<連載> ワクチン接種Q&A

オミクロン株の病原性、重症化リスク、どう考える? 高齢者の場合は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(14)新型コロナ・オミクロン株の特徴とは<中>

2022.01.28

 かつてない勢いで急拡大する新型コロナウイルスのオミクロン株。感染の広がりやすさの一方で、重症化はしにくいとされています。そもそも病原性はどの程度なのか。高齢者の重症化リスクはどう考えたらいいか。専門家は「これまでの新型コロナウイルス感染症とは異なる感染症と考えるべき」としています。

 【感染力、感染速度、潜伏期間、変異との関係は/オミクロン株の特徴(上)】はこちら
 【感染時の症状、どう違う? 自宅待機時の注意点は/オミクロン株の特徴(下)】はこちら

体調を気にするシニア

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◆重症化のリスク、英国ではデルタ株の3分の1

Q1:オミクロン株は感染しても重症化しにくいというのは本当ですか?

A:英国などからの報告によると、入院が必要になるほど重症化するリスクは、デルタ株に比べて低いとされています。
 ただ、高齢者や持病のある人など、一定の割合で重症化リスクの高い人がいます。オミクロン株は感染拡大の速度が速いため、感染爆発が起きて感染者が増えれば、重症患者の絶対数は増える恐れがあります。

 英健康安全保障庁が2021年末に出した報告書によると、英ケンブリッジ大学と共同で、11月22日~12月26日の期間にオミクロン株に感染した52万8176人とデルタ株に感染した57万3012人を比較したところ、病院を受診するリスクはオミクロン株への感染ではデルタ株の約半分で、デルタ株のリスクを1とすると0・53でした。入院が必要になるほど重症化するリスクは、デルタ株の3分の1で0・33でした。

 一方で、オミクロン株の感染の広がりやすさ(伝播性)は、デルタ株の3倍近いといわれています(詳しくは、オミクロン株の特徴とは<上>を参照ください)。このため重症者率が低くても、感染者数が膨大になれば、重症患者の絶対数が急増する可能性もあり、社会全体としての重症化のリスクが低いとは一概にはいえなくなります。

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Q2:なぜオミクロン株は重症化しにくいのですか?

A:いくつかの可能性があります。ワクチン接種や感染により、新型コロナウイルスに対して免疫を持っている人の割合が増えてきているからかもしれません。これまでのところ、オミクロン株に感染するのは、もともと重症化しにくい若い世代が多いので、そのために重症化する人が少ない可能性もあります。ウイルス自体の重症化を起こしやすさ、「病原性」が低下している可能性もあります。

 ワクチンについては改めて詳しく紹介する予定ですが、既存のワクチンは、オミクロン株に対し、感染や発症を防ぐ効果が低下しています。しかし、重症化や死亡を防ぐ効果は一定程度、維持されていると考えられています。このため、ワクチン接種が進んできた国では、感染しても重症化する人が減っている可能性があります。

オミクロン株症例の基本特性

 欧米や南アフリカ、日本でも、オミクロン株への感染者が多いのは30歳以下の若い人たちです。国立感染症研究所が厚労省のまとめているデータを分析したところ、1月17日時点でオミクロン株への感染が確認された約2,000人のうち約68%が30代以下でした(上表参照)。

 デルタ株による第5波に比べて、こうした若年層が感染する割合がオミクロン株では増えている、という指摘もあります。大阪府によると、30代以下の感染者の割合は、第5波では約65%だったのが、オミクロン株による今回の第6波では約71%になっています(1月18日現在、下図参照)。

新規陽性者の年代構成

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◆高齢者の重症化リスクはどの程度なのか

Q3:オミクロン株の場合、高齢者も重症化しにくいのですか?

A:高齢者の重症化率は、今のところ従来株よりは低くなっています。
 しかし、オミクロン株でも、やはり若い年代に比べると重症化リスクが高い点は、従来のウイルス株と同じです。重症患者の人数が増加する「波」は、新規感染者が増加する「波」と2~3週間の時間差があります。また、今はまだ新規感染者の多くが60歳未満ですが、今後、60歳以上に感染が広がると、さらに重症化する人が増えるおそれがあります。

年代別入院患者割合

 厚生労働省の専門家会議に提出された資料によると、大阪府では、2022年1月3日~16日の新規感染者のうち、7割が60歳未満ですが、入院患者をみると、1月5日~17日の入院患者の6割は60歳以上です(上図参照)。

 オミクロン株の占める割合が急激に増えてきた1月第1週~第2週にかけ、厚労省のとりまとめている感染者登録システムに届け出があった時点で肺炎や、肺炎よりももっと重い症状のあった人の割合は、60歳未満は1%未満ですが、60~79歳は1.51%、80歳以上になると4.66%になります(下図参照)。

年第別重篤症例割合

 大阪府によると、第5波に比べて第6波では、高齢者施設におけるクラスターが増えています。今後、高齢者の感染が増えると、重症化する人がさらに増えるおそれがあります(下図参照)。

クラスターの状況

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◆病原性そのものは低下、モルモットなどで確認

Q4:そもそもオミクロン株の病原性は、どう変化しているのですか?

A:動物実験では、オミクロン株は、ウイルスの病原性そのものが低くなっているという結果が複数、発表されています。

 東京大学医科学研究所や米ワシントン大学などが参加する米国立アレルギー・感染症研究所を中心にした研究グループは、新型コロナウイルスに感染し、ヒトと似た反応を起こすハムスターにオミクロン株とデルタ株など他の変異株を感染させて比較しました。

 デルタ株などの従来株に感染すると、ハムスターは感染後1週間で体重が10~15%減少します。しかし、オミクロン株の場合、体重に変化はありませんでした。ウイルス量を増やして感染させても体重は減りませんでした。

 感染後3日目に、鼻腔と肺で、感染性を持ったウイルスの濃度を調べたところ、鼻腔内のウイルス濃度はデルタ株もオミクロン株もほぼ同じでした。一方、肺では、オミクロン株の濃度は、デルタ株の少なくとも10分の1以下でした。

 ハムスターの肺の働きを調べたところ、デルタ株に感染させると、感染後3日~7日にかけ、息苦しさの原因となるような気道の収縮が増えるのに対し、オミクロン株では感染の前と後で変化はありませんでした。従来株に感染させた場合、感染していないハムスターに比べて呼吸数が減りますが、オミクロン株の場合には変化がありませんでした。

 研究チームは、感染後7日目に、小型動物用の小型CTで肺を撮影し、線維化などの異常が起きていないかどうかも調べました。デルタ株に感染させたハムスター4匹はすべて、ヒトの重症化した新型コロナウイルス感染症でよくみられるような肺炎の症状が起きていましたが、オミクロン株に感染させた4匹は、軽症か中等症の肺炎しか起きていませんでした。

 動物の肺炎症状が重くなるほど数字が大きくなる評価尺度で評価すると、感染していないハムスターは0、デルタ株に感染させたハムスターは約12なのに対し、オミクロン株に感染させたハムスターは約2と、重症度が低いという結果になりました。マウスの実験でも、オミクロン株の病原性が低いことを示す結果が出ました(下図参照)。

オミクロン株とデルタ株の病原性比較

 オミクロン株がヒトに対して病原性が低いかどうかはまだわかりませんが、少なくともハムスターやマウスに対して病原性が低いのは、ウイルスが肺で感染したり、増殖したりしにくいのが一因ではないかと研究チームは考えています。一連の結果は1月21日、英科学誌「ネイチャー」オンライン版で公表されました。

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◆病原性低下でも、感染爆発への警戒は不可避

Q5:もしオミクロン株の病原性がヒトに対しても下がっているとすれば、感染が急拡大しても、重症化の心配はあまりしなくても大丈夫でしょうか。

A:一定の割合で重症化リスクの高い人がいます。感染爆発が起きれば、そういった人たちが感染する可能性も高まり、重症化する人が増える恐れがあります。
 また、感染者が増えれば、医療従事者や社会生活の維持に欠かせない「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人たちが感染する可能性や、濃厚接触者になる可能性も高まります。新型コロナウイルスに限らず、さまざまな怪我や病気で必要な医療が受けられなくなったり、日常生活に支障が生じたりする恐れもあります。ですので、感染爆発が起きないような感染予防対策は必要です。

年代別オミクロン株感染者の推移(沖縄)

 一足早くオミクロン株の感染がはじまった沖縄県では、若者中心だった感染が小児、中高年へと全世代に拡大してきました(上図参照)。また軽症者が多くても、感染者数が膨大になれば、保育園・学校などの休園・休校や職場に通えなくなる人が相次ぎ、社会の機能不全につながることも危惧(ぐ)されています。すでに沖縄などの医療・福祉の現場では、その傾向がみられています(下図参照)。

医師・看護師の休息者数

 厚労省の専門家会議のメンバーらが加わる専門家有志は、「オミクロン株はデルタ株をはじめとしたこれまでの新型コロナウイルス感染症とは、異なる感染症と考えるべきである」と指摘しています。
(1)潜伏期間が約3日、世代時間の中央値が約2日と、デルタ株に比べて感染拡大のスピードが極めて速い(詳細は、オミクロン株の特徴とは<上>を参照ください)
(2)初めに軽症者の数が急激に増え、救急外来など地域医療に負荷が生じ、その後、高齢者に伝播し,重症者数・入院者数が増加し、医療全体が逼迫(ひっぱく)、社会機能の維持も困難になる懸念がある
など、従来と異なる傾向がみられるためです。

 このため専門家有志は(1)医療逼迫や社会機能不全に陥らない程度に感染者数を抑制する(2)医療や介護、教育をはじめとして社会機能への影響を最小化する(3)高齢者などへの医療確保と一般診療を両立することで、死亡者数を最小化する、の3点を目的として効果的な対策を打つよう提言しています。

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 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回(下)は、オミクロン株感染時の症状や感染予防策などについて紹介します。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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