暮らしを豊かに彩るお店たち。お金と物やサービスのやり取りにとどまらず、温かい心の交流を楽しむ場でもあるようです。コロナ禍で、なかなか訪ねられないお店へのエールも届きました。
父を感じる 40年来の理髪店
髪を切り、顔そりで眉を整え、耳掃除をしてもらう。地元の話題や昔話に花を咲かせ、身も心もリフレッシュ。東京都新宿区の竹之内大輔さん(50)には、40年以上通い続ける店がある。故郷の神奈川県相模原市にある理髪店だ。
子どもの頃は、兄、弟とそろって父に連れられ、4人横並びで髪を切ってもらった。高校進学と同時に地元を離れたが、今も帰省の度、年に4回ほど足を運ぶ。
このお店が特別なのは、単に通い慣れているだけではない。高校生の時に亡くなった、父の思いに触れられる場所でもあるという。
東京の下町育ちで「江戸っ子気質」の父は、人情深く、曲がったことが大嫌いだった。母や周りの人には優しかったが、子どもたちにとっては怖い存在だった。母に反抗すれば、飛んできて叱られた。野球が好きで、兄弟で入っていた少年野球のチームでの指導も厳しかった。
中学3年生の1月、父は体調を崩した。検査で胃がんが発覚。強くて怖い「おやじ」。「病気に負ける人ではない」と思っていた。だが、病魔の進行はあっという間で、その年の5月に亡くなった。遺品を整理していると、昔の新聞が出てきた。それを読んで、若い頃は社会人野球で活躍する選手だったことを初めて知った。自分のことはあまり語らない人だった。
しばらくして理髪店に行くと、マスターが髪を切りながら父の話をしてくれた。「あんたのおやじは、キャッチャーをやらせたら絶品だった」「1人で来たときは、よく子どもの話をしてた。誰かプロ野球選手になってくれたらいいなと言ってたな」「あんたが一番自由人で、一番野球のセンスがあるって話してたよ」。マスターの言葉を通じ、「厳しかったおやじの優しさに触れられた」という。
いつからか、マスターと話していると「おやじと話している感じ」がするようになった。仕事で疲れていても、声を聞くと気が晴れる。お酒や競馬といったたわいもない話もあれば、時には戦中・戦後の厳しい体験を語ってくれることもあった。何げない会話のひとつひとつに元気をもらった。
今は、主にマスターの息子や孫が店に立つ。80代になったマスターも「おう、来たか」と出迎える。店は改装され、おしゃれになった。それでもどこか「昭和の雰囲気」が残るのは、そこにいる人の温かさからかもしれない。「こんな場所がいつまでも続いて欲しいです」

「メルカリ」 ご縁に感謝
フリマアプリの「メルカリ」が、自粛生活のひそかな楽しみ。「終活」のため断捨離をしようと思っても、もったいなくて捨てることができず、始めてみました。
不用品が日の目を見ると思うとうれしく、「大事にしてもらうのよ」と送り出します。物のやり取り以上にうれしいのが、コメントのやり取り。匿名でも、「ご縁に感謝です」などと伝えられると温かい気持ちになり、若い人がSNSに夢中になるのもわかる気がしました。
(大阪府 女性 69歳)
車で30分 至福の貸本屋
この10年ほど、週に1回、車で30分かけて貸本屋に通うのを楽しみにしています。以前は推理小説ばかり読んでいましたが、店主のおばちゃんが「好みに合いそう」と色々なジャンルの本を紹介してくれるので、読書の幅がぐんと広がりました。尻込みするほど分厚い本も、おばちゃんのおすすめなら読めるから不思議です。
読書も楽しいですが、返す時に本の話で盛り上がり、また次の本を選ぶのが至福のひとときです。
(熊本県 平嶋広美さん 56歳)
力もらった月1の釜飯
大学近くの小さなお店の釜飯が忘れられません。地元の鳥取を離れ、奈良で一人暮らしをしていました。節約生活のなか、毎月、バイト代が入った時の特別なぜいたくでした。薄味で、カキなどの季節の具も。「また1カ月がんばろう」と力をもらいました。故郷では、お祭りなどの時に母や祖母が炊き込みごはんを作っていて、それを思い出す味でもありました。
釜飯は今も大好きですが、あのお店の味が最高でした。
(大阪府 中西美里さん 63歳)
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