<読者ブログ>

<連載> 美術館探訪(アート部)

壁を壁のままにしなかった5人 生きることへの力いただいた

読者会議メンバーが見た「Walls & Bridges ~壁は橋になる~ 世界にふれる、世界を生きる」展

2021.11.04

 アートを通じ、自らを取り巻く障壁を、展望を可能にする橋へと変え得た5人の作品展「Walls & Bridges ~壁は橋になる~ 世界にふれる、世界を生きる」(2021年7月22日~10月9日)が東京都美術館で開かれました。チケットプレゼントに当選され、鑑賞したReライフプロジェクト読者会議メンバーの感想を紹介します。

読者会議メンバーが訪れた企画展

  • Walls&Bridges展ポスター
  • 「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」展
    東京都美術館

     展示する5人の分野は、絵画、彫刻、写真、映像であったり、あるいはそれらにまたがっていたりと異なります。国籍も多様で、お互いの面識もありません。しかし、5人にとっての表現とは、「よりよく生きる」ために必要な行為であり、生きる糧として、なくてはならないものだったという点で共通しており、「不思議な親和性」を感じた同館が一つの展覧会に作り上げました。

Walls & Bridges外観

作家それぞれの記憶という言葉を軸に展開

 5人の作家が、絵画・彫刻・写真・映像で自分なりに記憶という言葉を軸に展開していました。
 東勝吉さんは、83歳から絵を描き始めて16年間水彩画を描いて素晴らしく感じます。増山たづ子さんは、「カメラばあちゃん」と呼ばれ、心温まる写真は懐かしい田舎を思い出させてくれました。パルウエルロ・保田さんは絵画と彫刻を極め、祈りを感じました。セカルさんは彫刻や絵画で抽象的な自由さを感じました。メカスさんは16ミリカメラで撮影した古き良きアメリカの日記映画が心に残りました。
 (神奈川県 渡邉道子さん 60代)

83歳から絵筆をとった東勝吉 同年齢の私は驚き

 広い会場にもりだくさんの展示量でしたが、時間をかけてゆっくり見ました。どの作品も作者の個性がうかがえるものでした。
 83歳から絵筆を握った東勝吉には、同じ年齢の私にとって、驚きの展覧会でした。作風も特に絵についての勉強をされてはいないと思いますが、絵心があったのか、自由なタッチで描かれているように思われました。むしろ、なまじっか絵を習ったりすると、その枠に捕らわれてしまうのかもしれません。高齢者にとっては、風景画など共感する作品が多く、親しみを感じました。
 一方、83歳で絵を描き始めようと決心したきっかけも興味をもちました。解説を見落としていたとすれば残念です。
(東京都 古賀節彦さん 80代)

Walls & Bridges東
東勝吉の作品展示風景

多くの写真に写る人々の表情は本当の笑顔

 5人それぞれの生き様が強く表現されており、非常に感動しました。
 生きて行く環境が難民であったり、反ナチス運動であったり、育児に追われたり、そして年齢的なハンデであったりとそれぞれ大変厳しい状況にありました。それでも表現することへの情熱は、少したりとも衰えることなく、真摯(しんし)に向き合ってきたことにとても興味を覚えたことは言うまでもありません。
 特に増山たづ子及び東勝吉両氏の作品に引き付けられました。増山さんの多くの写真に写しだされた人々の表情は本当の笑顔であり、いかにそのコミュニケーション行き届いていたかが分かります。また東さんの作品は、高齢にもかかわらず、しっかりとした構図と美しい色合いで、見る人の心を本当に温めてくれると思いました。全体的に生きることへの力をいただいた展覧会でした。
(千葉県 彦坂祥三さん 70代)

Walls & Bridges増山2
Walls & Bridges増山
ともに増山たづ子の作品展示風景

何げない日常を切り取った写真 懐かしさすら

 「Walls & Bridges」展のチケットをReライフの展覧会招待企画でいただいて、家内と久しぶりに東京都美術館を訪れました。
 「Walls & Bridges」の意味を5人の出品者の作品を見ているうちに理解できたことは幸いでした。 障害としての「壁」を新しい世界へとつなげる「橋」に変えた表現者たちの姿勢は、状況は違えどそれぞれ立場で挑戦されていると感じました。
  中でも、農家の主婦だった増山たづ子さんは60歳にして故郷が水没の危機に迫られ、身の回りの情景を撮り始めます。 亡くなるまでに撮られた写真はアルバムで600冊、10万カットにも及ぶとのことです。 何げない日常の一コマを切り取った写真(記憶)に懐かしさすら感じました。シンプルな展示にもかかわらず圧倒的な存在感を示していました。
  こういう埋もれた表現者の再発見や再評価を促す企画展は貴重であると思います。
(東京都 阿波田覚さん 60代)

Walls & Bridgesセカル保田
シルヴィア・ミニオ= パルウエルロ・保田とズビニェク・セカルの作品展示風景

壁と思えば壁のまま、情熱を燃やせば橋になる

 作者や作品の来歴を知らずとも、情熱は伝わり喜びはつながる。創っている時が何より楽しく、止められても突き抜けるエネルギーにあふれていた。
 メカスの日記映画は誰もが重ね合わせることのできる人生の一コマだが、ナチスの迫害という経歴を抜きにして、何げない生活にこそ幸せがあるのだと思い至る。東の絵画には、木も草も風も雲も、山のことは季節を通して知り尽くしている自信と愛情が満ちていた。セカルの彫刻はさまざまに読み取れる面白さがあった。収容所で拷問を受ける様か自由を得た様か、制作年と照らしたところで決まるものでもない。保田のペン画には、日常の中に神がいる厳かな愉悦が感じられた。増山の写真は、ダム建設のため沈む村の、おそらく最後の行事の数々が並ぶが、村人が向けるのは屈託の笑顔、増山への深い親しみに見えた。
 壁は壁と思えば壁のまま、情熱を燃やせば橋になる、情熱をかけて橋にする呼びかけと受け止めた。
(東京都 三井美恵子さん 60代)

Walls & Bridgesメカス
ジョナス・メカスの作品展示風景
  • この連載について / 美術館探訪(アート部)

    Reライフ読者会議では、登録メンバーを展覧会に招待し、作品を鑑賞した感想を投稿してもらう企画を不定期で開催しています。作品の感じ方は十人十色。アートに正解はありません。そんなアート好きのReライフ世代の感想を集めました。

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