<連載> 今すぐできる終活講座

それはまさに人生の「棚卸し」作業 すらすら書けなくてもあせらないで

エンディングノートで書くべきポイント(前編)

2021.11.12

 「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど、何からやればよいか迷っているという人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために、遺贈寄附推進機構代表取締役の齋藤弘道さんが今すぐ役立つ終活の基礎知識やヒントを紹介します。今月は、書き方がわからなくて困っている人が意外と多い「エンディングノート」について前後編でお届けします。

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エンディングノート)鍵を手渡ししているところ
エンディングノートには何を書き残すべき?

エンディングノートを買ってはみたものの……

 終活を始めようと考えたときに、思い浮かぶテーマは「片付け」に続いて「エンディングノート」が多いと思います。これからエンディングノートを書こうと考えている方に向けて、どのように書き進めていけばよいのかを考えていきます。

 書店に行くと様々なエンディングノートが売られています。また、最近はオンラインで書けるデジタルエンディングノートも増えてきています。目にされた方も多いのではないでしょうか。アンケートによれば、エンディングノートの認知度は約90%あるのですが、実際に書き残している人は親族の相続を経験した人でも15%程度しかいません。

エンディングノート前編)認知度と準備割合
参考:三菱UFJ信託銀行「現代日本人の相続観~相続に関する意識調査より~」(齋藤弘道さん作成)

 エンディングノートを準備していない理由は「書くきっかけがない」「希望が変化していそう」「書くタイミングがわからない」「書くのが面倒」「書き方がわからない」がトップ5なのだそうです。エンディングノートは結構売れているようですので、買ってはみたものの、そのまま放置されている方が多いのではないでしょうか。

 実際に書く手順は、①書くべき内容(財産や連絡先など)の資料を揃える②自分の考え(終末医療や葬儀、墓など)をまとめる③手を動かして書く、になります。エンディングノートに書くべき項目は多く、「人生の棚卸し」とも言える一大イベントです。気楽にスラスラ書けるものでもなく、「いったん置いておこう」となりそうです。

エンディングノートに書く項目

 では、市販のエンディングノートに記載されている項目には、どのようなものがあるのか見てみましょう。

① 自分に関する基本情報

 氏名、生年月日、住所、本籍、電話番号、メールアドレス、身体情報(血液型、持病、アレルギー、手術歴、薬、かかりつけ医)、家系図、連絡先リスト、慶弔記録、所属団体など

② これまでの人生

 自分の歴史・思い出、趣味・好きなもの、学歴・職歴、資格など

 これからの人生

 やりたいこと、やり残したこと、未来のデザイン、生きがいなど

④ もしものとき

 こうして欲しい希望(介護や看病、財産管理や後見、終末医療や延命治療、臓器提供や検体、葬儀・納骨・墓、供養や法要など)、死後事務委任、大切な人へのメッセージなど

 ⑤ 財産・相続

 不動産、預貯金、有価証券、貸金庫、口座引き落とし、クレジットカード払い、電子マネー、ポイントカード、大切な動産(美術品・楽器・自動車など)、トランクルーム、貸付金、借入金・保証債務、保険、年金、デジタル資産(携帯電話・パソコン・プロバイダ・SNS・ブログ・ホームページ・アプリなど)、遺言書(所在・遺言執行者)、形見分けなど

 項目を並べただけで、これだけありますから、書くのは大変です。もちろん全部書ければ良いのですが、最初から全部書こうとは考えずに「必要な部分から少しずつ書く」もしくは「必要な部分しか書かない」でも良いのです。では、その「必要な部分」や「ここだけは書いておきたいこと」とはどの項目なのでしょうか。

残された家族が書き残してほしいこと

 エンディングノートを書いている人はまだ少数派ですので、本人に何かが起こったときに、家族や親族などはエンディングノートがなくても何とか対応しています。そういう意味では、エンディングノートは絶対的に必要なものではありません。ただ、エンディングノートがあれば家族が助かる場面があるのも事実です。

 その場面について、(A)意思能力がなくなったとき、(B)死亡したとき、に分けて考えてみましょう。

(A)意思能力がなくなった(または減退した)とき

  • ① 任意後見契約をしているのか、契約書はどこにあるのか
  • ② 家族信託の契約をしているのか、契約書はどこにあるのか
  • ③ 代理人が預金を引き出せるか(代理人サービス・代理出金機能など)
  • ④ どんな財産があるのか
  • ⑤ 身体情報(かかりつけ医・持病・薬など)
  • ⑥ 本人の希望(介護や看病・終末医療や延命治療など)
  • このうち①〜④については「終活ファイル」に契約書やカードのコピーを入れておけば、エンディングノートに書き出さなくて良いので便利です。

(B)死亡したとき

  • ① 死後事務委任契約をしているのか、契約書はどこにあるのか
  • ② 遺言書を書いているのか、どこに保管しているのか
  • ③ 信託契約(家族信託・遺言代用信託など)の契約をしているのか
  • ④ どんな財産があるのか
  • ⑤ 本人の希望(葬儀・納骨・墓、供養や法要など)
  • ⑥ 連絡先リスト
  • こちらも①〜④については「終活ファイル」を活用すると楽です。

 こうした情報があると、残された家族や親族などが何かの手続きや決定をする際に助かります。「終活ファイル」を利用すれば、エンディングノートに書く項目は「身体情報」「本人の希望」「連絡先リスト」だけですので、比較的手軽に書けるのではないでしょうか。

 ここまでは標準的なエンディングノートについて考えてきましたが、家族構成などの背景や事情によりエンディングノートに書いておきたいことは異なります。後編では、ケース別の書くべき内容や、「思いを残す」というエンディングノートの活用法について考えていきます。

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  • 齋藤弘道
  • 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

    遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

    信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

  • この連載について / 今すぐできる終活講座

    「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど何からやれば良いか迷っている…。そんなあなたのために専門家が今すぐ役立つ「終活」の基礎知識やヒントをご紹介します。

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