生活の質を左右する尿漏れ 困っていたら恥ずかしがらず病院を受診して

「おしっこ先生」泌尿器科医・加藤久美子さんに聞く

2021.07.16

 尿漏れ(尿失禁)や頻尿など「尿トラブル」に悩んでいませんか? 「トイレが不安で外出しづらい」「だれにも相談できず困っている」。そんな中高年の読者も多いようです。朝日新聞Reライフプロジェクトはこの問題に光をあて、ともに考えていきます。「おしっこ先生」で知られる日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院の女性泌尿器科部長・加藤久美子さんに尿漏れの基本知識について、お話をうかがいました。

「おしっこ先生」の加藤久美子医師 尿漏れの原因 腹圧性尿失禁(膀胱の出口が弱くなっている「グラグラ尿道」。せき・くしゃみ・運動などで腹圧がかかると漏れる) 切迫性尿失禁(過剰に収縮する「暴れん坊膀胱(過活動膀胱)。突然の激しい尿意ですぐ漏れる。大半は頻尿を伴う」。)
「おしっこ先生」こと日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院の加藤久美子・女性泌尿器科部長

 尿トラブルの中でも「尿漏れ」に悩む人は多いですね。中高年によくある悩みなので、まず安心してください。特に40代以上の女性の44%は尿漏れがあるんです。たまに漏れるぐらいはよくあるので落ち込まないでください。毎日、パッドを着けているほどの尿漏れで本当に困っていたら、恥ずかしがらず病院を受診して相談しましょう。

 「尿漏れ」の原因は二つに大別されます。あなたはどういう時に漏れて困っていますか? せきやくしゃみ、運動などでおなかに圧力が加わった時に「あっ」と漏れる「腹圧性尿失禁」か。それとも突然「したい」と激しい尿意におそわれ、すぐ漏れてしまう「切迫性尿失禁」か。わかりやすく伝えるため前者は「グラグラ尿道」、後者は「暴れん坊膀胱(ぼうこう)」と名付けて学会で紹介しました。二つの要素が混じっていたら、どちらが強いか思い出してくださいね。

加藤久美子さんの尿漏れの症状イラスト

  「グラグラ尿道」は膀胱の出口が弱くなっていて腹圧がかかると尿道が開いて漏れてしまう状態。骨盤底筋トレーニングや薬で3カ月ほど様子を見て、重症ならば手術の選択肢もあります。「暴れん坊膀胱」は膀胱が過剰にキュキュッと収縮する「過活動膀胱」の状態で、大半は頻尿を伴います。トレーニングと薬で改善されない難治性の場合は、膀胱の収縮を抑えるボツリヌス膀胱壁注射があります。

長く悩み続けた尿漏れ 勇気を出して手術で改善

 実は私も10代からなわとびや運動時の尿漏れで悩んでいました。保健の先生に聞いてもわからない。体育の前にトイレに行ってしのいでいましたが「異常では」とつらかった。泌尿器科医になって腹圧性尿失禁だとわかりました。高齢出産後に症状が本格化し、仕事中に小走りするだけで漏れてしまう。悩んだ末に40代後半で手術しました。

 やはり「シモ」の疾患ですから、顔見知りのあこがれの先輩医師に手術してもらうのは恥ずかしかった。でも「『勇気を出して受診して』と啓発している自分が逃げるのはいけない」と決断、手術ですっかり改善しました。尿道をポリプロピレンテープで下から持ち上げ、開きにくくする手術は安全で効果も高く、2泊3日で退院できます。

治療の優先順位は人それぞれ あなたの価値観が大事

 尿漏れ経験者として患者さんのつらさはよくわかります。尿漏れの大半は命にかかわる疾患ではなく、昔は「つまらない病気」などと軽んじられる傾向がありました。でもQOL(生活の質)を大きく左右しますよね。ですから患者さんの体形や持病、生活背景や価値観などを細かく聞いて、治療の優先順位を決めていきます。人によってニーズは違うから、治療方針を決めるのは患者さん本人と言ってもいい。「あなたが困っているかどうか」でどうするか決めていいのです。

 尿漏れするからとスポーツや外出を避けると、中高年の閉じこもりや心身の機能が衰えるフレイルにつながります。尿漏れがあるからと生活を縮めず、運動もしましょう。日本の尿漏れパッドは非常に優秀です。パッドをしても体を動かした方が尿漏れ悪化も防げます。落ち込まず、やりたいことをやりましょう。(談)

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  • 加藤久美子
  • 加藤 久美子(かとう・くみこ)

    日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 女性泌尿器科部長

    1957年生まれ、82年名古屋大学医学部卒業。86年同大学大学院医学研究科修了(医学博士)。同年、同大付属病院で日本初の女性尿失禁外来の開設に参画。30余年にわたり女性泌尿器科、排尿診療に先駆けとして取り組む。2006年より現職。「女性の尿トラブル」「シニア女性の骨盤臓器脱」(NHK出版/別冊NHKきょうの健康)監修。

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