<連載> ワクチン接種Q&A

新型コロナ「デルタ株」 国内での感染どこまで? どう防ぐ? 対策は?

疑問・質問「コロナとワクチン」特別編(下)新変異株「デルタ株」、国内感染の現状・見通し・予防策

2021.07.07

 世界各地で急拡大する新型コロナ「デルタ株」の感染は、国内でどこまで広がっているのでしょうか。とくに警戒が必要なのが東京都など首都圏の感染状況です。これからどう拡大するのか。どんな予防策が必要でしょうか。

新規感染者数の予測

首都圏のデルタ株比率、6月末で30%の推計も

Q: インドで最初に見つかった新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」は国内で、どれぐらい広がっているのでしょうか?

A: 確定的なデータが少なく、詳細は不明です。厚生労働省が公表した速報値によると、6月14~23日に全国で解析されたウイルスの5%がデルタ株とみられるようです。一方、国立感染症研究所などの推計では、東京都など首都圏では6月末時点で30%前後のウイルスがデルタ株に置き換わっている可能性があるとしています。

 厚労省の速報値は、全国の自治体や民間検査会社が実施した検査でデルタ株に特徴的な変異のあるウイルスが見つかった割合を、自治体ごとに単純合計した数値です。それによると、千葉県では18%、神奈川県や兵庫県では10%、大阪府は7%、東京都では6%、全国平均では5%のウイルスがデルタ株とみられるそうです。その前の1週間の全国平均は3%でした。

 一方、感染研の推計値は、民間の検査会社6社の変異株スクリーニング結果をもとに推計したものです。東京と埼玉、千葉、神奈川の4都県では、6月末時点で約30%のウイルスがデルタ株の可能性があるという結果になりました。一方、大阪、京都、兵庫の3府県では5%と推計されています。

東京圏・関西圏のデルタ株の比率

 デルタ株は、ウイルスの表面にある突起状の「スパイクたんぱく質」の452番目のアミノ酸が、従来のロイシン(L)からアルギニン(R)に変わった「L452R」と呼ばれる変異があります。自治体や民間検査会社はこの変異の有無を調べています。この変異があるウイルスの大部分はデルタ株ですが、ごくまれに、同じ変異を持つ「カッパ株」や「イプシロン株」が含まれることがあります。

7月半ばに5割超え、下旬には7割弱の予測

Q: 今後、デルタ株の割合はどう変化していくのでしょうか?

A: デルタ株は、これまで国内で主流だったアルファ株よりも感染の広まりが約1.5倍速いため、今後、アルファ株がどんどんデルタ株に置き換わっていくと考えられます。感染研などの推計では、首都圏では7月半ばにはデルタ株の占める割合が50%を超える可能性が示されています。

 東京都が独自に行っている変異株スクリーニング検査では、6月7~13日の1週間に解析したウイルスの3.2%がデルタ株とみられたのに対し、次の1週間でその割合は8.4%と、倍以上に増えていました。

東京都のデルタ株感染

 同様に、今後も全国でデルタ株の比率が高まっていくと予想されます。感染研が民間の検査会社のスクリーニング結果をもとにした推計によると、東京と埼玉、千葉、神奈川の4都県では7月中旬には50%以上のウイルスがデルタ株に置き換わる可能性があります。一方、大阪、京都、兵庫の3府県ではまだ見つかったデルタ株の件数が少なく、今後、どのように増えていくのか推計が難しいそうです。

 また、北海道大学などの研究チームは、7月中旬には国内ウイルスの半数以上がデルタ株になり、オリンピック開幕式の開かれる7月23日には7割近くがデルタ株になると予測しています。

デルタ株ほか変異株の推移

年末年始の「第3波」超す感染拡大の可能性も

Q: デルタ株の増加は、流行状況にはどう影響するのでしょうか?東京都で感染者が増加していますが、それはデルタ株が原因でしょうか?

A: デルタ株はこれまでのウイルス株より広まりやすいので、これまでと同じ対策では流行の拡大を抑えきれない可能性があります。その一方で、高齢者を中心にワクチンの接種が進んでいます。重症化する人は第3波の時ほどは増えない可能性があります。東京都で感染が再拡大しつつある一因はデルタ株の増加だとみられますが、それ以外に、人出が増えていることも大きな要因だと考えられています。

 7月1日に開催された都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議で専門家は、都では3週間連続して新規感染者が増加傾向にあり、このまま1週間で120%ずつ増加していくと、7月28日には1日の新規感染者数が1000人を超え、医療体制が逼迫(ひっぱく)した年末年始の第3波とほぼ同じレベルになる、と警鐘を鳴らしました。また、デルタ株の感染性を考慮すると、「第3波を超える急激な感染拡大が危惧される」としています。

東京都の年代別感染者数

 一方で、ワクチン接種が優先的に進められた65歳以上の感染者比率は減ってきています。都内の6月22~28日の新規感染者のうち65歳以上の割合は5.4%と、高齢者へのワクチン接種が始まった4月中旬から半減しました。入院患者に占める高齢者の割合も減ってきています。高齢者は重症化リスクが高いため、高齢者の感染が減ればその分、重症化する人も減ると期待できます。ただし、50代以下でも重症化する人はいます。都のモニタリング会議で専門家は、高齢者ではなくても肥満だったり、喫煙したりしている人は重症化しやすいと注意喚起しています。

東京都の年代別の重症者数

 感染研や京都大学などの研究チームによる6月27時点での東京都における流行状況のシミュレーションでは、デルタ株の感染力がアルファ株の1.3倍、病原性も1.3倍という、デルタ株の影響が中程度と想定した場合、人の流れが6月末までの状態でその後も継続するとしても、7月第2週まで人流が増加し続けるとしても、7月中旬には1日の新規感染者数が1000人を超えるという推計結果になりました。

 また、1000人を超えた時点で緊急事態宣言を出せば、新規感染者数は減り、医療態勢は圧迫されることもないと予想しています。しかし、緊急事態宣言が出なければ、感染者数は増え続け、遅くとも7月下旬には確保している病床の稼働率が50%を超え、8月上旬には、確保してある重症患者用の病床も稼働率が50%を超えるだろうという推計結果になりました。

Q: デルタ株に対しては、どのような対策を取ればいいのでしょうか?

A: デルタ株に限らず、あらゆるウイルス株に対して、基本的な対策は同じです。

 デルタ株に限らず新型コロナウイルスの変異(変化)は一定の頻度で起こります。すべての変異が、感染性を増したり、重い症状を引き起こしたりするようになるわけではありません。しかし、ウイルスの感染が増え、ウイルスが増殖すればするほど、たくさんの変異が起き、その中から、感染性が増すなど、人類にとって悪影響を及ぼす変異株が登場する可能性は高くなります。このため世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの感染を抑えることが、何よりも重要な変異株対策だと訴えています。

 そのためには地域の流行状況に応じて、水際対策や大規模な集会を含めた社会活動や経済活動の規制といった政策を取ることに加え、一人ひとりが、他の人との距離を十分にとる、公共の場ではマスクをする、手洗いなど予防策をきちんととる、といった感染予防対策を継続することが重要です。また、医学的に支障のない人は、ワクチンを接種することも変異株対策のひとつになります。

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説する連載の特別編(下)です。次回は「ワクチンの量、体格で変えなくてもいい?」です。 

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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