渡辺えりさんと語り合う オンラインでつながる「ひととき」

ひととき70周年記念イベント 「渡辺えりの心に残るひととき@オンライン」動画公開

2021.07.13

 ひとときの投稿者と会って話がしたい――。俳優で劇作家の渡辺えりさんが、本紙生活面で連載中の「渡辺えりの心に残るひととき」を始めた当初から、熱望していた企画がオンラインで実現しました。渡辺さんが選考した4組の投稿者にトークで迫り、紙面の愛読者と「ひととき」の魅力を語り合いました。(視聴時間は約78分)

第一部「ひととき」が掲載されて

「手作りのすいがら入れ」(2020年10月掲載)

 「中はセメントが入っているんです」。埼玉県所沢市の滝谷美佐保さんが、20年10月のひととき「手作りのすいがらいれ」で紹介した空き缶がモニターに映ると、渡辺さんは「なるほど」と小さくうなずいた。「風が吹いても空き缶が飛ばないようにしています」と、モニター越しに滝谷さんの夫の紘一さんが笑顔で説明を添えた。
 最初に出演した滝谷さんは、コロナ禍で人との接触が減るなか、吸い殻入れを通じてベトナム人の若者たちと交流した様子を投稿した。
 渡辺さんは、掲載されたひとときを朗読し、「海外から来た若者たちが、劣悪な状態で働いていることもあると聞く。この方たちは? 」などと語りかけた。
 滝谷さんは若者の生活ぶりを説明した上で「自分の子どもが外国で暮らしていたら、世話焼きのおばさんが近くにいたら助けになるんじゃないかと思って接している」。
 若者たちが大きなテーブルを普通ゴミに出した時のこと、ゴミ捨てに協力した滝谷さん夫婦に片言の日本語でお礼をしたこと、携帯電話をなくした女性に付き添って交番に行ったことなど、ひとときに描かれなかったエピソードも披露された。

「フランスの筑前煮」(2020年12月掲載)

 今回の企画は、ひととき誕生70年の記念イベントの一つで、渡辺さんと読者の双方向の交流を実現させようと実施した。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、朝日新聞東京本社に設けたスタジオにいる渡辺さんと、自宅にいる投稿者らを、オンラインでつなぐ形になった。
 ただ、オンラインだからこそ実現したことも。フランスからの投稿者、アヤシュ理歩さんに参加してもらったことだ。

「ひととき」オンラインイベント
フランス在住の読者とオンラインで会話する渡辺えりさん

 アヤシュさんが投稿した「フランスの筑前煮」(20年12月)からは、コロナ禍のフランスでの生活ぶりがにじむ。レストランが休業し、食材を卸せなくなった業者が、期間限定で開いた小さな八百屋。そこに並んだのは日本の里芋やゴボウなど、フランスではあまり見かけない日本の野菜だったという。
 スタジオの渡辺さんが、コロナの流行状況や街の様子を尋ねる。やがて話題は、アヤシュさんが投稿に至った経緯へ。アヤシュさんは「日本に住む母から届いた新聞の切り抜きがきっかけ」と語り、ひとときの募集を見て「コロナ禍で自粛生活が続くなかでも、新しいことに挑戦したかった。そして出来るならば明るい話題を届けたかった」と明かした。

「フリマの売れっ子」(2017年3月掲載)

 兵庫県西宮市の山田博子さん(17年3月「フリマの売れっ子」)は、パッチワークが趣味の母・陽子さんと出演。掲載されたひとときでは、家族から「いらない」と言われた手作りの作品が、スマートフォンのアプリを通じて販売すると完売したというエピソードがつづられた。
 スタジオの渡辺さんが「母の手作りは思い出になりますよ」と語りかけると、博子さんは「子どもの頃は手作りの服をもらったけれど、既製品が着たかったです」と語り、スタジオが笑いに包まれる一幕もあった。

「ひととき」オンラインイベント
読者とオンラインで会話する渡辺えりさん

「娘のソウルメート」(2021年2月掲載)

 千葉市の小原藍さんが投稿した「娘のソウルメート」(21年2月掲載)は、学校に行くのをためらう小学生の娘・すみれさんと、小学校までの通学路を一緒に歩いてくれていた中学生のお姉さんの心温まる友情が描かれた。
 イベントに出演した小原さんは「『学校に行きたくない』という娘と一緒に通ってくれて、お姉さんにすごい感謝をしている。でも当時は年齢も離れているので、(2人が)だんだん離れていってしまうのかなとも思っていた」と明かした。
 投稿では、お姉さんが後日、小原さんの自宅にプレゼントを持って訪れ「救われたのは自分だ」と明かす様子が描かれているが、イベントでは、実際にそのお姉さん・松野由來さんも出演。「自分も学校に行きたくないときがあった。でも、すみれちゃんがいるから学校に行こうと思えた」と、当時の思いを振り返った。
 渡辺さんも「私は小学校の頃にイジメにあって学校が嫌だった時期がある」と明かし、すみれさんと由來さんの話を聞きながら何度も涙を拭っていた。

第二部「ひととき」愛読者と語ろう

「ひととき」オンラインイベント
読者とオンラインで会話する渡辺えりさん

 「ひととき」の愛読者4組が出演したイベントの後半では、それぞれが読み始めたきっかけや、魅力について渡辺さんと語りあった。
 10歳からひとときを愛読している東京都の小川睦子さんは「ひとときを通じて、投稿者一人ひとりの人生が垣間見える」と説明した。それに対して、渡辺さんも「様々な投稿者がおり、手ぬぐいをかぶったおばあさんの話もある。そうした日常の様子も想像できる」と話し、2人がうなずきあった。
 小川さんは「(コロナ禍で)公共交通機関でも、話すことが出来ず、本心を聞くことができない時代。ひとときに書かれている何げない人の胸の内を、自分の人生の肥やしとして知りたい」。

 身近な友人のひとときが掲載されたという福岡市の谷口初美さんは、「ひととき」を読んで初めて友人の内面に触れたという。「(友人の投稿がきっかけとなり)今では互いに内面を話すことが増えてきた」と語った。

 東京都の大月章弘さんは若い頃から新聞を読んでいたというが「いつも政治や経済、国際面を読み、他は読まなかった」。転機になったのは、会社員人生の終わりが見えてきた10年ほど前からだという。古い新聞を読み返すこともあるというが「当時注目していた政治や経済の話は、意外と読めない。でも、ひとときや社会面の小さな囲み記事は読める。こういうものの方がつながるのだなと思うようになった」。その上で「渡辺さんが話していたように、ひとときへの共感というか、共生の意識を感じる。もっと早く読むようになっていたら、違う人生が歩めたかも知れない」と、振り返った。

 「仕事で『ひととき』を朗読している」と語ったのは、岐阜県の服部和子さん。今春から同県高山市のラジオでナビゲーターを務めているといい、急きょ渡辺さんからのリクエストで、ひとときの朗読を披露した。また、この日のイベントで、渡辺さんが「演劇をやっているのは、人の背中を押したいからだ」と語ったことに対して、「私もそういう思いでやっている」と思いを語った。

 最後に渡辺さんは「コロナ禍だからこそ、こういうことができたんですが、実際にみなさんの顔や、楽しそうな表情を見ると、安心しますね。みなさんとお会いできてうれしかったです」と締めくくった。

(撮影/関田航 2021年6月26日 東京都中央区)

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