<連載> ワクチン接種Q&A

新型コロナ「デルタ株」 なぜ急拡大? 重症化は? ワクチンは効くの?

疑問・質問「コロナとワクチン」特別編(上)新たな変異株「デルタ株」の特徴と世界の感染状況

2021.07.02

 「デルタ株」と呼ばれる新型コロナウイルスの変異株が、世界各地で急速に広がっています。東京の感染再拡大も、デルタ株が一因と考えられています。従来株とどう違うのか。感染力の強さは? 重症化のしやすさは? ワクチンは効くのでしょうか。

新型コロナ「デルタ株」の検出国
新型コロナウイルス「デルタ株」が検出された国々(WHOの資料から)

感染力、従来株の倍以上か 重症化しやすいの指摘も

Q: デルタ株は従来の新型コロナウイルスとどう違うのですか? 感染力が強いといわれていますが、どれぐらい? 症状やワクチンの効果に、従来株との違いはありますか?

A: デルタ株は従来のウイルスより2倍以上、感染が広まりやすい可能性があります。このため国内外で既存のウイルスが次々とデルタ株に置き換わっています。感染するとより重症化しやすいという報告が英国やシンガポールなどから出ています。ワクチンの効果は若干、落ちるという報告がありますが、効果が無くなるわけではありません。2回接種が必要なワクチンで1回しか接種が終わっていない場合、効果が低くなりやすいと指摘されています。

 この連載の1回目「新型コロナの変異株、なぜ感染力が強い?/ウイルス変異と感染力の関係、重症化の可能性は?」で紹介したように、デルタ株が登場する前には、英国で最初に見つかった「アルファ株」が広まり、それも従来のウイルスより感染力が高いと問題になっていました。

 アルファ株は、それ以前に主流だった従来のウイルス株より1.3~1.7倍、感染が広がりやすいと報告されていました。デルタ株は、アルファ株よりもさらに約1.5倍、感染が広がりやすいとみられているので、従来株より2倍以上、感染が広がりやすいと考えられます。

Q: なぜデルタ株は感染が広がりやすいのですか? これまでのウイルスより重症化しやすいのでしょうか?

A: 詳しいことはまだわかっていません。シンガポールの国立感染症センターや保健省の分析では、デルタ株の感染者は、従来のウイルス株への感染者に比べ、ウイルスの排出量が多く、またウイルスの排出期間も長い傾向があったそうです。

 英イングランド公衆衛生庁によると、今年3月29日~5月23日に検査を受けた感染者約4万3300人を分析したところ、デルタ株への感染者はアルファ株の感染者に比べ、検査から2週間以内の入院率が約2.3倍高かったそうです。

 また、シンガポール国立感染症センターの比較分析では、デルタ株への感染者は、従来株(アルファ株登場前の株)への感染者に比べ、酸素補給や集中治療室での治療が必要になったり、死亡したりするリスクが4.9倍高かったそうです。

 ただし重症化率や死亡率などについては、医療が十分に提供できなくなる医療崩壊が起きているかどうかなど、さまざまな要因によって変化します。このため、すべてがウイルスの性質によるとは限りません。世界保健機関(WHO)は、入院率が従来株より高い可能性はあるが、まだ科学的にきちんと証明されたわけではないとしています。

新型コロナの懸念される変異株

ワクチン、重症化を防ぐ効果は維持とWHO

Q: デルタ株に対し、ワクチンは効くのでしょうか?

A:  ワクチンの効果が無くなるわけではありません。WHOは、デルタ株を含め現時点で見つかっている変異株についても、既存のワクチンがもつ重症化を防ぐ効果は維持されているとしています。

 日本国内で接種が進むファイザー・ビオンテック社製のワクチンと、今後、一定の年齢以上に接種が始まる見通しのアストラゼネカ社製ワクチンについて、英イングランド公衆衛生庁などの研究チームが分析しています。

 どちらも2回の接種を終了した後、入院が必要になるほど重症化するのを防ぐ効果は、アルファ株に対してもデルタ株に対してもほぼ同等だったそうです。アルファ株に対するワクチンの重症化予防効果は従来株とほぼ同等だとみられています。

 具体的には、ファイザー社製は2回接種終了後の重症化予防効果はアルファ株で95%、デルタ株で96%でした。アストラゼネカ社製は、アルファ株は86%、デルタ株は92%でした。

 一方、感染後に症状が出るのを防ぐ効果は、デルタ株では低下傾向がみられました。とくにその傾向が顕著だったのは、2回必要な接種のうち1回しか終えていない段階での効果です。

 ファイザー社製ワクチンでは、アルファ株に対しては、1回目接種終了後でも49.2%の効果があったのに対し、デルタ株では33.2%の効果しかありませんでした。アストラゼネカ社製では、1回目終了後はアルファ株で51.4%、デルタ株で32.9%でした。

Q: 事前合宿で来日したウガンダの選手団からデルタ株への感染者が見つかりました。世界各地でのデルタ株の流行状況はどうなっているのでしょうか?

A: デルタ株が最初に見つかったインドをはじめとする東南アジアだけでなく、英国でもほとんどのウイルスがデルタ株に置き換わりつつあります。英国以外の欧州や米国でも、デルタ株が急増しています。

 成人の半数以上が2回のワクチン接種を終了した英国では、いったんは新規感染者数が1日千人台まで減りましたが、デルタ株の広がりに伴い、1万人を超える状況になっています。まだワクチンを接種していない子どもの、学校でのクラスターが、感染者増の一因とされています。

 昨秋以降、検疫を除いた国内の1日の感染者が1桁台という状況が続いていたシンガポールでも、デルタ株の移入により、一時期は1日の新規感染者数が30人台になったこともありました。4月には国内初の病院クラスターや、空港クラスターが発生しました。これらのクラスターでは、ワクチン接種を終えた医療従事者や出入国管理官がデルタ株に感染していました。ただし、ワクチン接種を終えていた感染者では、重症化した人はいませんでした。

 ウガンダを含めたアフリカでも、デルタ株が増えていますが、検査態勢に限界があり、まだ詳しいことがわかっていない国も多くあります。しかも、ワクチンの接種が進んでいない国が多いため、今後、感染者の急増や、重症患者の増加が懸念されています。

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説する連載の特別編(上)です。特別編(下)は「デルタ株、日本での感染の状況は? これからどうなる?」です。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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