コロナ禍で「認知症」深刻 症状進行のケースも 

6月14日は「認知症予防の日」

2021.06.11

 コロナ禍の長期化で、認知症をめぐる状況は厳しさを増しています。6月14日は「認知症予防の日」。認知症をめぐってどんな問題が起きているのか、何に気をつけなければいけないのか、認知症をめぐるいまどきの動きを紹介します。

認知症イメージ

コロナ自粛 認知症に最悪の環境

 認知症予防の日は2017年、ドイツの医学者アルツハイマー博士の誕生日にちなみ、日本認知症予防学会が制定しました。同学会の浦上克哉理事長(鳥取大学医学部教授)はいま、とても危機感を強めています。コロナ禍の影響で外来で認知症患者と対面すると症状が悪化している人が多いからです。

 浦上理事長がいる鳥取県は、人口が少ないためもありますが、感染予防対策の徹底が功を奏して全国で一番感染者が少なく、感染者ゼロの日も多々あります。浦上理事長は「感染者が多い都会に住む子どもたちから鳥取県に住む親に連絡があり、『外に出てはだめよ』と言われると、子どもに迷惑をかけたくない一心で言いつけを守ってしまいます。その結果、体を動かしたり、人と話したりする機会が減り、意欲も衰え、認知症の発症や症状の進行を招いてしまいます」と言います。

 コロナ禍では「密」を避けるために外出の自粛が求められます。その結果、運動不足、コミュニケーション不足、知的活動による刺激不足が起き、認知症の進行を遅らせたり、発症を予防したりするには厳しい状況です。浦上理事長も「高齢者のコロナウイルスへの感染が免れても、いまのような状況が続くと、想定以上に患者数や症状が進行する人が増える可能性があります」と話しています。

過疎地で介助者不足の懸念

 厚生労働省が公表している推計によると、2020年に65歳以上の高齢者の認知症患者数は631万人です。それが5年後の2025年には730万人まで増えるとされています。実に65歳以上の約5人に1人が認知症を発症している計算です。さらに、「軽度認知障害」(MCI)の人たちは患者の1.5倍から2倍いるといわれています。発症率は年齢が上がるほど高まります。長寿化が進むなか、とりわけ高齢化率が高い過疎地域では、介助する人手が確保できないなど深刻な状態に陥る可能性が指摘されています。

 認知症は早期発見・早期治療が大切です。加えて発症リスクを下げることが重要です。具体的なリスクとして指摘されているのは、「難聴」「社会的孤立」「抑うつ」「喫煙・大気汚染」「生活習慣病(高血圧・糖尿・肥満)」「運動不足」「頭のけが」「過剰飲酒」「知的好奇心の低さ」です。こうした症状や行為があっても、改善したり、コントロールしたりする努力が必要だといいます。

認知症リスクチェック

共生と予防が対策の両輪

 浦上理事長は「認知症というと、もの忘れというイメージが強いですが、もの忘れは特徴の一つに過ぎません。料理ができなくなったり、家族がわからなくなったり、進行すると着替えや排せつなどができなくなったりします。妄想や暴力なども伴い、自立した生活ができなくなった結果、家族など周囲の手助けが必要になります。認知症の人との共生と予防は対策の両輪です」と話しています。

 認知症はだれもがかかわる身近な病気です。市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員らが配置されている「地域包括支援センター」は、介護・医療・保健・福祉などについて高齢者を支える「総合相談窓口」です。認知症についての相談も受け付けています。

 企業も認知機能の改善や記憶に着目した医薬品や製品の開発を進めています。

 脳の神経細胞を再生させたり、神経細胞が死ぬのを防いだりする薬はまだありませんが、脳内のたんぱく質に作用する「アデュカマヌブ」が米国で条件付きで承認されました。米製薬大手バイオジェンと日本のエーザイが開発した薬で、評価はまだ定まってはいませんが、早期に治療を始められ、認知機能の低下を長期間抑えることが期待されています。日本でも昨年12月に申請され、審査中です。また、脳を活性化させたり、イライラを抑えたりして症状を緩和する薬もあります。

 様々な製品も登場しています。森永乳業は独自に保有するビフィズス菌「MCC1274」を配合した製品を開発し、「認知機能改善作用が確認されている」などと紹介しています。手がかりをもとに「思い出す力」を維持することが報告されているβラクトペプチドを使った製品もキリンビバレッジなどが開発しました。ロッテはイチョウの葉の抽出物を配合した機能性表示食品のガム「記憶力を維持する」を発売。不飽和脂肪酸「DHA」を配合した製品なども出ており、今後も認知機能に焦点を当てた製品は増えていきそうです。

6月下旬に横浜で学会、市民公開講座

 日本認知症予防学会は6月24日から3日間、横浜市のパシフィコ横浜ノースで第10回日本認知症予防学会学術集会を開きます。メディカルスタッフや学生、認知症に関係する個人も有料で現地やオンラインで参加できます。参加するには6月20日までに同学会のホームページ(http://jsdp2020.umin.jp/)から登録が必要です。26日午後にはパシフィコ横浜で市民公開講座があり、浦上理事長やアナウンサー徳光和夫さんの講演、「SAM ETSU CHIHARU from TRF」によるダンスコーナーがあります。入場無料ですが、観覧は事前申し込み(http://jsdp2020.umin.jp/shimin.html)が必要です。

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