新型コロナウイルスワクチンの効果を回復するための追加(ブースター)接種が始まっています。発症や重症化の予防効果はどの程度? 接種するワクチンはどう選んだらいい? 副作用の強さはワクチンによってどう違う? Q&Aにまとめました。
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【質問一覧】
◆抗体価、2回目接種から半年で10分の1に減少
Q1: なぜ追加のワクチン接種が必要なのですか?
A:新型コロナウイルスのワクチンは、接種完了から数カ月経つと感染や発症を防ぐ効果が落ちてくるからです。加えて、いま流行しているオミクロン株は、デルタ株など他のワクチン株に比べ、ワクチンが効きにくいという特徴があるからです。
日本よりもワクチン接種が先行して進んでいた米国やシンガポール、イスラエルなどでは、2021年夏ごろから、ワクチン接種が完了しているにもかかわらず感染する、ワクチンのブレークスルー(突破)が問題になり始めました(詳しくは連載10回目の「デルタ株まん延で、接種完了後の感染リスク増大」を参照ください)。
当初は、当時、感染が拡大しつつあった、従来株よりも感染の広がりやすい変異株デルタ株に一因があるのではないかと考えられましたが、その後、デルタ株だけに原因があるのではなく、そもそも新型コロナウイルスのワクチンの効果は時間とともに減衰することが国内外の様々な調査で明らかになりました。
ワクチンを接種すると体内に、ウイルスを攻撃する「抗体」ができます(詳しくは、連載「ワクチンを知ろう」の1回目「そもそもワクチンとは」を参照ください)。藤田医科大学の研究チームがファイザー製のワクチンを接種した職員約200人の血液を調べたところ、ワクチン接種を2回完了してから約70日経つと、抗体価は完了直後の約3分の1に、半年後には10分の1未満に減っていました。

オミクロン株は、ウイルスの表面にあるスパイク(S)たんぱく質の遺伝子に多数の変異が入っています(詳細は、連載13回目「オミクロン株の感染速度、潜伏期間は? どんな変異が影響?」をご覧ください)。ファイザーやモデルナ、アストラゼネカのワクチンは、接種した人の体内で、Sたんぱく質を攻撃する抗体を作るようにデザインされているので、Sたんぱく質が大きく変化したオミクロン株に対しては効果が低下することが国内外の調査や研究でわかっています。
英国の健康安全保障庁によると、オミクロン株の場合、英国のイングランドの国立予防接種管理システムなどのデータを基に解析したところ、ファイザー製やモデルナ製のワクチン接種直後には発症を防ぐ効果が65~70%あったのが、25週目までには効果が約10%に低下していました。アストラゼネカ製のワクチンは、45~50%あった発症予防効果が20週目までにはほとんど効果が無くなっていました。

英国健康安全保障庁によると、オミクロン株に対し、アストラゼネカのワクチンが入院が必要になるほど重症化するのを防ぐ効果は、2回接種完了後には50%程度あったのが、25週を過ぎると30%前後に下がっていました。ファイザーのワクチンは、2回接種後2~4週目には70%以上の入院予防効果が、25週を過ぎると30%前後に低下していました。
◆発症・入院を防ぐ効果、2回目接種より高め?
Q2: 追加接種(3回目接種)を受けると、ワクチンの効果は回復するのでしょうか?
A: 追加接種のブースター効果により、減衰した抗体価が上がることが確認されています。また、いったん低下した発症や入院を防ぐ効果も上がります。2回目接種完了後よりも、3回目接種後の方が発症や入院を防ぐ効果が高くなるとみられます。感染を防ぐ効果がどれぐらい回復するのかはよくわかっていません。
前述の藤田医科大の研究チームによると、職員約200人にファイザーのワクチンの3回目の追加接種をしたところ、抗体価は、2回目接種完了から半年後に比べて約28倍、高くなりました。3回目接種後の抗体価は、ワクチン2回接種完了直後と比べて2.3倍増えていました。

英国健康安全保障庁によると、ファイザー製かモデルナ製のワクチンをブースター接種した2~4週間後には、オミクロン株に対して発症を防ぐ効果は60~75%に上がりました。また、入院を防ぐ効果は、ファイザー製ワクチンをブースター接種した直後には90%に、モデルナ製ワクチンをブースター接種した後には90~95%に上がりました。

◆3回目接種後の副反応は、2回目とほぼ同程度か
Q3: 追加接種後にはどのような副反応が起こるのでしょうか? 2回目の接種後よりも強い反応が出るのでしょうか?
A: 厚生労働省の研究班が、ファイザーのワクチンを2回打ち、その後、ファイザーの追加接種を受けた医療従事者約2800人について調べた報告では、2回目の接種後と3回目の接種後の副反応は、打った部位の痛みなど局所的な反応も、発熱や倦怠感、頭痛といった全身的な反応も、発生頻度がほぼ同じでした。

年代別、男女別の副反応も2回目の接種後とほぼ同じ傾向で、発熱する人の比率は若い世代ほど高く、高齢になるほど低くなります。また、どの年代でも、女性のほうが男性より発熱する人の比率がやや高くなっています。一方、モデルナ製ワクチンの追加接種後の副反応については、国内ではまだ報告がありません。

米疾病対策センター(CDC)予防接種諮問委員会によると、モデルナ製ワクチンもファイザー製ワクチンも、2回目よりも3回目の接種後の方が、副反応の起こる割合が若干、低くなる傾向がみられました。
また、最初の2回のワクチンがどの種類でも、追加接種でモデルナのワクチンを打った方が、副反応がやや強く出る傾向もみられました。

◆大規模会場、空きあれば64歳以下でも接種
Q4: どのような人が追加接種を受けられるのでしょうか?
A: 2022年2月時点では18歳以上の人が対象です。医療従事者や高齢者の施設にいる人の場合は2回の接種完了から6か月経った人、65歳以上の高齢者は2回の接種完了から7か月経った人が追加接種の対象です。ただし、大規模接種会場などで接種枠に空きがあれば、64歳以下でも接種から6か月経っていれば、打つことができます。接種が受けられる対象は変わる可能性がありますので、厚生労働省の下記のページや、住んでいる自治体に問い合わせるなどして、最新の情報を入手して下さい。

※厚労省・追加接種について:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_booster.html
Q5: 追加接種はどこで受ければいいのでしょうか?
A: 原則は、住んでいる自治体にある医療機関です。下記のサイト「コロナワクチンナビ」の「接種会場を探す」で検索できます。それ以外に、都道府県や自衛隊が、大規模接種会場を運営しています。対象者がそれぞれ異なるので、都道府県や防衛省のサイトで確認して下さい。
※コロナワクチンナビ:https://v-sys.mhlw.go.jp/
※防衛省のサイト:https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/covid/covid_intokyo.html
◆予防効果・副反応とも、モデルナがやや高め?
Q6: 東京都などは、2回目まではファイザー製ワクチンを打っていても、3回目はモデルナ製を打つよう呼びかけています。2回目までと違う種類のワクチンを打っても大丈夫でしょうか? ファイザー製とモデルナ製、どちらを選んだらいいのでしょうか?
A: 2回目までと異なる種類のワクチンを3回目に打つことを「交互接種」と言います。欧米では、最初にアストラゼネカ製などmRNA以外のワクチンを打った人は、追加接種では、mRNAワクチンであるファイザー製かモデルナ製を打つよう推奨しています。交互接種にリスクがあるという報告はこれまでのところありません。
上記の英国健康安全保障庁のグラフでわかるように、モデルナ製ワクチンを追加接種として打った方が、若干、発症や入院を防ぐ効果が高くなる可能性があるかもしれません。一方で、米疾病対策センター予防接種諮問委員会の報告にあるように、副反応は多少、モデルナ製ワクチンの方が強くでる傾向があるようです。いずれも、大きな差はありません。高齢だったり、肥満だったり、持病があったりして、重症化リスクの高い人は、mRNAワクチンであれば種類にこだわらず、できる限り早く打った方がいいと考えられます。
Q7:追加接種の効果はどれぐらい持続するのでしょうか?
A: 上記のグラフからわかるように、オミクロン株に対しては、追加接種から4~6か月経つと、発症や入院を防ぐ効果が下がってきます。
英国健康安全保障庁によると、ワクチンの種類を問わずに、さまざまな調査や研究のまとめでは、まだ不確実性が残っているものの、追加接種直後から3か月目までは発症予防効果が50~75%あるのが、接種後4~6カ月後には40~50%に下がります。また、入院を防ぐ効果は追加接種の直後に80~95%だったのが、4~6カ月後には75~85%に下がるとみられています。
Q8:イスラエルでは4回目の接種も始めたそうですね?
A:60歳以上の高齢者に対し、4回目の追加接種を始めました。高齢者は、若い年代の人に比べてもともと、ワクチンを打っても免疫がつきにくい傾向があるからです。
Q9:今後も、半年に1回、あるいは年に1回といった頻度でワクチンを打ち続けなくてはならないのでしょうか
A:それはまだわかりません。今後も、さまざまな変異株が登場し、インフルエンザウイルスのワクチンのように毎シーズン打つことになる可能性がある一方で、もっと長期間、効果が持続するワクチンが登場する可能性もあります。また、病原性が低くなって、重症化する割合が下がれば、ふつうの風邪のようになって、ワクチン接種の必要が無くなるかもしれません。
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