<連載> ワクチン接種Q&A

新型コロナの感染経験者にワクチンは必要? 無症状感染の人は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(9)ウイルス感染経験者とワクチン接種、副反応の出方

2021.07.28

 新型コロナウイルスに感染しても無症状の人は少なくありません。知らずに感染していた人がワクチンを接種しても大丈夫なのでしょうか。そもそも感染歴のある人にワクチンは必要なのか。WHOなどの答えは打って問題なし、接種を推奨する国もあります。その理由とは。

マスク姿の女性

感染経験者のワクチン接種、米国・カナダは「推奨」

Q: 「コロナウイルスに感染しても無症状のことも多くあるようですが、感染して無症状の状態の人が感染を知らずにワクチンを打っても大丈夫なのでしょうか?」(50代前半女性)

A: すでに感染した人がワクチンを接種しても安全面で問題はありません。厚生労働省は、感染した人は、未感染の人と同じように2回の接種ができるとしており、接種前に過去に感染したかどうかを調べる必要はないとしています。ただし、感染がわかっている場合、感染した時期や受けた治療によっては一定期間経ってからの接種が望ましい場合もあります。いつ接種したらいいのかわからない方は、主治医に相談して下さい。

新型コロナ累積感染者数
日本国内の新型コロナウイルス感染者は累計で90万人近くに達しています。厚生労働省の「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」(https://covid19.mhlw.go.jp/)の画像をもとに作成

 国内で接種が進むファイザー・ビオンテック社製のワクチンやモデルナ社製のワクチンについて世界保健機関(WHO)は、臨床試験(治験)のデータから、すでに感染した人に接種しても安全だとしています。

 米疾病対策センター(CDC)やカナダ政府は、感染してできる免疫が、どれぐらい持続するのかまだわからず、1度感染した人が再感染したという報告もあることから、感染歴のある人にもワクチンの接種を推奨しています。

 ただし、感染歴のある人は、ワクチン接種後の発熱や倦怠(けんたい)感といった全身の副反応や接種部位の痛みといった局所的な副反応の発生頻度が、未感染の人より高いという英キングス・カレッジ・ロンドンなどの研究チームの報告(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1473309921002243)があります。

属性別の副反応の頻度
英キングス・カレッジ・ロンドンなどの研究チームの報告をもとに作成。新型コロナワクチンの副反応が起こる頻度は、発熱や倦怠感などの全身反応、接種部位の腫れなどの局所反応とも、感染経験者のほうが未感染の人より高い

 WHOは、感染後半年以内に再感染することはまれなので、感染した人は、感染が確認されてから半年程度は、ワクチン接種を遅らせることができるとしています。

 一方、米CDCや英国政府は、感染直後の人は他の人に感染させる可能性があることや、発熱などの症状が感染によるものかワクチンの副反応なのか鑑別ができないことから、感染が確認されてから4週間はワクチン接種を控えるように求めています。

 また、米CDCは、新型コロナウイルス感染症の治療の一環として、「モノクローナル抗体」と呼ばれる、人工的に作った新型コロナウイルスに対する抗体や、回復期の感染者の血漿(けっしょう:血液の液体成分)の投与を受ける人は、治療から90日以上経ってからワクチン接種を受けるよう推奨しています。治療を受けた人のワクチン接種の安全性や、治療で投与された抗体がワクチンによる免疫反応にどう影響するのか、まだ十分なデータが無いからです。

コロナ感染者とワクチン副反応
米マウントサイナイ医科大学の研究チームの報告をもとに作成。この報告でも、ワクチンの副反応の頻度は、全身性、接種部位のいずれも感染経験者のほうが高くなっています

ワクチン副反応の頻度が高い一方、免疫力もアップ?

Q: そもそも、すでに感染した人もワクチン接種が必要なのですか? コロナウイルスに対する免疫を獲得しているのでは、ないのですか?

A: 感染経験者がワクチンを接種することにより追加の予防効果が得られるかどうかは、観察期間が半年程度の臨床試験(治験)ではわかっていません。しかし、米CDCやカナダ政府は、感染して一定期間が過ぎると再感染の報告もあることなどから、感染経験者にもワクチン接種を推奨しています。

 感染してできた新型コロナウイルスに対する免疫がどれぐらい持続するのかはまだ分かっていません。また、実際に感染するよりも、ワクチン接種の方が、血液中の新型コロナウイルスに対する抗体量が多くできるという報告もあります。米国やカナダがすでに感染した人にもワクチン接種を推奨しているのはこういった理由のためです。

コロナ感染の有無と抗体価
米マウントサイナイ医科大学の研究チームの報告をもとに作成。新型コロナウイルスに対する抗体価は、ウイルス感染者の場合、ワクチン接種前から一定量あり、ワクチン接種後は、未感染者よりも抗体価が高くなっている

 感染歴のある人がワクチンを1回打つと、感染歴のない人よりも体内でより多くの抗体が作られたという報告が米マウントサイナイ医科大学の研究チームから公表されています(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2101667)。ただし、感染歴のある人の接種が1回だけで十分かどうかはまだわかっていません。厚労省は、感染歴のある人も2回接種としています。

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回は「ワクチン接種後の生活で、気をつけることは?」です。 

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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