<連載> 今すぐできる終活講座

そっとしたためて伝えよう 契約書では書けない大切な人への思い

エンディングノートで書くべきポイント(後編)

2021.11.26

 「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど、何からやればよいか迷っているという人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために、遺贈寄附推進機構代表取締役の齋藤弘道さんが今すぐ役立つ終活の基礎知識やヒントを紹介します。「エンディングノート」について、前編では「書く項目」や「残された家族が書き残してほしいこと」についてお届けしました。今回は「思いを残す」というもう一つの大事な活用法を考えます。

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大切な人にメッセージを残すことも、エンディングノートの大事な機能です

なぜエンディングノートを書くのか?

 エンディングノートを書店で買うとき、何か目的があって手に取るのだと思います。その目的は人それぞれですが、次のようなパターンに分類されそうです。

A.残された人が手続きで困らないため

B.大切な人に思いを残すため

C.自分の過去や将来のため

 Aは前編でお伝えしたように「意思能力がなくなったとき」と「死亡したとき」を想定して、自分の希望を諸手続きに反映してもらう目的で書きます。

 BはAと重なる部分もありますが、自分のことよりも残された人のことを考えて書くケースが多いように思います。具体例は後半でご紹介します。

 Cはエンディングノートによって特徴が現れるところです。「年代ごとの自分の歴史」「思い出の場所」「楽しかったこと」「好きな人・本・歌・映画」「もっとも誇れること」などの過去を振り返る項目や、「やりたいことリスト」「未来デザインシート」など将来に向かう項目があり、どちらに重点をおくかによってエンディングノートの構成も異なっています。Cは実務的な面より「書き出すことで気持ちを整理する」「人生を振り返って自己肯定感を高める」など、心情的な面に焦点を当てているように思います。

 余談ですが、「死ぬまでにやりたいことリスト」と言えば、「最高の人生の見つけ方」という映画を思い出します。2007年のハリウッド映画を原案にした、吉永小百合さんと天海祐希さん共演による日本版が2019年に公開され、話題になりました。余命わずかな二人がであい、やり残した夢を一つずつかなえる旅に出ます。映画のようにリストに書かれたことを次々に実現することは難しいのですが、日常の日々を大切に過ごしていきたいものだと思っています。

    ケース別「思いの残し方」

     エンディングノートに書く内容は、人によって異なるのですが、書店で販売されるエンディングノートは広く使われることを想定して制作されるので、どうしても最大公約数的な内容になります。私もかつて信託銀行でエンディングノートの制作に関わりましたので、無難な内容になってしまう事情はわかります。仕方ないことではありますが、本当は書き手の背景や状況に即した内容であれば、書きやすいのだろうと思います。そのようなケースをご紹介します。

    〈子どもに障害があるケース〉

     障害には知的障害・精神障害・身体障害などがありますが、特にコミュニケーションや法的な手続きが困難な場合に子どもの将来を考える必要があり、「親亡きあと問題」などと呼ばれています。さまざまな福祉サービスの利用で対策することが多いのですが、契約書等には書けない細かいことをエンディングノートに書きとめておくと、子どもが支援を受ける際に役立ちます。

     そのようなときに、日本相続知財センターの「親心の記録」が役立ちます。例えば、次のような項目が書けるようになっています。

    ・リスクの高い医療情報(パニック、てんかんなど)

    ・一週間の生活スタイル(平日・休日別の時間割や薬の服用など)

    ・コミュニケーションや社会性(伝える方法、配慮してほしいことなど)

    ・親として支援する方に伝えたいこと

     同センターのホームページからダウンロードできますので、関係者の方は入手されることをおすすめします。

    〈ペットが心配なケース〉

     単身高齢者の増加とともに、ペットを飼う人が増えています。これに伴い、飼い主が入院したり、死亡したりしたときに、ペットが置き去りにされる問題も発生しています。ペットのことを意識したエンディングノートは少ないのですが、次のような事項を記載すると良いでしょう。

     「いざという時の引き取り手」「ペットの名前」「種類」「生年月日」「登録番号」「性格」「持病」「かかりつけ医」「予防接種」「避妊・去勢」「食べ物」「散歩」「ペット保険」「好きなこと・苦手なこと」など。

     ペットを任せられる家族がいない場合は、事前に頼れる知人などに依頼しておき、ペットの飼育を負担事項(条件)として財産を遺贈する「負担付遺贈」の遺言を作成するのも良いでしょう。

    大切な人へのメッセージ

     これらのケースのように、エンディングノートには「思いを伝える」機能があります。遺言書の付言事項(法的効力はないが自由に記載できる欄)に書く方法もありますが、もっと気楽に書くことができます。面と向かって伝えるのが恥ずかしいことでも、エンディングノートにそっとしたためておくことはできそうです。

     人はいつ死ぬかわかりません。もしかしたら、大切な人に「ありがとう」の一言さえ伝えられないかもしれません。エンディングノートに大切な人へのメッセージを書いておくだけで、少しは安心できるのではないでしょうか。

     最近では、紙のノート形式ではなく、オンラインで入力できる「デジタルエンディングノート」のサービスも増えてきました。例えば、三井住友銀行では口座を持つ顧客の情報を預かる「SMBCデジタルセーフティボックス」のサービスを今秋、始めました。2022年2月に有料化(月額990円)で本格リリースし、動画や音声のメッセージも残せるようです。自分に合った形のエンディングノートを準備して、心残りのない人生を送りたいものです。

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    • 齋藤弘道
    • 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

      遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

      信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

    • この連載について / 今すぐできる終活講座

      「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど何からやれば良いか迷っている…。そんなあなたのために専門家が今すぐ役立つ「終活」の基礎知識やヒントをご紹介します。

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