<連載> 専門家のお悩み相談室

自宅に住み続けながら老後資金もほしい リバースモーゲージをするならいつ?

ファイナンシャルプランナーが答えます 【ケース2】Bさん(62歳女性)の場合

2021.12.24

 どう家計を見直したらいいか悩むReライフ読者会議メンバーに、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんがオンライン会議システム「Zoom」を通じてアドバイスする連載の3回目。自宅(持ち家)に住み続けながら、その家を担保にお金を借りられる「リバースモーゲージ」について相談したいという東京都内在住のBさん(62歳)夫妻が参加しました。

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一万円札と家と車の模型

リバースモーゲージやリースバック 長生きの可能性も考えて判断を

 Bさんは東京都内のマンションで夫(62歳)と2人で暮らしています。子どもはいません。夫は定年後に再雇用で働いていますが、収入は激減。Bさんもコロナ禍で派遣社員の仕事を失い、世帯年収は500万円以上減りました。現在の毎月の収入は、給料と年金で約33万円です。

 そんなBさん夫妻の一番の関心事は、老後の住まいについてです。「子どもがいないため、資産は使い切りたい」と言うBさん。自宅のローンは完済しており、「リバースモーゲージを考えるとしたら、どの段階で決断すべきでしょうか」と深田さんへのオンライン相談を希望しました。

  深田さんはまず、「リバースモーゲージは一戸建て限定という金融機関が多いです」と前置きしたうえで、リバースモーゲージについて、説明を始めました。

 「リバースモーゲージは英語の『逆(リバース)』と『住宅ローン(モーゲージ)』を組み合わせた言葉で、直訳すると、『逆住宅ローン』という意味です。
 自宅(持ち家)に住み続けながら、その家を担保にお金を借りられます。ただ、審査は厳しいですし、融資額は評価額の50%程度のケースもあるので、誰もが利用できるものではないですね。
 また、早くからリバースモーゲージを契約し、その後、想定以上に何十年も長生きした場合、融資の一括返済が必要になるか、返済できなければ住まいを失うリスクがあります。

 『リースバック』というタイプの商品もあります。自宅を不動産会社に売却した後、その不動産会社と賃貸契約をして、自宅に住み続けられます。
 リースバックもリバースモーゲージと同様に、長生きした場合のリスクがあります。
 例えば、1000万円で自宅を売ったとします。売却時には1000万円の現金が入ってきますが、せっかく住宅ローンの支払いが終わっていたのに、今度は家賃を払っていかなければなりません。
 早くからリースバックを利用すると、最終的な家賃が1000万円を超える可能性があります。しかも通常の不動産売買に比べて評価額は低く、家賃は割高になります。

深田晶恵さん
オンライン会議システム「Zoom」で相談者に助言するファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん

 私も子供がいないので、『最後の住まいはどうしようか』という問題はあるんです。だから、もし私自身がリースバックを利用するなら、『95歳を過ぎて、私、ひとりになっちゃった。家を片付けて住み替える気力も体力も、もうない』みたいな状況になってからにしようと考えています。
 リースバックを利用すれば、自分が死んだ後に、誰かに相続させて売ってもらうといった手間がなくなるのはいいですね」

60歳以降、3度訪れる「収入ダウンの崖」

 深田さんは続けて、「収入ダウンの崖」について説明を始めました。

収入ダウンの崖
深田晶恵さん作成

 「60歳以降、収入ダウンの崖は3度あります。定年退職、年金生活のスタート、配偶者が死亡したときです。
 その都度、収入が減りますが、とにかく、減った収入の範囲内で生活しましょう。そうやって『収支トントン』で家計をやりくりし、それまでに貯蓄してきた老後資金に手をつけない時期をなるべく延ばしましょう。
 定年退職後の60代前半が家計のやりくりが一番大変です。65歳を過ぎて、『年金をもらいながら足りない分だけ働く』というのはそんなに大変ではないですよ」

 この説明を聞いたBさんの夫は、「70歳までがんばらないといけないんですね。『あと1年、あと1年』と働かなければいけない期間が延びていっている感じです」とがっかりしました。
 Bさんの夫はもともと60歳で定年退職したら、働かずにのんびりと過ごすつもりでしたが、老後の生活に不安を感じたため、仕方なく再雇用を選択。64歳までには退職し、その後はようやく働くことから解放されると期待していたからです。

 肩を落とすBさんの夫を、深田さんはこんなふうに励ましました。
 「Bさんご夫妻だけじゃなくて、みんなそうですよ。Bさん夫妻の場合、65歳以降は2人で月5万円を稼げばいいんです。『今と同じようにいっぱい働いてください』ということではないですよ。
 頑張って長く働いてきたから60歳で再雇用しないで引退するのが夢だったという男性は相談者の中にも多いんです。でも今の時代、残念ながらそれはできないですね。
 Bさんご夫妻は年間400万円くらいの支出があるようですが、2人とも全く働かなければ5年で2000万円必要です。それはやはり選択肢としては『ない』ですよね。
 『あなたが働いて稼いできてよ! 』と夫だけに押しつけずに、『私も働きます』と言っているBさんがいるんだから、大丈夫です。65歳以降は2人で月5万円を稼ぐというのはそんなに悲観しなくていいと思いますよ」

 相談を終えたBさん夫妻は、老後の住まいについて、「ファイナンシャルプランナーの深田さんが『自分がリースバックを利用するなら95歳を過ぎてから』と話されたことがかなり衝撃的でした。長生きのリスクをどう考えるのかも含め、考えていきたいです」と話しました。
 また、「年金生活が始まった後も働いて、2人で月5万円程度の収入を得た方がいい」というアドバイスについて、Bさんは「私は働けるうちは働きます。性格的にどんな仕事もなじめるので大丈夫です。
 ただ、夫は大学卒業後に入社した会社でずっと働いてきたので、例えばコンビニエンスストアのアルバイトなど、65歳になってから新しい仕事ができるのか不安なようです」と率直な気持ちを明かしてくれました。

深田晶恵さん監修『かんたん年金家計ノート2022』

  • かんたん年金家計ノート2022
  •  給与生活と違い、年金の受け取りは2カ月に1回。深田さんが執筆・監修し、12年間改良を重ねてきた『かんたん年金家計ノート2022』は、限られた収入でもお金に不安のない生活を送るための工夫が詰まっている。付録として、1年間の収入と支出の予定を確認できる一覧表や、毎月の貯蓄取り崩くずし額などを確認できる決算シートがついており、老後資金の目減りを防ぐのに役立ちそうだ。「本当に要る保険」や「健康保険制度」をテーマにした特集もある。

<深田晶恵さんの記事>

  • 深田晶恵
  • 深田 晶恵(ふかた・あきえ)

    ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士) (株)生活設計塾クルー取締役

    1967年、北海道生まれ。外資系電機メーカー勤務を経て96年にFP資格を取得。現在は、特定の金融機関に属さない「生活設計塾クルー」のメンバーとして、個人向けのコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じてマネー情報を発信している。ダイヤモンドオンラインなどでマネーコラムを連載中。著書に『これからの生活どうなる? に備える 記入式 年金生活ビギナーのための家計練習帳』『かんたん年金家計ノート 2022』『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』など。

    深田晶恵さんのウェブサイトはこちら

  • この連載について / 専門家のお悩み相談室

    「第二の人生」を生きていく上で、誰もが様々な課題に直面します。Reライフ読者会議のメンバーから寄せられた悩みや疑問を皆で共有し、解決のヒントを専門家に教えてもらいます。

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