<連載> 今すぐできる終活講座

もらってもうれしくない「いらない土地」 うまく手放すための条件は?

もめないけど困る相続⑤

2022.03.30

 「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど、何からやればよいか迷っているという人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために、遺贈寄附推進機構代表取締役の齋藤弘道さんが今すぐ役立つ終活の基礎知識やヒントを紹介します。不動産の困った相続のうち、相続した人が損をする「負(ふ)動産」について前回、お伝えしました。「そんな負動産ならいらない」「誰かに引き取ってもらえないか」と考える人もいるでしょう。もしかすると、その解決になるかもしれない「相続土地国庫帰属法」についてお伝えします。

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終活連載)いらない土地・もめないけど困る相続⑤
「いらない土地」を放置していると所有者不明になってしまうおそれが……

「相続土地国庫帰属法」ってどんな法律?

 皆さんは「相続土地国庫帰属法」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。すごい名前ですよね。「相続した土地が国に召し上げられる」ような響きが感じられます。もちろん、強制的に国が土地を奪い取る法律ではありません。

 相続により、望んでもいないのに土地を所有するケースが一定の割合であります。このような土地の管理負担を軽減する必要があり、これに対応する法律です。正式名称は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」といいます。2021年4月に成立、公布されました。

どんな制度なの?

 相続等(遺産分割協議や遺言など)により取得した土地の所有権を国庫に帰属させるように法務大臣へ承認を申請する制度です。

いつから?

 23年4月27日から施行されます。

目的は?

 所有者のわからない土地が発生するのを予防するため。

 所有者不明土地問題に対して国は、「相続登記の義務化」「遺産分割を促進するための民法改正」とともに、「相続土地国庫帰属法」で予防を目指しています。

適用される条件は?

 ヒト:相続等により土地の所有権を取得した土地所有者です。「相続等」は「相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)」と定義されていますので、申請できるのは相続人に限られているようです。

 モノ:「そもそも申請できない土地」と「申請できても状況によって承認されない土地」に分かれます。詳しくは後で整理します。

 カネ:審査の手数料と「負担金」を納付します。タダで引き取ってもらえるわけではありません。この「負担金」は10年分の管理費に相当する額なのですが、具体的な基準は定められていません。ただ、「原野で20万円、200㎡の住宅地で80万円程度」という目安が示されているようです。

手続きの流れは?

 承認の申請 → 審査(現地調査等)→ 承認 → 負担金の納付で国庫帰属

「相続土地国庫帰属法」のすごいところ

 この法律を知ったとき、衝撃を受けました。第5条にこう書いてあるのです。

 「法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない」。

 つまり、「ヒト」「モノ」「カネ」の条件を満たしていれば、国庫帰属の申請は必ず承認されるのです。行政庁(法務大臣)に裁量の余地はないのです。所有者不明土地の発生抑制のためとはいえ、国は懐が深いですね。相続人(ヒト)と負担金(カネ)の条件は比較的クリアできそうなので、あとは土地(モノ)の条件だけです。ではモノの条件を見てみましょう。

土地(モノ)の条件

 「以下のいずれにも該当しない」ことが条件です。逆に、どれにも該当しなければ条件クリアです。いわゆる「ブラックリスト方式」などと言われています。

(A)そもそも申請できない土地

①建物が立っている土地
②抵当権などが付いている土地
③通路など他人に利用される土地
④土壌汚染された土地
⑤境界が不明確な土地

(B)申請できても状況によって承認されない土地

①管理に過大な労力が必要な崖地
②管理処分を妨げる工作物などがある土地
③管理処分を妨げる地下埋設物がある土地
④管理処分するのに隣地所有者と訴訟が必要な土地
⑤管理処分に過大な労力が必要な土地

 これらの条件に一つでも該当した場合は、国に引き取ってもらえないのですが、諦める前に承認される可能性や他の方法で解決できないか考えてみましょう。

いらない土地を手放す方法

モノの条件をクリアする方法

建物が立っている土地
→建物を取り壊すことで条件をクリアします。ただし、取り壊し費用が多額なときは、そのまま所有している方が良いという判断もあるでしょう。

抵当権などが付いている土地
→債務を返済して抵当権を抹消できれば良いのですが、別の不動産に抵当権を付け替えるように債権者と交渉する方法もあります。

境界が不明確な土地
→隣地や道路との境界を確定するように隣地所有者と交渉します。できれば相続が発生する前に境界確定しておくことが、国庫帰属だけでなく、売買などの選択肢を広げることになります。

「相続土地国庫帰属法」以外の方法

相続放棄の検討
→法定相続人が全員相続放棄し、誰も相続人がいない状態になれば、相続財産清算人を経て、最終的には国庫帰属することになります。しかし、清算人に引き継ぐまで「保存」義務が残る可能性があります。また、相続放棄の場合、特定の財産(不要な土地など)だけを放棄することはできず、相続人としての地位を失うことになります。

物納の検討
→管理処分が不適格でない場合は物納できる可能性があります、しかし、そもそも物納の制度は、相続税を金銭で納付できず、さらに延納でも納付できない場合に初めて認められるものなので、申請できる条件が限られます。

山林バンクや空き家バンクの検討
→行政やNPO法人などが仲介役となって、新たな利用者に引き継ぐ方法です。自分がいらない土地を誰かが利用する可能性は高くはありませんが、マッチングできれば良い方法です。

あらかじめ終活で備える
→相続発生前に生前贈与や売却、非営利団体への寄付などで手放す方法です。これもマッチング次第でしょう。相続発生後に承継する相手を探すより時間がありますので、引き継ぐ相手が見つかる可能性が高くなるメリットがあります。

 相続土地国庫帰属法は、条件によっては「いらない土地」の有効な解決手段になり得ますが、自分の財産に「負動産」になりそうな物件がある場合には、この法律に頼らずに、生前から処分方法を検討し準備することで、円滑な相続が実現するでしょう。

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  • 齋藤弘道
  • 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

    遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

    信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

  • この連載について / 今すぐできる終活講座

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