<連載> 尿漏れ相談室

尿漏れ防止の膀胱トレーニング 水分の取り方にも「さじ加減」が必要です

「おしっこ先生」が答えます(7)

2021.10.22

 急な「尿漏れ」や「頻尿」など尿トラブルで悩んでいませんか? 「おしっこ先生」こと日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院の女性泌尿器科部長・加藤久美子先生に明るくアドバイスしていただきます。今回は「膀胱(ぼうこう)訓練」や水分の摂取量についてのお話です。

尿漏れ相談室)膀胱訓練と水分の取り方のコツ
水分を取りすぎると頻尿に。逆にがまんしすぎて脱水症状になる人も

少しずつ排尿の間隔をあけてみる

 「気をそらして排尿間隔をおく」という「膀胱訓練」は、過活動膀胱の行動療法の一つです。トイレががまんできないと思っても、実際には膀胱がまだいっぱいになっていないことがあります。行きたくなっても15~30分ほどがまんして排尿の間隔をあけてみます。少しずつ時間をのばして排尿間隔を広げる訓練ですね。尿漏れが時々しか起きないのに頻尿で不安になっている人には、特におすすめしています。

 ただし、「1回だけ尿漏れで失敗した、不安だから早め早めにトイレに行くようになった」という人にはいいのですが、「すぐもれちゃう、がまんできない! 」と重症の過活動膀胱でモレモレの状態に悩んでいる人に、「おしっこをがまんして」と言うのは現実的じゃないですよね。社会生活ですごく困っている人にそんなこと言ったら怒られかねません。

 とても困っているなら、「まずはお薬で膀胱をゆったりさせて、それから少しずつ膀胱訓練をしたらどうですか? 」とおすすめします。そして膀胱訓練して落ち着いたら薬を減らす。あるいは薬をやめるというのもいいですね。

おしっこや食事量を記録しておく

 この見きわめ、実はなかなか難しいのです。膀胱容量が小さくて病的な激しい尿意切迫感があるなら過活動膀胱。でも朝の1回目とか夜に起きてトイレに行く時は尿が400㎖ぐらいためられているのに、昼間は50~100㎖ぐらいですぐにトイレに行ってしまう……というならば「心因性頻尿」の要素もあるのではとお話しします。

 泌尿器科を受診する時は、自分で「排尿日誌」を書いてみましょう。おしっこした時間と量、尿意切迫感、尿漏れの有無、食事や飲み物による水分摂取量などをまる1日、できれば数日間記録して持って行くと良いですね。診断に役立ちますよ。

飲み過ぎて頻尿、飲まなくて脱水になる人も

 水分摂取を減らすこと、アルコールやコーヒー、緑茶などのカフェイン、炭酸を含む飲み物を減らすのはある程度の効果があります。けれども患者さんのなかには「頻尿で困っているので」と極端に水分を減らして脱水ぎりぎり、みたいな人もいる。1日の尿量が1000㎖未満とかね。その場合はお薬をのんで尿漏れの恐怖を減らしつつ、「もうちょっと多く飲みましょうね」と言っています。

 一方、1日3000㎖も飲む人がいます。健康にいいからと「なんとか茶」を山のように飲んでいた人がいたんですね。そりゃあ火に油を注ぐようなもんでしょう。「頻尿や尿漏れで困っているのに、こんなに飲まなくてもいいんじゃないですか? 」って言いましたよ。よくテレビの健康番組などで「これは体にいいから飲みましょう」ってすすめますが、「どれぐらい飲めばいいか」の情報がないでしょう。栄養失調になってもいけないけど肥満になってもいけないのと同じで、水分摂取も妥当なところがあるんです。

 成人は1日の尿量が約1500㎖前後です。体重1㎏あたり20㎖ならちょっと乏尿(尿が少ない)傾向と言えます。反対に40㎖以上、つまり体重50㎏の人の1日尿量が2000㎖以上あれば多尿傾向と言えます。頻尿・尿漏れで困っているなら25㎖×体重(㎏)ぐらいの尿量になるように調整しましょう、と夜間頻尿ガイドラインにも書いてあります。ほどよく、何ごとも過ぎたるは及ばざるがごとし、です。水分摂取が多ければ多いほどいいわけじゃないんですね。排尿日誌をつけてみて、1日の尿量が1000~1500㎖ぐらいの間ならばいいと思います。

 夜間頻尿についてもビールの大ジョッキを飲んだら、ひと晩に何回かトイレに行ったっておかしくないですよ。患者さんが「ビールが大好きで……」と言う人なら「夜中に3回ぐらい起きたっていいじゃないですか。おいしく飲んでください」ってアドバイスして安心してもらっています。一方で夜3回トイレに起きるのが「苦痛」ならば、飲む量をふり返ってみましょう。(談)

  • 加藤久美子
  • 加藤 久美子(かとう・くみこ)

    日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 女性泌尿器科部長

    1957年生まれ、82年名古屋大学医学部卒業。86年同大学大学院医学研究科修了(医学博士)。同年、同大付属病院で日本初の女性尿失禁外来の開設に参画。30余年にわたり女性泌尿器科、排尿診療に先駆けとして取り組む。2006年より現職。「女性の尿トラブル」「シニア女性の骨盤臓器脱」(NHK出版/別冊NHKきょうの健康)監修。

  • この連載について / 尿漏れ相談室

    人に相談しづらい「尿漏れ」や「頻尿」の悩み。トイレが気になって外出に不安を抱える読者も多いようです。トラブル対策や治療方法、自分でできる骨盤底筋トレーニングなどを泌尿器科医や理学療法士がご紹介します。

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