<連載> 今すぐできる終活講座

それでも片付けたいなら、休眠口座やSNSの整理をしよう

断捨離不要、片付けない終活(後編)

2021.10.22

 「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど、何からやればよいか迷っているという人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために、遺贈寄附推進機構代表取締役の齋藤弘道さんが今すぐ役立つ終活の基礎知識やヒントを紹介します。「片付け」について前回は「残された人のことを思って無理にする必要はない」とお伝えしましたが、それでも「片付ける終活をしたい」という人はどうすればよいか、考えていきましょう。

終活講座)片付けたいなら休眠口座やSNS整理
使っていない銀行口座やクレジットカードは「片付け」をおすすめします

残された家族のための片付けとは

 世の中にたくさんの「片付け」の本があるのに、片付けを否定ばかりしていると怒られそうです。アンケートでも、興味のある終活項目のトップは「断捨離・片付け」です。どうしても片付けたい方は多いようですので、そのような方におすすめの片付けをご紹介します。

 ただし、「自分の生活のため」の片付けは多くの本で語られていますので、ここでは「残された家族のため」の視点で考えていきます。基本的に、残された家族がモノの処分で悩む必要はないと私は考えていますが、「これをしておくと助かることもある片付け」があります。

財産に関する片付け

 財産に関する情報は、キャッシュカードなどをコピーして「終活ファイル」に入れておけば、残された相続人はその情報を元に相続手続きができますので、それ以上整理する必要はありません。ただ、使っていない銀行口座やクレジットカードが数多くあるのではないでしょうか。

 口座残高が1000万円でも1万円でも、銀行で必要な相続手続きはほぼ同じです。戸籍謄本一式や遺産分割協議書などをそろえ、取引銀行で相続関係届をもらい、相続人全員の署名・押印と印鑑証明書を添付して窓口へ提出し、数日後に指定口座へ入金されて計算書を受け取る、というような手続きが取引銀行の数だけ必要になります。この手続きが面倒で放置されると休眠預金になり、日本全体では年間数百億円にもなります。使っていない口座を「片付け」ておくと、相続人は助かります。

 お金持ちの方は、ペイオフ(金融機関が破たんした際に預金などの一定額までが預金保険により保護される制度)に備えて、複数の銀行などに1000万円ずつ預金を分けている場合もあると思います。リスクを回避する上でこれも有効な手段ですが、銀行本体よりも高い格付けの金銭信託などもありますので、数多くの金融機関に分散されている方は一度見直しても良いでしょう。

 クレジットカードについても、不正利用のリスクがありますので、使っていないのであれば「片付け」ましょう。相続人が手続きすると大変ですが、生前に本人が電話すれば、すぐに解約できます。

 お金の貸し借りも、相続対策を除いて、できるだけ解消しておきたいところです。特に、個人間の貸し借りは借用書があっても残高の確認が難しいケースが多いものです。また、住宅ローンであれば大抵は団体信用生命保険で完済されますが、最近はやりのリバースモーゲージローンは借り主死亡時に自宅を売却して返済する仕組みなので、契約書を終活ファイルに保管した上で、相続人となる方へ事前に伝えておくと良いでしょう。

財産以外に関する片付け

 財産以外にも、できればやっておきたい「片付け」があります。SNSを利用されている方も多いと思いますが、利用者が突然死亡したらどうなるのでしょうか。当然ですが、何もしなければ故人のアカウントはそのまま残り続けます。通常は特に不都合はありませんが、アカウントの乗っ取りなど犯罪に利用されるリスクがあります。生前であれば本人が対処できますが、死亡後はそうはいきません。

 SNSによって異なりますが、事前に、追悼アカウント(故人に代わって最後のメッセージをシェアする、アカウントの削除をリクエストするなどの機能)を登録するサービスを利用するのも良いでしょう。こうしたサービスがない場合は、相続人が死亡を証明する書類を添えてアカウントの削除を依頼することになります。

 財布の中のカード類を「片付け」する場合に、注意すべきことがあります。カード類の中には、病院の診察券があると思いますが、歯科診療所の診察券は残しておいてください。歯の治療をする際に、歯型のX線写真を撮られた方も多いと思います。事件や事故・災害などで死亡した場合に、この写真や治療記録が身元確認に役立つのです。あまり考えたくないことですが、どのような死因で亡くなるかわかりません。役に立つ日が来ないことを祈りつつ、診察券のコピーを終活ファイルに入れておきましょう。

片付けた財産を世の中に役立てるという選択肢

 「片付け=捨てる」のイメージがあるかもしれませんが、次のような方法が考えられます。

①整理する:収納を工夫して収める

②譲る:タダで誰かに引き取ってもらう

③売る:モノをお金に換える

④捨てる:廃棄処分する

 ①は収納に限界があり、②は欲しい人とのマッチングが難しく、③は金銭価値のあるものは限られるので、どうしても④の「捨てる」ということになるのでしょう。ただ、③の「売る」という方法は、リサイクルショップだけでなくネット上のオークションや売買サイトも充実してきましたので、少しでも価値があれば「売る」ハードルが下がったように感じます。

 モノをお金に換えるだけでも良いのですが、さらに一歩進んで、モノを売った代金を寄付する仕組みがあります。「お宝エイド」というサービスです(https://otakara-aid.com/)。NPOや財団法人など、支援したい団体を指定してモノを寄付します。埋もれていたモノは新たな利用者に活用されるだけでなく、モノの査定額が非営利団体の活動資金になります。

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 片付けで家がスッキリしますので、まさに「三方良し」です。片付けを実行される方は、こうした選択肢を検討されてはいかがでしょうか。

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  • 齋藤弘道
  • 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

    遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

    信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

  • この連載について / 今すぐできる終活講座

    「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど何からやれば良いか迷っている…。そんなあなたのために専門家が今すぐ役立つ「終活」の基礎知識やヒントをご紹介します。

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