<連載> ワクチン接種Q&A
コロナワクチン、子どもに打っても大丈夫? 気をつけたい副反応は?
疑問・質問「コロナとワクチン」(12)子どものワクチン接種、メリットとデメリットはどちらが大きい
緊急事態宣言が解除され、新型コロナ対策の当面の課題は、第6波への備えをどう整えるかです。子どもを含む若年層のワクチン接種は、感染の再拡大を予防する対策のひとつとなります。いま、接種はどこまで進んだのか。思春期の男性に多いという心筋炎など、事前に知っておきたい副反応には、どんなものがあるでしょうか。
関連記事:「5~11歳の子どもにも打つべき? 効果は? 副反応は?」はこちら。

接種はファイザーかモデルナの2種、12~15歳は親の同意が必要
Q:子どもの感染が増えてきていて心配です。子どもにワクチンを接種させたいのですが、いつから、どこで打ってもらえるのでしょうか?
A:国内では現在、12歳以上が新型コロナウイルスのワクチンを接種できます。11歳以下は接種できません。12歳以上が打てるワクチンの種類は2種類です。
新型コロナ新規感染者数の年代別の割合をみると、18歳以下の上昇傾向が鮮明になったのは8月に入ってからです。それまでほぼ横ばいで推移していましたが、今年第31週(8月2~9日)から急ピッチで上昇し9月半ばごろまで続きました。

全国的な新規感染者数の急増で医療体制が逼迫(ひっぱく)し、自宅療養を余儀なくされた人たちが急拡大したのと軌を一にした形で、家庭内での感染が広がったためとみられています。高齢者や疾患を抱えた人へのワクチン接種を最優先とした結果、若い世代ほどワクチンの接種率が低かったことが背景にありました。

現在、ワクチンを打つことができるのは12歳以上です。誕生日前日の24時に12歳になることから、誕生日の前日から接種できます。ただし、自治体によって接種券の送付時期が異なります。誕生日前に発送しているところもあれば、誕生日になってから発送するところもあります。16歳以上は保護者の同意はいりません。12~15歳までは保護者の同意が必要です。
国内で使われている新型コロナウイルスワクチンは3種類あります。このうち12歳以上の子どもが打てるのはファイザー・ビオンテック社製かモデルナ社製のm(メッセンジャー)RNAワクチンです。アストラゼネカ社製は原則として40歳以上が接種対象です。ただし、mRNAワクチンの成分に対するアレルギーがあるなど特別な事情がある場合は18歳以上から接種できます。
子どもの接種は、個別に予約して小児科のクリニックや診療所などで行うほかに、自治体によっては集団(大規模)接種会場で受けられるところもあります。集団接種会場での接種の対象は自治体によってさまざまです。12歳以上の接種を受け付けているところや、16歳以上に限定しているところ、受験生とその保護者に対して優先的に接種しているところなどがあります。居住地のある自治体に問い合わせて下さい。16歳以上なら、東京と大阪にある国の自衛隊大規模接種センターでも打つことができます。また、集団接種を実施している大学もあります。

さまざまな接種体制が整うにつれ、若い世代のワクチン接種率は、急ピッチで上昇しています。東京都の場合、計2回の接種を終えた12~19歳の割合は、8月初めの時点でわずか1%、9月初めでも1割ちょっとでしたが、その1カ月後の10月初めには4割近くまで上昇しました(年代別ワクチン接種状況の図表は、東京都福祉保健局「ワクチン接種実績」から作成)。ただし、子どもの感染源の大部分は成人です。学校や児童施設などの職員を始め、子どもに接する機会の多い成人がまずワクチンを接種しておくことが重要です。
接種部位の痛みや腫れには、冷やしたぬれタオルを
Q:子どもにワクチンを打った後の副反応は大丈夫でしょうか?
A:子どもも成人同様、接種部位の痛みや発熱といった副反応が起きることがありますが、一過性です。ただし、持病のある子どもの場合、発熱などが大きな身体的な負担になることもありますので、事前にかかりつけ医に接種が可能かどうか相談して下さい。また、かなり発生頻度は低いものの、心筋炎やアナフィラキシーといった重い副反応が起こることもあります。すぐに治療すれば重症化はしません。多くの子どもにとって、新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐなどワクチンで得られるメリットは、副反応が起きるといったデメリットを大きく上回ると考えられています。ただし、個人差がありますので個別の判断が必要です。接種する場合、子どもに対して事前に、接種後にどういった症状が出たらすぐに保護者や近くにいる成人に伝えるべきかを十分に説明しておくことも大切です。

接種した部位の痛みや腫れといった局所的な副反応のほか、発熱や倦怠(けんたい)感、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢といった副反応が起こることがあります。1回目接種よりも2回目接種の後の方が発生頻度が高くなります。
米疾病対策センター(CDC)は、接種部位の痛みや腫れなどに対しては、冷やしたぬれタオルをあてたり、痛い側の腕を動かしたりすることで不快感を減らすことができるとアドバイスしています。また、厚生労働省は、接種部位がかゆい場合には、冷やすほか、抗ヒスタミン剤やステロイドの塗り薬を使うと症状が軽くなるとしています。こういった塗り薬の成分は、市販の虫刺されの薬にも含まれていることがあります。

発熱や痛みに対しては、解熱鎮痛剤を飲むのも対処法のひとつですが、年齢によって飲める薬が異なりますので、医師や薬剤師に相談してから飲むようにして下さい。また、持病があって他の薬を飲んでいる場合にも、事前にかかりつけ医に相談して下さい。副反応への対処は、連載の7回目「ワクチン接種後の腫れ・痛み・発熱にどう対応? 解熱剤のんでもいい?」でも解説しています。参考にしてください。
心筋炎と心膜炎、起きやすいのは思春期などの若い男性
発生頻度は高くありませんが、mRNAワクチンの接種後、心筋や心膜に炎症が起きる「心筋炎」や「心膜炎」が起きることもあります。1回目よりも2回目接種の後に起きることが多く、ほとんどは接種から7日以内に発生します。心筋炎(心膜炎含む)が起きやすいのは、思春期を含めた若い男性です。

米CDCの予防接種に関する諮問委員会によると、8月18日までの報告では、ファイザー社製ワクチンの2回目接種後7日以内に心筋炎が起きる頻度は16~17歳の男性で最も高く、100万回あたり71.5件、次いで12~15歳の男性で同42.6回、18~24歳の男性で37.1回でした。米国ではモデルナ社製は17歳以下には承認されていませんが、18歳以上の発生頻度はファイザー社製とほぼ同等なので17歳以下でもほぼ同じ頻度で発生すると推測できます。米国で心筋炎が起きた大部分の人は入院して治療を受けましたが、ほとんどの人が回復しています。ただし、長期的な影響はわからないため、米CDCでは8月までに心筋炎が起きた人を今年11月まで経過観察するとしています。
国内では、全年齢で、ファイザー社製ワクチン100万回接種あたり0.6件、モデルナ社製ワクチンで同1.6件の心筋炎が報告されています。
心筋炎が起きると、胸が痛くなったり息苦しくなったり、動悸(どうき)がしたりすることが多いので、接種後にそのような症状が出たら、すぐに医療機関を受診して下さい。また、日本小児科学会は、接種後2、3日、できれば1週間は、激しい運動を控えたほうがいいとしています。

アナフィラキシーのほとんどは接種後30分以内
心筋炎よりさらに発生頻度の低い副反応のひとつに、ワクチン成分に対する激しいアレルギー反応、アナフィラキシーもあります。息苦しさやのどが詰まるような感じ、じんましんや皮膚の腫れ、意識がもうろうとする感じ、吐き気といった複数の症状が出ます。厚生労働省によると、8月22日までの接種では、年齢を問わずに、ファイザー社製ワクチンで100万回の接種あたり4件、モデルナ社製ワクチンで同1.5回のアナフィラキシーが起きました。ほとんどの場合、接種から30分以内に起きます。すぐに治療すれば大事には至りません。
まれに、接種後に失神することもあります。接種の痛みや接種に対する緊張、寝不足などの体調不良など様々な原因で、血管迷走神経反射と呼ばれる反応が起き、一時的に脳への血流が減少するために起きることが多いです。失神自体は安静にしていれば治りますが、失神して倒れてけがをしないよう注意が必要です。
他の注射や採血で失神した経験のある人は、接種前にそれを医療従事者に伝え、横になって打ってもらうなどの工夫をしてもらって下さい。また、失神する前には、頭がふらふらする、吐き気がする、冷や汗が出るといった兆候が起きることが多いので、そのような症状が起きたら、すぐに接種会場の医療従事者に伝えて、横になれる場所に連れていってもらって下さい。

日米は12歳以上に「推奨」、英国は15歳以下「推奨しない」
厚生労働省は、まれな副反応の中では相対的に頻度が高い若い男性の心筋炎の発生を考慮しても、新型コロナウイルスに感染すればもっと高い頻度で心筋炎が起きるため、ワクチンを接種するメリットの方が大きく、12歳以上の人全般にワクチン接種を推奨するという立場です。米国政府も同じ立場です。
また米国では、ファイザー社、モデルナ社が、11歳以下の児童を対象に、接種する用量を減らしたワクチンの臨床試験を行っています。児童とワクチン用量については、連載の8回目「ワクチン接種量、体格が違ってもなぜ同じ? 大人と子供、男女差は?」でも説明しています。参考にしてください。
一方、英国のワクチンに関する合同委員会は、持病があって、新型コロナウイルスに感染すると重症化する恐れのある子どもを除き、健康な子どもは感染しても重症化するリスクが低く、他の年代でのワクチン接種率が高いことから、持病の無い15歳以下の子どもにはワクチン接種を推奨しないとしています。ただし、今後、副反応による長期的な健康影響がわかってきた段階で、推奨を見直す可能性はあるとしています。
感染した時のリスクや副反応に対するリスクは一人ひとりの健康状態によって異なります。また、持病がなくても、一定の割合で重症化する子どもは出てきます。子どもの健康状態や地域の感染状況を考慮した上でワクチン接種のメリットとデメリットをよく検討し、接種するかどうかを決めて下さい。
接種する場合、子どもは自分の体調の変化をうまく言語化して保護者に訴えることができないことがあります。万が一、アナフィラキシーや心筋炎などが起きた場合には、すぐに治療が受けられるように、接種前に、どのような症状が出たら、すぐに保護者や周りの成人に伝えるべきかを十分に説明しておくことが大切です。
◇
新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。
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この連載について / ワクチン接種Q&A
高齢者を対象にした新型コロナワクチンの4回目接種が本格化しています。感染・重症化予防の有効性は? 副反応への対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。
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