脳活性化とは? 専門家が簡単にできる脳活とポイントを解説

人生100年時代を生きるキーワード・脳活性化

2022.04.15
人生100年時代のキーワード・脳活

 暗算は得意だったはずなのに、すっかり計算が遅くなってしまった。最近よくみるドラマの話をしたいのに、タイトルや俳優さんの名前が出てこない。そんなもどかしい思いをしている人は多いかもしれません。
 たしかに脳は加齢によって衰える部分もありますが、少しの工夫と前向きな気持ちで、いくつになっても若々しく保つことができます。
 今回は脳の活性化とはどういう状態か説明したうえで、脳の健康を維持する「脳活」の方法とそのポイントをご紹介します。簡単にできるものばかりですので、楽しくとり組んで脳の健康を保ちましょう。

<目次>

脳活性化とはどういう状態か

 脳が活性化すると、どのような変化が起きるのでしょうか。

脳が活性化するとき体の中で起こること

 脳は活性化していると、脳血流の量が豊富になります。脳の神経が活発に働くことで酸素が消費されるため、それを補うために脳の血流量が増えるのです。そして、脳のネットワークをより使うことでたくさん広げます。そのネットワークの中から情報伝達の効率よいルートを取捨選択し強固にすることで、記憶力や集中力など本来脳が得意とする能力を発揮できるのです。

脳の活性化に大事なポイント

 脳はさまざまな場面で活性化しますが、そのために大事なポイントがいくつかあります。主に次のようなことが挙げられます。

●運動をすること
 有酸素運動することで、神経細胞の栄養源が体内で作られ、それによって記憶をつかさどる海馬も発達します。
 さらに、運動することで不安やストレスをとり除くこともわかっています。認知症は海馬が萎縮することから始まりますが、ストレスは海馬を萎縮させる原因となります。そのため、運動することは海馬の健康維持に役立ちます。

●好奇心を持って趣味の活動をすること
 「楽しい」と感じることはストレスを軽減し、脳の健康状態を保つのに寄与します。また、感情をつかさどる扁桃体(へんとうたい)と記憶をつかさどる海馬が密接にかかわっているため、楽しい・わくわくするということは結果的に記憶力の向上につながります。
 そして「知りたい」「やってみたい」などといった知的好奇心が強いほど脳の萎縮が少なく、脳の若返りをサポートします。

●会話をすること
 相手の表情を読みとったり、声の抑揚を感じとったりと言葉以外の情報の伝達をすることで、相手の気持ちや感情を理解しようと脳がフル回転します。そのため、できるだけ人と「会って」話すことが大事なポイントとなります。
 昨今のコロナ禍のように外出の機会が減ると、人とのコミュニケーション不足や運動不足によって認知機能が低下しがちです。社交的であると認知症リスクが下がるという報告もたくさんありますので、こんなときこそ、感染対策に気をつけつつ脳活を心がけましょう。

●食生活を工夫すること
 何を食べるか・どうやって食べるかでも、脳の活性化に影響します。
 脳の健康維持に役立つ食べ物はたくさんありますが、特定の品目だけではなくバランスよく食べることが大事です。その中でも、地中海沿岸の地域で食べられているような食事が脳によいといわれています。
 また、食べ方次第では脳にダメージを与えてしまう場合もあります。特に認知症のリスクを見据えた糖尿病予防としての血糖コントロールと、血管を若々しく保つための動脈硬化予防を意識しましょう。

●睡眠をとること
 睡眠には二つの役割があります。
 一つは記憶を固定すること。眠ることで記憶を形成し、保持することができます。
 もう一つは老廃物を洗い流すこと。脳神経細胞の周辺に蓄積し、認知症の原因にもなるたんぱく質のゴミが、眠ることによって洗い流されるといわれています。
 そのため、しっかり眠ることが脳にとって大切な役割を果たすのです。

簡単にできる脳活で脳を活性化させよう

 脳の健康を維持するための「脳活」の方法を、「脳の活性化に大事なポイント」で挙げた場面ごとにご紹介します。ぜひ興味のあるものから気軽に始めてみてください。

運動・ストレッチをする

 体を動かすことは脳を刺激し、有酸素運動は認知症予防にも有効です。どのような運動が効果的なのか、具体的な方法をご紹介します。

●ウォーキング(有酸素運動)
 有酸素運動をすると脳に送られる酸素量が増え、脳の働きがよくなります。
 ポイントは楽しみながら継続できる運動をすること。まとまった時間がとれなければすきま時間に10~15分程度の運動を積み重ねるのでも構いません。

人生100年時代のキーワード

<ポイント>

  • ・真っすぐに前を向き、目線はやや遠くに
  • ・あごを軽く引き背筋を伸ばして胸を張る
  • ・歩幅はやや大きくし、親指で踏み込むようにして一歩を踏み出す
  • ・ひざを伸ばしてかかとから着地する
  • ・可能であれば息が弾む程度の早歩きにする

●イスもも上げ(下半身の運動)
 イスに座った状態でひざ・太もも・腹筋を鍛えるトレーニングです。ゆっくり動かすことがポイント。そうすることで自分の脚の重さがかかり、適度な筋力トレーニングになります。

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<やり方>

  • ①姿勢よくイスに座り、座面を持つ
  • ②床と水平になるように片脚を持ち上げ、伸ばしたままさらに上げる
  • ③反対の脚も同様に、それぞれ10回程度行う

●肩甲骨ストレッチ
 こりやすい肩甲骨周辺をほぐします。首には脳につながる動脈があるので、血行をよくすることで脳への血流アップになります。また、ゆっくり呼吸しながら行うことで全身の筋肉が伸び、ストレス解消にもおすすめです。

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<やり方>

  • ①両脚を肩幅に開き、体の前で組んだ両手を上に伸ばす
  • ②ゆっくり10秒数え、力を抜く
  • ③下ろした両手を背中側で組み、手のひらを下に向けて両手を下に伸ばす
  • ④ゆっくり10秒数え、力を抜く

趣味・楽しめることをする

 人は、楽しい・うれしいと感じているときや新しいことにワクワクしているとき、ドーパミンが分泌され、脳の働きを高めます。逆に、イヤだと感じることをするのは脳にとってはマイナスです。
 そのため脳活も、楽しんでとり組めるものを選んでやりましょう。好きな人とおいしいものを食べ、映画や読書などで感動し、旅をして新しい発見をするなど、幸せな脳活もおすすめです。

●新しい趣味をはじめてみる
 やってみたいと思いながらまだチャレンジできていないことはありませんか? すでに楽しんでいる趣味があれば、それを続けるのも効果的です。

  • ・写真を撮る
  • ・生け花・フラワーアレンジメント
  • ・友人や家族の趣味に一緒にチャレンジする

●楽器を演奏する
 たとえばピアノを弾く場合、指先を使うから脳によいと思われがちですが、それだけではなく楽譜をみたりペダルを踏んだりと脳のさまざまな領域が刺激を受けているのです。
 楽器を習っていたことのある方は、楽譜が読める分これから始める方よりもハードルが下がるので特におすすめです。

●好きな音楽を聴く
 好きな音楽を聴くと、脳内にはドーパミンが分泌されることがわかりました。ほんの少しだけでもよいので、そんな時間をつくってみてください。

●香りでストレス解消する
 植物の香り成分を抽出した「エッセンシャルオイル」は交感神経系を落ち着かせ、リラックスさせる作用があります。ストレスがやわらぎ、脳波が変化することで、認知機能と気分を向上させてくれます。
 ただし、エッセンシャルオイルは非常に濃縮されたもののため体に悪影響を及ぼす場合があります。使用する場合は用法・容量を守りましょう。

●本や新聞を読む
 書かれている内容を想像したり、意味を理解しようとしたりするときに脳の神経細胞が活性化します。さらに声に出して音読すると、より脳を活性化させます。本、新聞、冊子など、読みやすいもので構いません。

●ゲームをする
 パソコンやスマホの対戦ゲームよりも、相手の表情を読みとりながら行うボードゲームがおすすめです。

  • ・将棋・囲碁
  • ・トランプ
  • ・オセロ

●すばやく計算してみる
 難しい問題ではなく、簡単な計算で十分です。時間をかけるよりも、急いで解くときの方がより脳が活発になるようです。

  • ・みかけた車のナンバープレートの数字で足し算をする
  • ・会計時におつりを暗算する

●いつもと少し違うことをしてみる
 毎日のルーティンや行動を少し変えてみましょう。たとえば次のようなことです。

  • ・散歩コースを変える
  • ・通勤ルートを変える
  • ・初めての食材を使って料理する

●ものごとを同時に行うことをやってみる
 同時に複数の刺激を与えることで、脳のトレーニングになります。

  • ・料理をする(切る・洗う・煮る・焼くなどの工程を複数同時に)
  • ・字幕付きの映画をみる
  • ・何かを探しながらウォーキングをする

●利き手でない手を使ってみる
 利き手ではない方の手を使うことで、脳を刺激しましょう。

  • ・スマホを操作する
  • ・文字を書く
  • ・カギを開ける

●指先の体操をしてみる
 指先をくるくる回す体操です。指先がぶつからないように回しますが、難しいので焦らずゆっくり行いましょう。回していない指が離れないようにするのもポイントです。

人生100年時代のキーワード

<やり方>

  • ①ボールを包みこむように、両手の指先をそれぞれ合わせる
  • ②親指の指先だけを離し、互いにぶつからないよう時計回りに20回回す
  • ③半時計回りで20回回す
  • ④人さし指、中指、薬指、小指も同様にして②③を繰り返す

●脳トレをする
 問題を解くのが好きな方はぜひ挑戦してみてください。

<問題>
 下の絵は上の絵と違うところが全部で七つあります。すべてみつけてください。

ハレやか冬号67P

 正解は<こちら>のページをご覧ください。

※その他の問題はこちらから:ハレやか特製脳活パズル

会話する・コミュニケーションをとる

 人と話をすること・交流することは、大いに脳を刺激します。言葉を交わすことや相手の表情から気持ちを察することで、脳が活発に働きます。
 コロナ禍以降、直接人と会うことも難しくなりましたが、オンラインでも顔を見合わせることを心がけましょう。文字だけだと非言語コミュニケーションがなくなるので、メールよりは声が聞こえる電話でのコミュニケーションがおすすめです。
 なお、特にシニア世代の方は、初対面や世代の違う人と会話をすると脳に新しい刺激を与えられるのでおすすめです。

食生活を意識する

 食事は脳活にはとても大切です。カロリー少なめを意識し、先ほど紹介した、肉より魚介類中心・野菜果物中心・オリーブオイルを使った地中海食をぜひとり入れてみてください。
 また、脳は1日に必要なエネルギーの20~25%を消費するため、朝はもちろん3食しっかり食べてエネルギーを補充するようにしましょう。

●食べ物について
 脳を活性化させる食べ物は「ブレインフード」とも呼ばれ、主に次のようなものが挙げられます。ただし、単品ではなく食事の中にとり入れ、バランスよく食べることが大切です。

  • ・青魚
  • ・ナッツ類
  • ・緑黄色野菜
  • ・オリーブオイル

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●食べ方について
 脳血流が活発になるよう、よく噛(か)むことを意識しましょう。よく噛んで食べることは急激な血糖値上昇の抑制にもつながります。
 また、食事と食事の間に間食をとるのはよくありません。しっかり空腹を感じるまで待ってから「おいしい」と思うものを食べましょう。そうすることで、脳内で「幸せホルモン」とも呼ばれるドーパミンが分泌され、脳が活性化されるのです。

睡眠をとる

 睡眠をしっかりとることは脳にとって大切です。脳が活動すると疲労がたまり、脳の細胞が壊れたり傷ついたりしますが、脳は寝ている間にこれを修復しているのです。その修復のために、1日6時間以上の睡眠をとりましょう。そして毎日同じ時間に起き、太陽の光を浴びて1日を始めると、体内時計がリセットされて脳の働きもよくなります。
 また、日中休憩する際には仮眠や昼寝をすることもおすすめです。ただし夜の睡眠を妨げてしまうため、昼寝は明るいところでうたた寝程度にしておきましょう。

年をとっても脳活は有効です

 脳の機能の一部は、年齢とともに低下していきます。ですが生活習慣を変えたりトレーニングをしたりすることで、低下を抑えられるだけでなく、その能力をさらに高められることがわかってきました。年齢に関係なく、いくつになっても脳は成長するのです。
 脳の衰えにつながるのは、諦めて何もしないでいること。また、頭や体を使わないことも同様です。たとえばパソコンやスマホの検索機能に頼りすぎて、思い出すことや考えることを諦めていませんか?
 私たちはさまざまな方法で脳活することができます。難しいことをする必要はありません。まずは「やってみよう」と思うことが大切です。

自分が楽しみながらできる脳活で、脳の活性化を

 脳活は、いつもの生活をちょっと工夫するだけでできることばかりです。続けられるかどうかよりも、まずは前向きにやってみようと思うこと、そして楽しんでとり組むことが大事です。
 いくつになって始めても手遅れではありません。趣味や旅行など、好きなこと・やりたかったことにチャレンジして、楽しみながら脳を活性化させ、パフォーマンスを上げていきましょう。

(取材・文 原幸代)

監修:瀧靖之

  • 瀧靖之
  • 瀧 靖之(たき・やすゆき)

    東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター副センター長 東北大学加齢医学研究所教授 医師 医学博士

    東北大学加齢医学研究所及び東北メディカル・メガバンク機構で脳の MRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにしてきた。読影や解析をした脳MRIは、これまでにのべ16万人以上に上る。 10万部を突破するベストセラーの「生涯健康脳」(ソレイユ出版)、「賢い子に育てる究極のコツ」(文響社)をはじめ、「回想脳」(青春出版社)など著書多数。NHK「NHKスペシャル」「あさイチ」などメディア出演も多い。東北大学発スタートアップ 株式会社CogSmart代表取締役。

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