<連載> べんの博士のウンチ講座

第9回 作り、育て、出す ウンチを出すには三つの力が必要です

いま知りたい! 腸活のための基礎知識 / ウンチ力

2022.05.06

 ウンチは健康のバロメーターです。そのウンチの状態をみれば、腸の状態がわかるのです。腸内にすてきな環境を作ることは、健康の第一歩です。ウンチ博士として知られる一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長の辨野義己博士が、エキサイティングなウンチと腸の世界を紹介します。

べんの博士のウンチ講座

 健康なウンチのお手本は、赤ちゃんのウンチです。ビフィズス菌が90%近くを占め、色は黄色く、水分も多く、臭いは酸性気味です。

 あなたのウンチはどうでしょうか。あなたは毎日どれくらいのウンチをしていますか?

 「毎日、お通じはありますか」と聞かれたら、よほど便秘症でない限り、「あります」と答えるでしょう。しかし、ウンチで健康状態を知るには、量と質が問題なのです。毎日のウンチの量をチェックしなければ、腸内の状態を把握できないのです。

 では、どのぐらいのウンチが目安になるのでしょう。食物繊維を一日15グラムとっていれば、100から150グラムのウンチが出るといわれています。だから、私は、「300グラム以上出たら健康ですよ」と言うことにしているのです。ウンチ100グラムの量はバナナ一本分と覚えてください。

 健康なウンチは、いきまず、無理せず、下腹に力を加えなくても、スト-ン、ストーンと出るものです。しかも、食後出る、朝起きてすぐ出るとか、その人なりに、排便の時間に規則性があります。不規則で、夜中の2時、3時などというのは、からだによくありません。規則的な排便の習慣を身に着けて、自分のバイオリズムの中で一定の時間に出すのが理想です。自分の感じをつかむことが大切です。1日3食をとるパターンのなかで、何を食べるとどうなるのか、いつ排便するのか、リズムをつかんでください。

 食生活を変えることで、腸内の環境はかなり変化してきます。病気の予防の第一が食事だとすると、第二は運動です。運動と食事が合体してはじめて、病気の予防になるのです。

 私は、1日1万歩以上を歩き続けています。歩くことや階段の上り下りを含めた運動がなぜ大切かというと、インナーマッスル(腸腰筋や腸骨筋)が鍛えられるからです。いくらカサのあるものを食べたからと言っても、インナーマッスルが弱ければ、腸が活発に動かず、ためたものを押し出す力が出ないのです。

 アメリカの調査では、運動が大腸がんの予防に対し、明らかな効果があるとの結果が出ています。大腸内に残留物が残らないために、悪玉菌の増殖が抑えられ、がんを誘発する物質や促進する物質が作られにくくなるためだと考えられます。

 食事だけでは、快腸生活は実現しません。運動とさらに、ストレスをためないライフスタイルも大切になります。

 以上のような理想的なウンチと毎日遭遇するためは、三つのウンチ力が必要です。

 一つ目は「ウンチをつくる力」です。いかに食べ物の本質、成分を知り、食べるのかその人の力です。病気に立ち向かうとき、食はきわめて重要な働きをしてくれます。流行で食べるのではなく、格好よく食べるでもない。生きて命をつなぐ食でありたいと思います。

 二つ目は「ウンチを育てる力」です。ウンチは水分が80%。残り20%が固形成分です。固形成分に腸内細菌も含まれていて、ウンチ全体の7%が腸内細菌なのです。この細菌が人生を決定的なものにするのです。

 食べカス成分が細菌にとって一番のごちそうです。カスは腸内細菌を育てます。いま、危険なのは肉食を中心とした食事の欧米化に伴い、悪玉菌にとってのごちそうが大量に供給されているということです。肉も必要ですが、魚介類や豆類、キノコ類、野菜、海藻などをバランス良く食べることが必要です。善玉優位とするのか、悪玉優位とするのか。すべてがあなた次第です。

 三つ目は「ウンチを出す力」です。本来、生物は食べた残りカスを出すのが当たり前なのです。動物は排便が困難になると体臭がきつくなり、自らの居場所を知らせることになるので、命を危うくすることにつながります。つまり「自分のにおいを減らす」ため、排便が大事なことなのです。

 しかし、人間には便秘があります。様々な理由がありますが、その一つに大腸の周りの筋肉が大きく関係します。筋肉が衰えると、出す力が弱まるのです。便秘にならないためにも、大腸周りの筋肉を鍛えることが大切です。

 ウンチ力を身につけることが健康長寿への近道といえましょう。理想的なウンチと遭遇できれば、腸内環境のコントロールがよくできていることになります。理想的なウンチは病気のリスクを下げている証拠です。ぜひ、ウンチ力を極めてください。

次回は「プロバイオティクス」の話です。

辨野博士の本

  • 辨野先生の本
  • 「腸内細菌」が健康寿命を決める
    出版社:集英社インターナショナル

    著者の研究秘話とともに、腸内細菌に関する最新知識を解説。腸内細菌がいかに健康・美容と深くかかわっているのか、理想のウンチの作り方から研究の最前線まで、楽しみながら健康知識をウンと高められるオモシロウンチエッセイ!

  • 辨野義己
  • 辨野 義己(べんの・よしみ)

    一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長 国立研究開発法人理化学研究所名誉研究員

    1948年、大阪生まれ。酪農学園大学獣医学科卒、東京農工大学大学院獣医学専攻をへて理化学研究所へ。同研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長、同研究所辨野特別研究室特別招聘研究員などを歴任して現職。半世紀にわたって腸内環境学・微生物分類学の研究に取り組んでいる。「『腸内細菌』が健康寿命を決める」(集英社インターナショナル)、「大便力」(朝日新聞出版)、「大便革命」(幻冬舎新書)、「長寿菌まで育てる最高の腸活」(宝島社)など著書多数。

  • この連載について / べんの博士のウンチ講座

    腸内にすてきな環境を作ることは、健康の第一歩です。ウンチ博士として知られる一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長の辨野義己博士が、エキサイティングなウンチと腸の世界を紹介します。

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