<連載> ワクチン接種Q&A

ワクチン接種量、体格が違ってもなぜ同じ? 大人と子供、男女差は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(8)ワクチン接種量の決め方は 「免疫原性」とは何か

2021.07.16

 大柄な人でも小柄な人でも、大人に打つ新型コロナワクチンの量は同じです。なぜ一律で、その量はどう決めるのでしょう。一方で、11歳以下の子供にはより少ない量での臨床試験が海外で始まっています。大人との違いはどこにあるのでしょうか。

ワクチンイメージ

免疫反応を起こすのに必要な量、成人ならほぼ同じ

Q: 「相撲の力士のように大きな人と小さな人のワクチン接種量が同じでいいのでしょうか?」(60代前半女性)

A: 新型コロナウイルスに限らずワクチンは、感染や発症、重症化を防ぐのが目的です。ワクチン接種で、感染した時と似たような免疫反応を体内で起こし、実際に病原体が体内に入ってきた時に免疫反応が素早く起こるようにします。こうした免疫反応を起こさせるのに必要なワクチンの量は、免疫反応が成人とはやや異なる乳幼児や児童以外は、大きな差はないため、体重や体格とは関係なく同じで問題ありません。

 抗がん剤や免疫抑制剤などの薬剤では、効果を得るために血中濃度を一定以上に高める必要のあるものがあります。また、ひどい副作用を防ぐためには、血中濃度が一定以上に上がらないように注意する必要のある薬もあります。血液の量は体格によって異なりますので、そういった薬は、体重や体表面積によって投与量が変わってきます。

 一方、ワクチンの効果は血中濃度とは関係ありません。「免疫原性」と呼ばれる、体内で免疫反応を引き起こす力がどの程度あるのかが重要です。日本で接種が行われている新型コロナウイルスワクチンの場合、m(メッセンジャー)RNAが免疫原性を発揮しますが、免疫反応を起こすのに必要なmRNAの量はごく微量なので、乳幼児や児童を除けば体格とは関係ありません。

 これは新型コロナウイルスのワクチンに限りません。たとえばインフルエンザのワクチンは、免疫原性を発揮する物質として、病原性や感染性をなくした不活化ウイルスが入っていますが、接種量は13歳以上は全員0.5ミリリットル(ml)で同じです。接種は1回です。ただし、体がとくに小さく、免疫も未熟で、過去にインフルエンザにかかった体験が少ない乳児(1歳未満)は0.1ml、幼児(1~5歳)は0.2ml、6~12歳は0.3mlをそれぞれ2回接種します。

 新型コロナウイルスは新しく登場した病原体で、成人も子供も基本的に過去に感染したことがないので2回接種します。ファイザー・ビオンテック社製ワクチンは、12歳以上の子供は大人と同じ接種量ですでに特例承認が出ています。同社は現在、11歳以下の子供について、より少ない接種量で効果や安全性などを調べる臨床試験(治験)を海外で実施中です。

 モデルナ社製も近く、12歳以上の子供に対して成人と同じ量での接種が認められる見通しです。11歳以下の子供については、複数の接種量で効果や安全性を調べる臨床試験を海外で実施中です。

ワクチンの副反応(発熱)
グラフは、いずれも厚生労働省の検討部会の資料をもとに作成

副反応の出やすさも、小柄・大柄での変化なし

Q: 小柄な人が大柄な人と同じ量を接種した場合、副反応に影響はないのですか?

A: 同じ量を打った小柄な人に大柄な人より副反応が起きやすいということはありません。

 臨床試験では、まず初期の段階でワクチン候補の成分に体内で免疫反応を引き起こす免疫原性があるかどうかと、打っても安全かどうかを確認します。そのうえで複数の接種量で安全性や効果、副反応の頻度などを調べます。日本で接種されているファイザー社製ワクチンなどの場合、接種量が多いほど、腫れや痛み、発熱といった副反応を経験する人の割合は増えました。実際の接種量は、どの年代でもワクチンの効果が十分見込め、かつ、重い副反応などが起きないレベルとなることを念頭に定められています。

 一方、実際の接種が始まってからの副反応の調査によれば、同じ量の接種で、高齢者よりも若い人の方が副反応がでやすく、男性よりも女性の方が副反応が出やすい傾向がありますが、体格によって副反応の出やすさは変わりません。

ワクチンの副反応(倦怠感)

 ワクチンの副反応だけでなく、実際の新型コロナウイルスの感染でも、感染者数は20代、30代が多い一方、重症となる比率は高齢者ほど高く、高齢者で亡くなる人は女性より男性のほうが多いなど、年代や性別による違いがあります。これに対し、大柄・小柄という体格差による顕著な違いは、特段、注目されていません。ただし、BMIが30以上ある肥満の人は、重症化のリスクが大きいとして、65歳以上の高齢者に次ぐワクチン接種の優先対象にあげられています。

 また、女性にワクチンの副反応が多いのは、小柄だからではなく、女性の方が免疫反応が強いからです。この点については、連載の5回目「ワクチン副反応、なぜ女性に多い? 男女の違いどこから?」で詳しく説明しています。年代による副反応の違いなどについては、連載の2回目「副反応、国内の状況は? 年齢で副反応に差?」を参照ください。

(取材協力=東京大学医科学研究所・石井健教授、構成=大岩ゆり)

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回は「過去に感染した人、ワクチンどうする? 無症状感染だった場合は?」です。 

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • 石井 健
  • 石井 健(いしい・けん)

    東京大学教授(医科学研究所 感染・免疫部門ワクチン科学分野)

    93年横浜市立大学医学部卒業。麻酔科臨床医として病院勤務の後、96~03年まで米食品薬品局(FDA)ワクチン部門で客員研究員や臨床試験審査官を務める。大阪大学准教授や同大特任教授、医薬基盤研究所ワクチンアジュバント研究センター長などを経て、19年より現職。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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