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<連載> ひとことブックレビュー

珠玉の言葉に心情のはざまでふと遭遇し、不思議と受け入れられている気持ちになる

「どこからか言葉が」を読んで/連載・ひとことブックレビュー

2022.01.13

 読者会議メンバーからブックレビューを募る企画に、「どこからか言葉が」を読んだ感想が届きました。みなさんの感想もとても詩的です。

  • どこからか言葉が
  • 谷川俊太郎(著)
    出版社:朝日新聞出版

     路地裏に迷い込む感覚、ふと思い描かれる天使の姿、机に在る「物」……。日々の生活から浮かび上がってくる、豊かなことばたち。2016年9月より朝日新聞夕刊(東京本社版)で始まり、現在も毎月連載中の「どこからか言葉が」。こちらの詩52編を編んだ、90歳の国民的詩人による詩集です。大人気の装丁家・名久井直子氏による美しいのに親しみやすい、手になじむ装丁にもご注目ください。

言葉の泉と尽きることのない想いを、伝え続けてください

思えば
言葉の海にたゆとう時
言葉の沼に沈みそうになる時
言葉の風を追いかけ
言葉の炎に焼かれまいと

思い起こせば、何かの折に谷川俊太郎先生の詩に会うのです。
先生の詩の多さに起するのはもちろんですが、心情のはざまでふと遭遇するような気がします。

珠玉の言葉が並ぶ。
救われ、あやされ、試され、認められたような気持ちになる。
幼い頃は自分の心との協調を。今、年を重ねてもなお未熟な心持ちの我が自我を。
ずっと不思議と受け入れられているような気持ちになるのは、先生の柔らかな度量のなせるものでしょうか。

苦しんで選び抜かれて得た言葉。
あるいは、降ってきたり浮かんできたり。
どこからか言葉がやってきて。それらが誰かを傷つけることなく、咀嚼(そしゃく)されていくことの大いなる力。
枯れることのない言葉の泉と、尽きることのない想(おも)いを、この先も伝えて下さるのを楽しみにしています。
(愛知県 山口典子さん 60代)

五十数年前理解できなかった 今は読み進むと想念が湧いてきて楽しい

 この詩集のプレリュード「私事(わたくしごと)」。静寂な感性から生まれくる詩。樹のように豊かに休んでいる中から生まれくるのだろうか、“どこからか言葉が”。
 「小さな花」。花の美が形容されていないお陰で、字面に支配されることなく、私は老妻が付き添ってくれている散歩の情景を思い浮かべている。自然豊かで、処々にかれんな花々、更には妻の思いやりのある気遣いまでも。
 「はらっぱ」。何でもない日常生活。突然の戦。無力な子らも犠牲に。その繰り返しが人類の歴史。悲しみは癒えない。戦争に限らず、震災もしかり。世の常のつらい出来事。
 五十有余年前、現代国語の授業で、「二十億光年の~」という谷川俊太郎の詩の一部が取り上げられた。教師は天才的詩人の作だ、とほめた。私には、韻も律も無い、叫びも詠嘆も無いように思え、詩としての内容も理解できなかった。それ以来今日まで、読もうという気にもならなかった。今は読み進むと種々想念が湧いてきて楽しい。
(東京都 森文治さん 70代)

1歳の孫に贈ります いつまでも新鮮な心を育てるために

どきゅん! 驚きの日々
目の前に声に出して伝えたい気持ちがある。
自分の心を突き破って湧き上がる。
快か不快か、その気分をしっかり観察する。
どうしようもなく手足をばたつかせ、空をつかむ。
言葉にならない声をあげると
柔らかい温(ぬく)もりに包まれる。
一番繊細な器官が乳を受け取り、命を灯(とも)し続ける。
生後28日未満を新生児という。
生まれてくる感情をもっと伝わる言葉で声に出したい。
どうすればいいの? 自分の中に入ってくる言葉をしっかり観察する。
伝えたい気持ちにぴったりの言葉を
この頃の人間は探している。

谷川さんの詩集を1歳の孫に贈ります。
たくさんの気持ちをまとった言葉を
声にして聞いてもらいたいから
しっぽを欲しがった息子なら、喜んで声にしてくれるでしょう。
伝わる言葉を育てている孫はきっと
くちびるが求めた乳さながら
谷川さんの生み出した言葉を
のどを鳴らして飲むでしょう。
いつまでも新鮮な心を育てるために
(大阪府 和田数子さん  60代)

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