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<連載> ひとことブックレビュー

死とどう向き合うのか、最後の時をどう過ごしたいのか、深く考えさせられました

「いのちの停車場」を読んで/連載・ひとことブックレビュー

2021.09.09

 読者会議メンバーからブックレビューを募る企画に、「いのちの停車場」を読んだ感想が届きました。命をめぐる重い問いかけを、みなさんそれぞれに受け止めていました。

読者会議メンバーが読んだ本

  • いのちの停車場書影サイズ変更
  • 南杏子(著)
    出版社:幻冬舎文庫

     東京の救命救急センターで働いていた62歳の医師・白石咲和子は、故郷の金沢に戻り訪問診療の医師になる。スタッフたちに支えられ、老老介護、四肢まひのIT社長、6歳の小児がんの少女……様々な涙や喜びを通して在宅医療を学んでいく。一方、家庭では、脳卒中後の痛みに苦しむ父親から積極的安楽死を強く望まれ……。現役医師であり、『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』などの著者最新作で、同名の吉永小百合さん主演映画の原作。

死に向き合った本に心を動かされた 人生で役に立つと思える作品

 素晴らしい。著者が現役医師、臨場感と説得力は伝わります。誰でも生老病死はあるが、考え直すきっかけに。
 役職定年が3年後に迫る62歳、責任を問われて辞職、人生の転機。これを自身と重ね合わせてしまいます。同じ年、役職定年、親の介護など、今まで自身と家族のためと考え仕事を続けてきました。
 人生の分岐点で金沢で訪問診療に再出発を歩みだし、父と同居しながら、奮闘する主人公。医療問題~老老介護、介護に苦しむ妻、小児ガンの少女と両親等々。
 死は恐れるものではない、受け入れるものと分かっていても、それができない。色々な形の死を伝えながら、登場人物の本音で、前向きに生きることの意味や最期は一人で死ぬが、孤独ではないし、満足した死があると。在宅で看取(みと)る決意をしたものの、「積極的安楽死」を望む父に、苦悩する心情に心が締め付けられました。
 死に対して向き合ったこの本は、心を動かされ、自身や家族の今後の生活、人生でも役に立つと思える作品。
(栃木県 小松正さん 60代)

両親を見送った時のことが思い出され、今も考えています

 訪問診療医の存在をこの本で初めて知りました。どの章のエピソードも胸にくるものがあって、本当に大変な仕事だと思いました。
 特に六章の「父の決心」は、私の両親や夫の両親を見送った時のことが思い出されて、読み終えた今も安楽死について考えさせられています。自分の家族の死については、医者も私たちと同じ悩みを抱えているんだな、と思いました。
 家族の中で一番先に死を迎えたのは、私の父でしたが、苦しむ父の延命装置を外してくれ、と母は何度も担当医に頼みこんでいました。これと言った死因がない限り、そんなことはできないと断られ、肩を落としていました。衛生兵だった父は最後まで口では苦しいと言いませんでしたが、意識がなくなっても、酸素吸入器を外そうと、もがいていました。
 いのちの停車場、ズシッと重たい作品でした。
(香川県 遠藤和代さん 70代)

安楽死について考えるけれどまだ答えが見つからない

 どんな死に方がしあわせなのか。コロナの中、病が重篤になり、施設から病院に入院してそのまま亡くなった義父のことを思いながらこの小説を読んだ。
 在宅医療と一口に言っても患者によって様々だった。中でも切実に感じたのは高齢者の終末期医療だ。施設に入った義父はいつも家に帰りたいと言っていた。しかし家族にも覚悟がいる。主人公が家族にした「死のレクチャー」は看取(みと)りの心構えで大変勉強になった。こんなレクチャーをして支えてくれる在宅医がいたら、望みをかなえてあげることができるかもしれないと思った。
 最後に安楽死の話もあった。「死ぬこと以外には逃れられない苦しみの日々を送ることになったらあなたは安楽死を望みませんか。それは罪ですか」と突き付けられた気がした。考えるけれどまだ答えが見つからない。
(福岡県 西永厚子さん 60代)

現役の医師だけに書かれたケースはリアリティーあふれる

 吉永小百合さんが主演を務める今話題の映画の原作本である。
 東京の救命救急センターで活躍していた60代の女性医師は、いろいろあって故郷の金沢に戻る。ピンチヒッターとして「訪問診療医」を始めるが、在宅医療では、患者本人だけでなく、夫婦や母娘、親子など、患者家族のさまざまな思惑ともまるごとつきあわなければならない。老々介護やゴミ屋敷に等しい家庭もある。「医者の仕事は命を救うこと」と無条件に信じていたものが崩れ、「命をどう見送るか」という重い課題が待っていた。
 さらに彼女の父親が骨折をきっかけに誤嚥(ごえん)性肺炎、脳梗塞(こうそく)を次々に発症。さらに「異痛症」という拷問のような痛みを絶えず感じる悲惨な状態に陥り、「安楽死」を求めてくる。
 作者が現役の医師だけにリアリティーあふれるさまざまなケースを追いながら、私は「死」とどう向き合うのか、最後の時をどう過ごしたいのか、深く考えさせられるひとときとなった。
(東京都 山本佳津子さん 70代)

命に関して真剣に考える機会を与えてくれた本

 高齢社会である日本において「病老苦」は避けては通れないテーマである。
 老老介護、事故で脊髄(せきずい)を損傷したエリート社長への最先端医療、小児がんのまな娘へのサポート、息子と良好な関係が築けず亡くなる父親の心の叫びなどを、おのおのの家族が試行錯誤しながら、何が幸せかを探っていく。
 それらのケースの根底にあるものは「救いたい」と一心に願う気持ちだけである。名声や富などを得る煩雑な生活の中で忘れがちになってしまった心が、最期に欲し涙するのは、無償の愛に対してである。
 日本医療のタブーである「安楽死」への言及もある。少子高齢社会となった今だから「自分の命の最期は自分自身で決めたい」と考えている人は少なくないのではないかと思う。
 コロナ禍で、昨今ほど医療現場に対して感謝する年は無かった。健康を失って初めてその大切さを知り、命に関して真剣に考える機会を与えてくれた本だったと思う。
(神奈川県 荒井隆子さん 60代)

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