<連載> ワクチン接種Q&A

新型コロナで自宅療養、症状悪化どうチェック? 救急車を呼ぶ目安は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(11)自宅療養時、重症化の兆候はなにか 家族への感染予防は

2021.09.13

 新型コロナは第5波でデルタ株が急拡大し、入院したり感染者療養施設に入ったりできず、自宅での療養生活を余儀なくされた人が急増しました。短期間で症状が急激に悪化することもあり、自宅療養では重症化の兆候を見逃さないことが大切です。どんな注意が必要でしょうか。

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自宅療養中の注意点
新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会のツイートから

「軽症」でもイメージより症状重く 短期間で悪化も

Q: 「ワクチン接種を待っている間に感染しましたが、地元保健所からは軽症なので自宅で療養するよう言われました。どんな点に注意すればいいでしょうか? 」「ワクチンを2回打ったのに感染しました。軽症で、自宅療養になりました。ワクチンを打っているから心配はないですか? 」

A: 軽症といっても、一般の人が思い浮かべるイメージよりは症状が重いことが多いのが実態です。しかも、一部の人は肺炎になるなどして重症化します。新型コロナウイルス感染症は自覚が無いまま重症化したり、短時間で急激に悪化したりすることがあるので、悪化の兆候を見逃さず、躊躇(ちゅうちょ)せず手遅れになる前に保健所やかかりつけ医、救急などにSOSを出すことが大切です。一方で、ワクチン接種をしていなくても半数以上の人は軽症だったり無症状だったりしますので、自宅療養になっただけで、過度に不安に脅(おび)える必要はありません。

 全年代の平均でみると、ワクチンを接種していなくても、新型コロナウイルスに感染しても3割程度は症状が出ないとみられています。また、症状が出た人の中でも8割程度は軽症です。残りの2割は、肺炎になるなどして症状が悪化し、約5%が人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)が必要になるなどします。ただ、高齢者や持病のある人は重症化しやすくなります。

 一方、ワクチン接種が完了していれば、重症化リスクは低くなります。ただし、接種が完了していても、免疫が十分にできなかったなどの理由で重症化して亡くなる人もいるので、ワクチン完了者はまったく心配がないかというと、そういう訳でもありません。

肺炎所見は中等症Ⅰ、呼吸不全・酸素投与で中等症Ⅱ

 厚生労働省の「診療の手引き(https://www.mhlw.go.jp/content/000829137.pdf)」によると、入院が必要かどうかを判断する基準となる症状の重さは、「軽症」「中等症Ⅰ」「中等症Ⅱ」「重症」に4分類されます。分類の基準となるのは、肺の働きを反映する呼吸機能です。このため、いくら高熱が出ても、肺炎が無く、呼吸機能も悪くなく、肺の働きを表す血液中の酸素飽和度(SpO2)が96%以上と標準値なら、軽症と診断されます。高熱が出ると不安になりますが、実際には、発熱だけで命が左右されることはほとんどないからです。

新型コロナの重症度分類
厚生労働省の「診療の手引き」から抜粋

 中等症Ⅰは、肺炎が起きて呼吸機能が落ち、酸素飽和濃度が96%未満になるものの、酸素投与はまだ要らず、自分で呼吸ができる状態です。酸素飽和濃度が93%以下で酸素投与が必要になると中等症Ⅱと診断されます。さらに状態が悪化し、人工呼吸器やECMO、集中治療室での治療が必要になると重症と診断されます。

 第5波の感染者急増で首都圏などで医療崩壊が起きた今年8月初旬、政府や厚労省は、軽症と中等症Ⅰは原則として自宅療養してもらう、という方針を打ち出しました。これには国民や医療従事者、地方自治体などから一斉に反発が出て、今は、医師の判断で入院するかどうかを判断できることになっています。しかし、首都圏や関西圏をはじめ各地で受け入れ病床が不足しており、実際には入院できない人も少なからずいます。

 自宅療養中にとくに注意が必要なのは、重症化の兆候を見逃さないことです。新型コロナウイルス感染症は、本人に自覚症状がまったくないのに重症化したり、少し前までは症状が軽かった人が短時間で急に悪化したりすることがあると各地の病院から報告されています。

重症化の兆候、パルスオキシメーターでチェックこまめに

Q: 自覚症状が無いのにどうやって悪化の兆候を見つければいいのでしょうか?

A: 役に立つのは、パルスオキシメーターという血中の酸素飽和度を測る器機です。自治体で貸し出してくれることが多いですが、もし不足していてすぐに貸してもらえない場合などは、ネットでも購入できます。色々な機種が出ていますので、購入する場合、きちんと国内で医療機器認証を取得しているかどうかを確認してからにしましょう。

 自覚症状のうち息苦しさは、個人によって感じ方にかなり差があります。また、呼吸機能が落ちた際だけでなく、不安が高じて過呼吸気味になっても息苦しさを感じます。パルスオキシメーターは、そういった個人差などに関係なく、呼吸機能を客観的に評価することにも役に立ちます。急に呼吸機能が落ちることがあるので、1日1回ではなく、1日複数回、計測した方がいいとされています。

 パルスオキシメーターの計測値がいくつになったら保健所や自宅療養者のフォローアップセンターに連絡すればいいのかは、自治体によって差がありますが、東京都は93%以下になったら保健所などに連絡し、90%以下になったら119番に電話して救急車を呼ぶよう求めています。

 また、厚労省の専門家会議や政府の分科会のメンバーの有志による「専門家有志の会」は、酸素飽和度の数値以外に、自宅療養中に救急車を呼ぶ目安となる症状として、「唇が紫色になっている」「日常生活の中で少し動くと息があがる」「胸の痛みがある」「横になれない・座らないと息ができない」「突然(2時間以内)、息がゼーゼーしはじめた」「脈が飛ぶ」などを挙げています(記事冒頭の画像:有志の会のツイートから)。東京都も下図のような形式で、救急車要請が必要な症状の目安などをまとめています(PDF版はこちらから)。

自宅療養・症状チェックポイント1
東京都がまとめた救急車要請の目安

 救急車を呼ぶまでではなくても、保健所やフォローアップセンター、かかりつけ医に連絡した方がいい症状として、都は「自宅内の移動や、食事、トイレといった生活動作がつらい」「咳(せき)やたんがひどい」「経験したことないひどい全身倦怠(けんたい)感がある」「発熱が続く」などといった症状を挙げています。また、都は、自宅療養中、自分の健康状態について、どのような点をチェックしたらいいのかについても詳しく紹介しています(下図参照)。

自宅療養・症状チェックポイント2
東京都がまとめた、かかりつけ医への連絡目安など

水分・栄養はしっかり補給、同居者に感染を広げない8つのポイント

 持病がある人のほかに喫煙者、肥満の人も重症化しやすいので、体調の変化にはとくに注意が必要です。持病がなくても、ワクチンを打っていない人や1回しか終わっていない人は、接種が完了した人よりも重症化のリスクが高いです。

 自宅療養中は、意識的に水分や栄養をしっかり補給するよう心がけましょう。発熱していると汗をかき、脱水症になりやすいです。嗅覚障害や味覚障害があると、食欲が落ちて食が細くなることも多いですが、栄養が不足すると、回復が遅くなります。

 希望すれば、自治体が自宅に飲料や食品を届けてくれますが、感染者が急増したために、届くまでに1週間以上かかるところもあるようです。その場合、ネットでも飲食品を注文できるほか、自治体によっては、買い物代行サービスを手配してくれるところもあります。また、買い物代行を請け負う業者や、NPO法人もあります。

 熱があって解熱剤や鎮痛剤などをのみたくても、自治体から自分で手配するよう求められるところも増えています。ネットで買えますが、持病がある人は注意が必要です。飲んではいけない薬や、気を付けてのまなければならない種類の薬があるかもしれません。自己判断せず、まずは、持病を診てもらっている医師に相談しましょう。

自宅療養中の8つの注意
厚生労働省のサイトから

 同居している家族がいる場合、家族への感染も心配だと思います。なるべく部屋を別にする、換気をしっかりするなど、家族に感染させないためにできることが、厚労省のサイトで紹介されています(上図参照。PDF版はこちらから)。また東京都も「自宅療養者向けハンドブック ~感染を広げないために~」をまとめ、感染予防の8つのポイントを詳しく解説しています。

自宅療養時の感染予防策
東京都の自宅療養者向けハンドブックから抜粋

 ただし、いくら気を付けても、同じ家で暮らしている家族にはどうしても感染が広がってしまいます。一番の予防は、外から感染を持ち込まないことと、打てる人はワクチンを打っておくことです。

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回は「子供へのワクチン接種、どう進む? 」です。

※Reライフプロジェクトでは、読者会議メンバーの皆さんを対象に「ポストコロナ(コロナ後)」の健康管理に関するアンケートを実施中です。ぜひ、ご参加ください。
「ポストコロナ」の健康管理、どうする? 何に気をつけたいですか?

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの4回目接種が本格化しています。感染・重症化予防の有効性は? 副反応への対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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