<連載> ワクチン接種Q&A

オミクロン株BA.2、どんなウイルス? 何が違う? ワクチンは効く?

疑問・質問「コロナとワクチン」(18)新型コロナ、新規感染者数に反転の兆し? 第7波は来るか

2022.04.07

 新規感染者数が下がり切らないまま、増加に転じる兆しもみえる新型コロナウイルス。背景にあるのが、オミクロン株BA.2への振り替わりです。これまで主流だったBA.1と、どこがどう違うのか。感染力はどの程度で、ワクチンは効くのでしょうか。Q&Aにまとめました。

 【連載「ワクチン接種Q&A」】記事一覧はこちら
 【連載「ワクチンを知ろう」】記事一覧はこちら

オミクロン株BA.2の占める割合
4月6日開催の厚労省専門家会議では、オミクロン株は6月第1週時点で、すべてBA.2に置き換わるとの予測が示された

【質問一覧】

◆BA.2だけの変異、ヒト細胞との結合部で8カ所

Q1: 新型コロナウイルスの「オミクロン株BA.2」というのは何ですか?

A:新型コロナウイルスのうち、世界保健機関(WHO)が「懸念される変異株」に位置付けている変異株、オミクロン株の仲間です。国際的なウイルスの分類法により、最初に広がったオミクロン株の「BA.1」などと変異が少し異なるため、「BA.2」に分類されました。

 オミクロン株は昨年11月にボツワナと南アフリカで初めて報告されました。この変異株は国際的に「B.1.1.529」と分類されています。「B.1.1.529」には、ウイルスの遺伝情報、m(メッセンジャー)RNAに入っている変異の位置が少しずつ異なる4系統が見つかっており、それぞれ「BA.1」「BA.1.1」「BA.2」「BA.3」と分類されました。当初はBA.1とBA.1.1が主流でしたが、2022年に入ってBA.2への置き換わりが進みました。

 ウイルスの表面にあり、感染する時にまずヒトの細胞に結合する、突起状のたんぱく質、Sたんぱく質のmRNAに入った変異をみると、BA.1とBA.2で20カ所以上が共通ですが、BA.2にだけしかない変異も8カ所あります。

BA1とBA2の変異の違い

【質問一覧へ戻る】

◆世界では85%以上がBA.2 日本でも置き換わり加速

Q2: オミクロン株BA.2はどれぐらい感染が増えているの?

A: WHOによると、2022年に入ってからオミクロン株の中でBA.2への置き換わりが急速に進み、今年3月22日までの約1カ月で世界各国から新たに遺伝情報が登録された新型コロナウイルスのうち、85%以上がBA.2でした。国内でもBA.2への置き換わりが進みつつあります。

オミクロン株BA.2への置き換わり

 国立感染症研究所(感染研)が、民間の検査会社の検査結果を基に推計したところ、4月の第1週目で国内の新型コロナウイルスの約6割がBA.2に置き換わり、5月第1週には9割超が置き換わると予想されました。

オミクロン株BA2の占有率推計

【質問一覧へ戻る】

◆感染の広がり、従来オミクロンの1.75倍との推計も

Q3: BA.2の感染の広がりやすさは?

A: オミクロン株(BA.1)は、それ以前に流行していたデルタ株より感染の広がるスピードが3倍ほど速く、急速なスピードで世界各地に広がりました。そのBA.1に置き換わっているということは、BA.2の方がさらにBA.1よりも感染の広がりやすさが速いということです。英国健康安全保障庁(HSA)は約1.75倍速いと推計しています。

 英HSAが昨年12月15日~今年3月15日までに、唾液を使った検査を受けた市民数十万人のデータを基に推計したところ、BA.2は、BA.1よりも約1.75倍、感染が速く広がっていると考えられます。

 また、約9万5000人のボランティアが参加する、英インペリアル・カレッジ・ロンドンなどによる調査では、2月8日~3月1日までの間に2731人の感染が確認されました。そのうち、ウイルスの遺伝情報を詳しく解析した1195人について、感染経路や家族や濃厚接触者の感染状況などを詳細に調べたところ、BA.2の方が、BA.1よりも約1.4倍、他の人に感染させやすいとみられました。

 なぜBA.2の方が伝播力が高いのかはまだわかっていません。WHOは、BA.2の方が、ワクチン接種や感染後にできる免疫の影響を逃れやすいから感染が広がっているのではなく、ヒトの体内で早く増殖する、あるいは第三者に感染を広げやすいような上気道でウイルスが増殖しやすいなど、ウイルスの何らかの性質が、伝播力の高さに関係しているだろうとしています。

 また、WHOによると、BA.2はBA.1よりも感染が広がりやすく、伝播力が高いものの、その差は、オミクロン株とデルタ株やアルファ株といった他の変異株との差よりは小さいとみられます。

 下図は、東京都健康安全研究センターが、初めてウイルスが都内で検出されてから、どのような速さで広がっていくのかを調べたグラフです。今年3月31日時点で、都内のウイルスの半分超が、BA.2に置き換わったとみられます。グラフでは一見、BA.1よりもBA.2の方が感染の広がりが遅いように見えますが、置き換わりがもっと進むまで観察を続けないと、まだ結論は出せません。

オミクロン株ほか変異株の占有率の推移

【質問一覧へ戻る】

◆重症化・死亡のリスクは、BA.2でも変わらず低め

Q4: BA.2に感染すると重症化しやすいの?

A:英HSAやデンマーク国立血清学研究所は、入院が必要になるほど重症化したり、死亡したりする率は、BA.2もBA.1と変わらないとしています。

 オミクロン株による感染では、デルタ株などへの感染よりも、重症化するリスクが低いことがわかっています。英国やデンマークの感染者の分析では、その傾向は、BA.2でも、BA.1と同じだと報告されています。

【質問一覧へ戻る】

◆ワクチン効果はBA.1とほぼ同じ、3回目接種で効果回復

Q5: BA.2に対するワクチンや薬の効果は?

A: 既存のワクチンは、オミクロン株(BA.1)に対しては、デルタ株などの従来のウイルス株に比べ、発症や感染を防ぐ効果が低いことがわかっています。一方、入院や死亡といった重症化を防ぐ効果は一定程度、維持されています。とくに追加接種により、効果は回復します。BA.2に対するワクチンの効果はBA.1とほぼ同じだとみられます。
 治療薬の1種類は、オミクロン株(BA.1)に対して効果が低いことが判明し、使用を推奨されていませんが、BA.2に対しても効果が低いとみられています。

 オミクロン株は、ワクチン接種後に体内にできる抗体が攻撃対象とするSたんぱく質に多くの変異が入っているため、従来のウイルス株に比べ、ワクチン接種による感染や発症を防ぐ効果が低いことがわかっています(詳しくは連載「ワクチン接種Q&A」(16)「追加(ブースター)接種の効果と副反応」を参照して下さい)。その一方で、入院や死亡を防ぐ効果は一定程度、保たれているとされています。とくに、3回目のブースター接種の直後には、入院などを防ぐ効果は9割前後まで回復します。英HSAなどの調査によると、この傾向はBA.2もBA.1と同じだとみられています。

ワクチンの入院予防効果
ワクチン3回目接種の予防効果

 高齢だったり基礎疾患があったりして重症化リスクの高い人の重症化を防ぐ、点滴薬のうち、「カシリビマブ/イムデビマブ(製品名ロナプリーブ)」は、中和抗体薬と呼ばれ、ウイルスを攻撃する抗体が主成分になっています。オミクロン株には変異が多く入っており、主成分の抗体の効果が出にくく、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」では、オミクロン株への感染の場合には、ロナプリーブの使用を推奨しないとしています。BA.2に対してもBA.1と同様、効果が低くなるという報告が複数、出ています。

 もう1種類の中和抗体薬は、BA.1に対しては効果があるとされていますが、BA.2に対しては効果が落ちる、という報告をいくつかの研究チームがしています。ただし、製薬企業は独自の調査でBA.2に対しても効果がある、と発表しています。

【質問一覧へ戻る】

◆探知しにくい「ステルス」性は検査手法が原因

Q6: BA.2はなぜ「ステルスウイルス」と呼ばれたのですか?

A: オミクロン株(BA.1)は、従来のウイルス株に比べて、mRNAの一部が欠損しています。このため、英国などでは、オミクロン株登場直後は、この欠損の有無を調べて、オミクロン株かどうか判断していました。ところが、BA.2にはこの欠損が無いため、欠損の有無を調べる方法では検出できません。このため、レーダーなどで探知しにくい、という意味の「ステルス」ウイルスと呼ばれました。

 日本では最初から、欠損の有無を見る方法とは異なる方法で調べていたので、BA.2も「ステルス」ではありませんでした。また、英国なども今は別の方法で調べていますので、「ステルス」ではなくなりました。

【質問一覧へ戻る】

◆デルタ株とオミクロン株の「組み換わり変異株」も登場

Q7:「デルタクロン」と呼ばれるのはどんな変異株ですか?

A: 「デルタクロン」は通称です。デルタ株とオミクロン株の遺伝情報の一部が組み換わって誕生した変異株です。フランスで最初に見つかったものと、英国で見つかったものの2種類があります。どちらも増加傾向はみられません。オミクロンのBA.1とBA.2の組み換えで誕生した変異株も英国では見つかっており、こちらは微増傾向にあります。

 2種類の変異株に同時に感染した人の体内で、異なるウイルス株の遺伝情報が組み換わり、新たなハイブリッド変異ウイルスが登場することがあります。デルタ株とオミクロン株の組み換え体が通称で「デルタクロン」と呼ばれています。デルタクロンは現在、2種類、報告されており、国際的な分類法では、「XD」と「XF」と呼ばれています。XDは昨年12月にフランスで最初に報告され、今年3月13日までにフランスで40件、デンマークで8件、ベルギーで1件、報告されています。増加傾向はみられません。XFは英国でしか見つかっていません。今年1月に最初に報告され、2月14日までに39件報告されましたが、2月15日以降は報告がありません。

 BA.1とBA.2の組み換え体は「XE」と呼ばれ、今年3月22日までに英国で763件見つかりました。英HSAによると、BA.2に比べて、増加率が9.8%高いと推計され、微増傾向にあります。

【質問一覧へ戻る】

◆第7波が来るかは不明 欧米では感染対策の緩和も進む

Q8:BA.2やデルタクロンによって第7波が来るの? BA.2にはどのような対策をとればいいのですか?

A: 国内の新規感染者数は今年2月にピークを迎えた後、減ってきていましたが、3月下旬から減り方が鈍ってきています。もうしばらく動向をみないと、再び減少していくのか、第7波が新たに来るのか、第6波が終息せずに長く続く状態になるのかはわかりません。デルタクロンの影響はないとみられます。BA.2に対する感染対策は、BA.1を含めたこれまでのウイルス株に対して実施してきた感染対策と同じです。

 BA.2を含めたオミクロン株は、従来のウイルス株よりも重症化しにくいとはいえ、年齢や、基礎疾患の有無、肥満かどうかといった条件により、一人ひとり重症化リスクは異なります。ワクチンの重症化を防ぐ効果はオミクロン株に対しても維持されているので、リスクが高い人は、かかりつけの医師とも相談して、追加接種を検討してみて下さい。

 また、いくら重症化しにくくても、新規感染者の絶対数が増えれば、一定の比率で重症化する人は出てきます。第6波では、重症化しにくいとされている、10歳未満の子どもも亡くなりました。また、重症患者の絶対数が増えれば、病院の負荷が高まり、新型コロナウイルス以外の重症患者への治療にも影響が出る恐れがあります。ですので、感染爆発が起きる状態は避けた方がいいと考えられます。

 日本よりも新規感染者数の実数が多い英国などの欧州諸国や米国などでは、従来のウイルス株よりも重症化リスクの低いオミクロン株の流行を受け、水際対策も含めた新型コロナウイルスへの感染対策を少しずつ緩和してきています。ただし、様々な行動をとる際に、ワクチン接種完了など一定の条件がついています。

 日本でも今後、対策が緩和されていく可能性があります。そんな中で大切なのは、自分自身や家族、親しい人の重症化リスクを踏まえた上で、どういった環境でどのような活動なら安心、安全にできるか一人ひとりが考え、行動することではないでしょうか。ワクチン連載の(15)「新型コロナ・オミクロン株の特徴とは<下>」でも紹介したように、3密に該当する環境など、感染しやすい環境はどんな場面なのかがこの2年間の経験からすでにわかっていますので、参考にして下さい。

【質問一覧へ戻る】

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。

<新型コロナとワクチン関連記事>

  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの4回目接種が本格化しています。感染・重症化予防の有効性は? 副反応への対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

関連記事

あわせて読みたい

おすすめ記事

PAGE TOP