばれる免疫反応で重要な役割を果たすたんぱく質の遺伝子があります。それが、女性の方が免疫反応が強い一因かもしれないと考えられています。

 自然免疫や免疫細胞の機能、T細胞については、連載「ワクチンを知ろう」の1回目「そもそもワクチンとは」や7回目「免疫力の向上策は」でも詳しく説明しています。ぜひ参考にして下さい。

Q: 激しいアレルギー反応のアナフィラキシーが起きるのも、女性が多いと聞きます。どの程度なのでしょうか。

A: 厚生労働省によると、5月16日までに新型コロナウイルスのワクチンに対して激しいアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こした146人のうち135人が女性でした。約9割が女性ということになります。同日までのアナフィラキシーの発生頻度は、人口100万人あたり24件で、5月2日時点の29件と比べ17%減になるなど、接種回数が増えるにつれて頻度は減る傾向にありますが、女性が大半をしめる点は変わっていません。

 アナフィラキシーが女性に多い理由は、ほかの副反応と同様、もともとの免疫力が強いことがあげられますが、それと同時に、ワクチンの成分などとの関係を指摘する見方もあります。

 ファイザー社製のワクチンの場合、ワクチンの主成分を保護するためにポリエチレングリコール(PEG)という物質が使われています。PEGはスキンケア用クリームなどの化粧品にも使われていますが、厚生労働省はPEGに対して重いアレルギー反応を起こした経験があるひとには、接種を推奨しないとしています。また、PEGと構造が似たポリソルベートに重いアレルギー反応を起こしたことがある人も、専門医に相談した上で判断した方がいいとされています。

 女性の方がワクチンによる副反応が起きやすいとは言え、ほとんどの副反応は数日でおさまっています。またアナフィラキシーの起きる頻度はまれで、適切な措置をすれば、大事には至りません。ご自分の年齢や持病の有無、新型コロナウイルス感染症によるリスクを考慮し、メリットとデメリットのどちらが大きいかを比較した上で、ワクチン接種を受けるかどうかを判断なさって下さい。

 ワクチンのメリット、デメリットの考え方については、この連載「ワクチン接種Q&A」の4回目「メリットとデメリット 年代や性別、感染状況でどう違う?」にまとめてあります。またアナフィラキシーについては、連載「ワクチンを知ろう」の3回目「なぜ筋肉注射? 接種前後で気をつけること」や、5回目「副反応は2回目接種後が強め? アナフィラキシーの頻度は?」、連載「ワクチン接種Q&A」の3回目「アレルギーあっても打てる? 花粉症や鼻炎は?」などで詳しく説明しています。参考にしてください。

(取材協力=下川宏明・国際医療福祉大学副大学院長、構成=大岩ゆり)

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回は「ワクチンの接種、持病がある人が気をつけることは?」です。

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  • 下川 宏明
  • 下川 宏明(しもかわ・ひろあき)

    国際医療福祉大学大学院医学研究科教授

    1979年九州大学医学部卒業。米メイヨー・クリニックへの留学を経て、91年、九州大学循環器内科助手、92年、同講師、95年、同助教授。05年より東北大学医学系研究科循環器内科学教授、20年より、国際医療福祉大学副大学院長・教授。12年より日本性差医学・医療学会理事長。

  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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