<連載> ワクチン接種Q&A

ワクチン接種後の注意点、マスクは必要? デルタ株への感染リスクは?

疑問・質問「コロナとワクチン」(10)デルタ株まん延がワクチン接種後の生活に及ぼす影響

2021.08.30

 新型コロナウイルスのワクチン接種を完了した後、気をつけるべきことはなんでしょうか。マスクは必要? 大人数の会食は? 感染力が強いデルタ株のまん延で、接種完了後の感染事例が海外で相次いでいます。「ワクチン後」の生活は、当初の想定以上に感染予防への注意が欠かせなくなっています。

白衣を着てワクチンを触る研究者

デルタ株まん延で、接種完了後の感染リスク増大

Q: 「ワクチンを2回接種して2週間以上経てば、マスクをはずしたり、大勢で会食したりしても大丈夫でしょうか? 」「ワクチンを2回接種しましたが、子どもや孫はまだ接種が終わっていません。どう接すればいいのでしょうか? 」(70代前半女性、50代後半女性ほか)

A: 国内で流行している新型コロナウイルスの大半は8月中旬以降、「デルタ株」と呼ばれる、既存のウイルスに変異(変化)が起きたウイルスになりました。デルタ株は、昨年まで流行していたウイルス株の2倍も感染が広まりやすいとされています。しかも、ワクチン接種を終えた人も感染したり、他の人にうつしたりするリスクがあるとみられます。接種を終えても、自分の感染を防ぐと同時に、気づかずに感染していた場合に他の人にうつさないよう、屋内で第三者と一緒にいる場面や、屋外でも混雑しているようなところではマスクを着用し、できる限り他の人と物理的な距離をとる、こまめに換気をするなど、これまでと同じ感染防止対策を心がけましょう。

 国立感染症研究所によると、8月中旬には、新たに新型コロナウイルスに感染した人の9割以上はデルタ株への感染だとみられるそうです。デルタ株は、従来のウイルスの2倍ほど感染が広まりやすいとみられています。

デルタ株感染の比率

 ワクチン接種を完了した人が感染することをワクチンの「ブレークスルー(突破)」と呼びます。国内で使われている新型コロナウイルスワクチンの効果は高いとは言え、100%ではないので、一定の割合でブレークスルーが起きてしまいます。とくにデルタ株では、従来株よりも、ブレークスルーが起きやすい可能性があります。

 従来のウイルス株では、ワクチン接種が終われば、万が一、感染しても体内でウイルスが増えにくく、重症化が防げるほか、他の人に感染させるリスクも低くなると考えられていました。デルタ株に対しても多くの場合、ワクチンは死亡や重症化を防ぐことができていますが、海外では感染を防げないケースが増えてきています。

 米マサチューセッツ州公衆衛生局や米疾病対策センター(CDC)の報告によると、今年7月に同州で開かれた州外からも大勢の観光客がやってくる夏祭りなどのイベントで、469人が感染しました。このうち9割はデルタ株に感染していたと推計されています。469人のうち346人(74%)は、ワクチンの最後の接種から2週間以上経ち、ワクチン接種の完了していた人でした。入院が必要になるほど重症だった感染者5人のうち4人はワクチン接種を完了していました。ただし、ワクチン接種完了者で、亡くなった人はいませんでした。

米マサチューセッツ州のイベント関連感染者数

 また、ワクチン接種完了者と、接種の終わっていない人のPCR検査のデータを調べたところ、接種完了者の体内でも接種の終わっていない人と同じぐらいウイルスが増殖していたとわかりました。つまり、ワクチン接種が終わっていても、他の人に感染させる可能性があるということです。

 国民のほぼ8割が接種を終えているシンガポールでは、日本や米国などより一足早くウイルスがデルタ株に置き換わりました。保健省によると、8月24日までの過去4週間の新規感染者2127人のうち、1039人(48.8%)がワクチン接種を完了した人、536人(25.2%)は接種が部分的に終わった人でした。

 シンガポール政府は清掃や建築といった特定の職域や、一部の大学で定期的な検査を実施するなど積極的に無症候の感染者も見つけています。しかもブルートゥースを使った接触確認アプリが住民の9割以上に普及しており、徹底的に感染者の接触者を探して検査をするため、保健省が発表する新規感染者数は、国内の感染をほぼ網羅的にとらえているとみられます。新規感染者の4分の3が少なくとも1回はワクチンを接種しているという状況は、デルタ株がまん延する世界のポストワクチン社会の現実だろうと考えられます。

シンガポールの新規感染者の内訳

 ただし、ワクチンの重症化を防ぐ効果はデルタ株に対しても持続しています。シンガポールで上記の期間中に感染した人のうち、ワクチンを打っていない人の中で死亡・重症化した人は8.7%いましたが、ワクチンを完了した人では1.6%でした。

デルタ株に感染で、体内ウイルス量は「1千倍」の報告

Q. デルタ株はどうしてワクチン接種していても症状が出たり他の人に感染させたりするリスクが高まるのでしょうか。

A. 原因の一つとして、デルタ株は、従来株よりもヒトの体内で増殖しやすい可能性が指摘されています。

 中国広東省の疾病対策センター(CDC)によると、デルタ株に感染した167人について、PCR検査で最初に感染が確認された時のデータを調べたところ、従来のウイルスに感染した人よりも約1000倍多くのウイルスがあったとみられるそうです。また、感染してから体内でウイルスが増えて、PCRで診断できるようになるまでの日数が、従来株の場合は約6日なのが、デルタ株では約4日と短かったそうです。つまり、デルタ株の方が、感染した直後から従来株よりも増殖するスピードが高いとみられるということです。

 米メディアが公開した米CDCの内部資料によると、感染者1人が何人に感染させるかの指標、「基本再生産数」が、従来株は1.5~3.5なのに対し、デルタ株は5~9.5ぐらいあるのではないかと推計しているそうです。ただし、再生産数は、どのような感染防御対策を取るのかによっても変わってきますので、まだ確定的な数字ではありません。

デルタ株の感染力・中国広東省

高齢者・免疫疾患の人は「ブレークスルー」しやすい

Q. ワクチン・ブレークスルーはどのような人に起きやすいのでしょうか。

A. 免疫疾患やがんなどの治療で、免疫が抑制されている人は、ワクチンを打っても、免疫反応が弱いため、ワクチンによって十分な免疫が構築されず、接種後にブレークスルーの起こる可能性が高いと考えられています。

 加えて、高齢者は他の年代に比べてブレークスルーが起きやすいことがわかっています。米CDCの調査では、今年5月1日までにブレークスルーの起きた8054人のうち5928人(74%)は65歳以上の高齢者だったそうです。加齢に伴い免疫反応が弱くなるためなのか、持病を持つ人が増えてくるためなのか、原因はまだわかっていません。

 イスラエルや英米などワクチン接種先進国では、時間の経過に伴ってワクチンの効果がどう変化するのかデータが蓄積されてきました。また、ウイルスの変異株に対するワクチンの効果についても少しずつわかってきています。米CDCは以前はワクチン接種の終わった人は屋内でもマスクを着用しなくていいとしていましたが、7月27日、方針を転換しました。新型コロナウイルスの流行している地域では、ワクチン接種の有無に関係無く、屋内の公共の場ではマスクを着用するよう求めています。

 米CDCはまた、屋外でも、混雑しているところや、ワクチン接種の終わっていない人と濃厚な接触が避けられない活動をする場合には、マスク着用を検討するよう求めています。たとえば、公園でワクチンを接種しないお孫さんと遊ぶ場合、お孫さんがじゃれてくっついてくる場面も想定されますので、マスクをしておいた方がいいかもしれません。

 ただし、マスクの感染を防ぐ効果も完全ではありません。手洗いや、部屋の換気、他の人との距離をなるべくあけるなど、マスク以外の感染を防ぐ対策も継続した方が安全です。

 デルタ株に対して、ワクチンの効果がゼロになったわけではありません。大部分の人にとって、重症化を防ぐ効果はあります。まだ接種を終えていない方は、できるだけ早く終えて下さい。

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回は「コロナ感染で自宅療養となった時、気をつけたいこと」です。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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