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<連載> 介護を語る

人と人、地域・制度を結びつけ「その人らしく生きる」支えに

「もみじの家」ハウスマネージャー・内多勝康さんインタビュー(下)

2021.12.17

 元NHKアナウンサーの内多勝康さんがハウスマネージャーを務める「もみじの家」では、医療と介護、保育の分野の専門スタッフが手を携えて「医療的ケア児」とその家族の短期入所とケアに取り組み、ボランティアの人たちもまた、欠かせない役割を担っています。人と人、人と地域や制度を結び、一人ひとりがその人らしく生きていく。そのための仕組みづくりに取り組み、各地に広げていきたいと内多さんは語ります。

 【元NHKアナウンサーはなぜ52歳で医療福祉の現場に転職したのか】内多勝康さんインタビュー(上)はこちら

内多勝康さん4
もみじの家の説明をする内多勝康さん=2021年10月、東京都世田谷区

つかの間の休息 プロとボランティアで支援

 介護をする家族が一時的に介護から離れ、休息やリフレッシュをしてもらう。そのためのサポートは「レスパイトケア(レスパイトは休息、小休止の意味)」と呼ばれ、高齢者の介護なら、デイサービスやショートステイなどが該当します。在宅での日々の介護で身体的、精神的な疲労がたまり、介護者が身体を壊してしまわないようにするための、重要なケアとなります。

 もみじの家では、看護師や介護福祉士、保育士など、それぞれの資格をもった専門スタッフが、医療と福祉の双方からケアをします。人工呼吸器の管理やたんの吸引など、医療的ケアが必要な子どもたちを預かる医療型短期入所施設として、24時間の医療的ケアはもちろん、食事や排せつ、入浴などの生活介助、子どもの発達を促す遊びや学びにも取り組んでいます。子どもたちがくつろいで楽しそうにすごす姿をみて、お母さんをはじめ家族は、ケアの重圧から解放され、つかの間の休息をとることができます。

 こうしたケアを手厚いものにしてくれるのが、ボランティアの方々です。もみじの家では、約100人が登録くださっています。子どもたちへの読み聞かせをお願いしたり、受付の対応や部屋やおもちゃの整理をしてもらったり。この1年半は新型コロナウイルスの感染予防のため、難しかったのですが、ぼくらのような常勤の職員だけでなく、いろいろな形のボランティアが欠かせない存在です。

 もみじの家を利用する親御さんは、大きな荷物を抱えてやってきます。人工呼吸器などの医療機器をすべて持ってくる必要があるためです。受付のボランティアは、その荷物を運んだり、子どもの車いすの車輪を消毒したりする。掃除が得意な方もいます。全体の清掃は、業者がしてくれますが、契約外で手が入らないところも、すっかりきれいに、ぴかぴかにしてくださいます。

 もちろんプロの仕事は大事ですが、とくに子どもを取り巻く世界は、家族とプロフェッショナルだけでいいわけではない。普通に外出できれば、地域の人との出会いがあるのに、医療的ケア児には外出の機会がもてない子たちが少なくありません。もみじの家は、いろいろな人、おじさんやおばさんと出会える場にもなっています。

もみじの家と内多勝康さん
もみじの家のハウスマネージャーとして6年目、「支援の輪を広げていきたい」と内多勝康さんはいう=東京都世田谷区(本人提供)

よりよい社会の「アクション」をする現場

 人と人、人と仕組みをどう結びつけ、よりよい形をつくっていくか。ハウスマネージャーとして内多さんが心がけるのは、社会福祉士の資格をとる際に学んだ二つのキーワード「ソーシャルネットワーク」と「ソーシャルアクション」。関係する人や地域や制度をネットワークとしてつなぎ、よりよい仕組みを生み出すアクションをしていこうという考え方です。

 たとえば社会福祉士なら、福祉や介護で困っている人の相談をうけたとき、この人はこの制度と結びつければサービスを受けられるといった橋渡し的な役割がひとつ。もしも結びつけようと思っても、適当な制度や仕組みがない場合はどうするか。自ら社会や行政などに働きかけて、よりよい制度や新しい仕組みをつくっていきましょうと教わるのです。

 もみじの家は、こうしたソーシャルアクションの現場だと思います。「″その人らしく生きる”を支える」。これがもみじの家の理念です。重い病気をもつ子どもと家族ひとり一人がその人らしく生きる社会をつくる。そのために、新しいケアや支援の仕組みをつくりだし、社会の理解を深め、全国に広めていくことをミッション(目標、使命)として掲げています。

 自宅でのケアを「ゴールのみえないマラソン」というお父さんは、もみじの家を「第二の我が家」といいます。「家では見せない表情がみられた」というお母さんもいます。「ゆったりとお茶を飲むのは本当に久しぶりです」というお話も聞きました。よりよい運営をするために利用者に回答してもらうアンケートには、ぼくもすべて目を通します。そこにはケア児と家族の日常が刻まれています。

コロナ禍、全国の家族・支援者をネットで結ぶ

 新型コロナの影響で、受け入れの中断や利用者の絞りこみを余儀なくされるなか、内多さんたちは、医療的ケア児を受け入れる各地の施設や利用家族とのオンラインでの交流に力をいれてきました。

 いま集中的に取り組んでいるのが都道府県ごとに医療的ケア児者の家族会のようなグループを作りませんかという呼びかけです。当事者家族や医療的ケア児者の支援者たちと連携して、これまでに46都道府県とオンラインでのミーティングを開いたところです。それぞれの声を集めて伝え、一緒に考えていくことで、少しずつ社会や支援の形を変えていけるんじゃないかと思っています。

 すごく手応えがあって、ぼくとしては、医療と福祉を融合させた短期入所、第二、第三のもみじの家ができるのが理想です。運営費の多くを寄付にたよっている現状を考えると、そう簡単にはいかないでしょうが、わずかな時間でも子どもを預ける通所施設ができるとか、保育園や学校に親の付き添いなく、たとえば人工呼吸器の子が通えるとか、そういうことが一つひとつ進んでいくと、いいなあと思っています。

内多勝康さん3

思いや声を届けることで、人の心は動く

 こうした活動の追い風となっているのは、2021年9月に施行された医療的ケア児支援法だといいます。「医療的ケア児」という名前を冠した初めての法律で、超党派の議員立法として6月に可決・成立し、医療的ケア児とその家族の支援が国と地方自治体の責務と定められました。 

 医療的ケア児の健やかな成長を図ることはもちろんですが、新法の目的には、家族の「離職の防止」も盛り込まれています。子どもを預けることができないから、お母さんが仕事を辞めざるを得なくなる。どんどん社会から孤立する。そうした事態を防ぐにはどうしたらいいか、どこで暮らしていても子どもを安心して預けられる場をどうつくっていくか。具体策を社会全体で考えていこうというのです。

 こうした議論を深めていくためにも、現場の情報なり、ご家族の思い、子どもたちの声が、もっと世間に広がっていって欲しいなと思います。ハウスマネージャーで広報担当でもある立場としては、支えあいを作りましょうという風にいうのではなく、自分自身がどういうアクションを起こすか、それがどう情報として流れていくかが問われています。

 各地に家族会をつくるという取り組みのあとには、どういう形でみなさんと一緒に行動していくか、考えなければいけません。それぞれの家族会が行政とともによりよい地域社会をつくっていくお手伝いをして、理念を形にするアクションにしていきたいと思います。

 福祉や介護の現場には、伝えたい、伝わってほしい情報が本当にいっぱいあります。その情報量と実際に伝わる情報量のギャップをどうやったら埋めていけるか。ぼくたち現場の人間は、地道に情報発信を積み重ねていくしかないかもしれません。でも幸いなことに、記事や映像をみた方が寄付をしてくださるという流れは確実にあるんです。情報を伝え続けることで、人の心は動いているし、アクションにつながっていることは間違いないと思っています。

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本プロジェクトは令和3年度介護のしごと魅力発信等事業(ターゲット別魅力発信事業)として実施しています。(実施主体:朝日新聞社・厚生労働省補助事業)

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  • 内多 勝康
  • 内多 勝康(うちだ・かつやす)

    「もみじの家」ハウスマネージャー

    1963年、東京都生まれ。東京大学教育学部卒。86年、NHKにアナウンサーとして入局。「首都圏ニュース845」や「生活ほっとモーニング」のキャスターなどを務めた。2016年3月に退職し、国立成育医療研究センターを母体とする「もみじの家」ハウスマネージャーに就任。著書に『「医療的ケア」の必要な子どもたち─第二の人生を歩む元NHKアナウンサーの奮闘記』(ミネルヴァ書房)。

  • この連載について / 介護を語る

    Reライフ世代にとって「介護」は他人事ではありません。親のこと、自分のこと、そして社会のあり方として、これからの介護をどうしていけばいいか。識者の方々に自らの経験やあるべき形を伺いました。

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