かつてない勢いで新型コロナウイルスの流行が拡大しています。その原因となっている新たな変異株オミクロン株にはどのような特徴があるのでしょうか。どんな変異がどのくらいの規模で起こって、感染の広がりやすさや潜伏期間にどのような変化をもたらしているのでしょうか。
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【質問一覧】
- (1)オミクロン株、感染の広がりやすさは? 従来株との違いは?
- (2)こんなに速く感染拡大するのはなぜ? どんな変異が起きたから?
- (3)体内での増殖力はどの程度? 他の人に感染させるのは何日後?
- (4)潜伏期間は? 濃厚接触者の待機期間を短縮しても大丈夫なの?
- (5)肺には感染しづらい? 感染しやすい部位はどのあたり?
- (6)感染しやすい部位が、従来株と違っているのは、どうして?
- (7)感染の「広がりやすさ」と感染「しやすさ」、どう違う?
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◆感染の広がりやすさ3倍近く、2日足らずで倍増の傾向
Q1:オミクロン株はどの程度、従来のウイルスよりも感染が広がりやすいのでしょうか? これまでのウイルスと、どのような点が違うのでしょうか?
A:オミクロン株は、登場前に流行していたデルタ株よりも感染の広がりやすさが3倍近く高いとみられています。2日も経たずに感染が倍に増える傾向がみられます。また、感染した時の潜伏期間は、従来よりも短いと考えられています。英国などの報告によると、入院が必要になるほど重症化するリスクはデルタ株よりも低いとされています。
厚生労働省の専門家会議によると、オミクロン株は、デルタ株よりも感染の広がりやすさ(伝播性)が2.8倍高いとみられています。デルタ株は第5波の原因となった変異株ですが、その前に流行していたアルファ株よりも1.5倍ほど感染の広がりやすさが速いとされていました。それよりもさらに感染が広がりやすいウイルスです。
東京都のウイルスの置き換わり速度をみると、いかにオミクロン株の感染が広がりやすいのかがよく分かります。都内でオミクロン株が最初に報告されたのは2021年12月14日の週です。この週は、調べた変異株のうちオミクロン株の占める割合は5.1%でした。それが4週間後の2022年1月4日から始まる週には87.1%に達しました。デルタ株が、その前に流行していたアルファ株に8割以上置き換わるのには13週間ほどかかっていました。南アフリカからの報告でも、デルタ株からオミクロン株への置き換わりが10%から90%に達するのにかかる日数は、アルファ株からデルタ株へと同じように置き換わるのにかかった日数の3.5倍早かったと推定されています。

◆変異は50カ所以上、感染・増殖しやすく変化か
Q2:なぜオミクロン株はこんなに速く感染が拡大するのでしょうか?
A:オミクロン株に起きた変異に関係していることは間違いありませんが、まだ詳しいことはよくわかっていません。オミクロン株は、従来株に比べて50カ所以上に変異が入っています。変異により、ヒトの細胞に感染しやすくなったり、ヒトの細胞の中で増殖しやすくなったりしていると考えられます。また、オミクロン株が感染、増殖しやすい体内の部位が、従来株とは異なり、それが感染の広がりやすさと関係している可能性があります。
50カ所以上に起きた変異のうち32カ所は、ウイルスの表面にある突起状のたんぱく質、「スパイク(S)たんぱく質」の遺伝子に入っています。新型コロナウイルスが感染する際、Sたんぱく質がまずヒトの細胞に結合します。具体的には、ヒトの細胞の表面にある「ACE2受容体」と呼ばれるたんぱく質に、Sたんぱく質の「RBD(受容体結合領域)」と呼ばれる部分が結合します。オミクロン株の、Sたんぱく質に入った32カ所の変異のうち15カ所は、このRBDに入っています。このため、ACE2受容体との結合力が増し、より感染しやすくなっている可能性があります。

Q3:オミクロン株の方が、ヒトの体内で早く増殖するのでしょうか?
A:その可能性が高いことを示すデータが蓄積してきています。どの部位に入った変異と関係しているのかはまだよくわかっていません。
感染が倍増する期間が短くなっています。国立感染症研究所によると、厚労省がとりまとめている感染者情報を基に推計し、感染が倍増する倍加時間を1月13日までの2週間と、その日までの1週間で比較すると、東京都では2.7日から1.9日、大阪府では2.6日から1.7日、沖縄県では1.9日から1.3日と、いずれも短くなっていました。
厚労省の専門家会議に提出された資料によると、感染した人が別の人に感染させるまでの「世代時間」が、デルタ株は4.6日と推計されているのに対し、オミクロン株は2.1日に短くなっていると推計されています。

◆潜伏期間3日足らず、のど・鼻など上気道に感染しやすく
Q4:政府は、感染者の濃厚接触者の待機期間を14日間から10日間に短縮しました。それと、体内での増殖のしやすさとは関係しているのでしょうか?
A:濃厚接触者の待機期間が短縮されたのは、潜伏期間、つまり感染してから症状が出るまでの期間が、オミクロン株は従来株よりも短いことがわかってきたからです。潜伏期間が短いのは、体内でそれだけウイルスが速く増えることが一因だと考えられます。
感染研が国内の感染者を分析したところ、第4波まで流行していたアルファ株の潜伏期間の中央値が3.4日だったのに対し、オミクロン株の潜伏期間の中央値は2.9日と短くなっていました。また、感染から3日目までに症状が出る人は、アルファ株では42.42%だったのに対し、オミクロン株では53.05%でした。10日目までに症状が出る人は、アルファ株では97.35%だったのが、オミクロン株では99.18%でした。

Q5:オミクロン株が感染しやすい部位があるのでしょうか?
A:動物実験や細胞実験では、肺の細胞よりも、のどや鼻といった「上気道」の細胞に感染しやすく、そこで増えやすいと指摘されています。
米ハーバード大学などの研究チームや、英インペリアル・カレッジ・ロンドンなどの研究チームなどによる、ハムスターを使った動物実験やヒトの細胞を使った実験で、オミクロン株は肺よりも、鼻腔などの上気道の細胞に感染しやすかったり、増殖しやすかったりするという結果が発表されています。ただし、いずれも第三者の専門家の評価が終わる前の論文での発表です。

鼻腔やのどといった上気道でウイルスが増殖すると、呼吸をしたり、おしゃべりをしたり、咳やくしゃみをしたりした際に、生きたウイルスを含む飛沫やエアロゾルが外に出やすいので、それが感染の広がりやすさに関係しているのかもしれません。
Q6:オミクロン株はなぜ、上気道で感染、増殖しやすいのですか?
A:まだ詳細なメカニズムはわかっていません。細胞実験などでは、感染する際に働くヒトの酵素と反応する、オミクロン株のSたんぱく質の遺伝子に入っている変異が関係しているのではないかと指摘されています。
これまでの新型コロナウイルスの変異株は、ヒトの細胞にある酵素「TMPRSS2」により、Sたんぱく質が切断され、開裂することで、ヒトの細胞に感染しやすくなっていました。ところが、英ケンブリッジ大学や宮崎大学などの研究チームなどによる細胞実験で、オミクロン株のSたんぱく質はTMPRSS2と結合しにくく、開裂しにくいとわかりました。オミクロン株は、従来株とは異なり、この酵素とは関係ない経路でヒトの細胞に感染している可能性があります。TMPRSS2は、肺の細胞には多く存在しますが、上気道の細胞にはあまり存在しません。このため、従来株は肺の細胞にはよく感染し、増殖していたのに対し、オミクロン株では逆に上気道によく感染し、増えているのかもしれません。
Q7:感染の広がりやすさと感染しやすさは同じですか?
A:厳密には違います。感染の広がりやすさは「伝播性」で、これはウイルスがヒトの細胞に感染しやすいか、ヒトの体内で増えやすいかといった要素に影響を受けるだけでなく、流行地域の人々がそのウイルスに対する免疫を持っているかどうかにも左右されます。一方、ウイルスの感染しやすさ、つまり「感染性」は、少ない量のウイルスに暴露されただけで感染が起こるかどうかを表わしています。これは、ウイルスの増殖の速さや、感染した個人の免疫力がどれぐらいあるか、といった要因でも変化します。
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新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回(中)では、オミクロン株の病原性や重症化の状況などについて紹介します。
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