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<連載> 腸戦者に訊く

第4回 腸内細菌が「脳腸相関」のカギを握る

京都府立医科大学の内藤裕二教授・森永乳業研究本部基礎研究所の清水金忠所長 脳腸相関編

2021.11.20

 認知機能の低下が社会問題になっています。高齢者の5人に1人が認知症になると言われるなかで注目されているのが、脳と腸が互いに影響しあう「脳腸相関」です。消化器内科医として長く臨床に携わり、その中で得られた豊富な知見をもとに腸内細菌の研究に精力的に取り組んでいる京都府立医科大学教授の内藤裕二さんと、森永乳業研究本部基礎研究所長としてビフィズス菌研究の指揮をとる清水金忠さんに、科学的に明らかになってきた脳と腸の関係について伺いました。

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森永企画 内藤先生+清水所長ツーショット①

脳、腸、腸内細菌のトライアングル

 ―「脳腸相関」という言葉がよく知られるようになってきました。なぜ注目されているのでしょうか。

内藤 脳腸相関は、医学の世界では古くからある概念です。消化器内科で診療をしていると、おなかの調子が悪い人は精神的にも不調を感じている傾向があり、そういう人は、おなかの症状だけを治そうとしても良くならないのです。一方おなかの症状がおさまると、精神的な症状も一緒によくなるんですね。今のように腸内細菌の研究が進むまでは、脳と腸は神経でつながっているのだろうと考えられていました。

 2000年ごろに腸内細菌の解析技術が進歩したことで、脳と腸、さらに腸内細菌というトライアングルの関係があることがわかってきたのです。

清水 腸内細菌を介して腸から脳にシグナルを出しているということが分かってきて、脳腸相関の研究が盛んに行われるようになりました。パーキンソン病の人や自閉症の子どもには便秘が多く、こうした病気の発症にも腸内細菌の影響が指摘されています。私たちの研究でも新たな可能性が見つかってきています。

森永企画 内藤先生孤影①

ビフィズス菌 認知機能維持に作用

 ―腸内細菌は脳腸相関にどのように関わっているのでしょうか?

内藤 腸内細菌が脳にどのように影響を及ぼすかについては、さまざまな角度から研究が行われています。腸管には、栄養や水分を吸収する上皮細胞のほかに、ホルモンを分泌する内分泌系の細胞、免疫の働きを担う免疫細胞、情報を伝達する神経細胞など多様な細胞が集まっています。特定の腸内細菌が受容体を介して、こうした細胞の機能を変えていくことが明らかになりつつあり、脳を含めた全身に影響を及ぼしていると考えられます。

 例えば、うつ病の人は神経伝達物質の一つであるセロトニンの分泌が少ないといわれますが、腸内細菌はセロトニンの材料であるトリプトファンの代謝と関わることも明らかになってきています。

清水 さらに迷走神経を介した関わりも指摘されています。脳と腸は迷走神経を介して情報交換をしていますが、腸内細菌が「迷走神経」を刺激し、脳に送られる情報に影響を与えていると考えられていますね。

森永企画 清水所長孤影①

内藤 迷走神経を介した関わりということでは、例えばパーキンソン病は脳の神経細胞の中に「リン酸化αシヌクレイン」という異常タンパク質が蓄積することが原因の一つと言われていますが、実は「リン酸化αシヌクレイン」は腸でつくられ、迷走神経を介して脳に伝わるのではないかということも指摘されています。パーキンソン病が腸とも関係があるなんて、かつては夢にも思わなかったことです。

清水 森永乳業でも10年ほど前から脳腸相関に着目し、研究を進めています。特に高齢者の認知機能低下が大きな社会問題になる中、食品メーカーだからこそ貢献できることは何かと考えました。そこでビフィズス菌の認知機能への作用の可能性について研究を行ってきた結果、特定のビフィズス菌に認知機能を維持する作用があることが認められたのです。

 ◇次回は、認知機能に影響を与えるビフィズス菌についてのお話です。

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(企画・製作:朝日新聞Reライフプロジェクト)

  • 内藤裕二②
  • 内藤 裕二(ないとう・ゆうじ)

    京都府立医科大学教授(生体免疫栄養学)

    米国ルイジアナ州立大学医学部客員教授,京都府立医科大学准教授などを経て2021年から現職。日本酸化ストレス学会理事長。専門は消化器病学、消化器内視鏡学、抗加齢学、腸内細菌叢。

  • 清水金忠②
  • 清水 金忠(しみず・かねただ)

    森永乳業研究本部基礎研究所所長

    理化学研究所などで研究職に従事した後、1995年に森永乳業入社。栄養科学研究所、食品総合研究所、食品基盤研究所を経て2015年より現職。農学博士。

  • この連載について / 腸戦者に訊く

    ビフィズス菌は1500万年にわたって人類と共存してきました。ヒト由来のビフィズス菌に50年以上にわたって向き合い、研究の成果を人々の暮らしに役立ててきた森永乳業の研究者たちに挑戦の軌跡を訊(き)きました。

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