<連載> 今すぐできる終活講座

相続人が行方不明なら専門家にまず相談 「不在者財産管理人」は最終手段に

もめないけど困る相続⑦

2022.04.27

 「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど、何からやればよいか迷っているという人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために、遺贈寄附推進機構代表取締役の齋藤弘道さんが今すぐ役立つ終活の基礎知識やヒントを紹介します。相続が発生したときに、相続人の1人の生死が7年以上わからない場合は「失踪宣告」の制度を利用することができると、前回お伝えしました。今回は「生死が7年以上わからない状況ではないが、まったく連絡がとれず、居場所もわからない」場合の「不在者財産管理人」の制度について紹介します。

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音信不通で居場所がわからない相続人が1人でもいると、のこされた財産は使えません

音信不通の相続人がいると困ったことに……

 相続人のうち誰か1人でも音信不通だと、たとえば次の事例のような困ったことが起きます。

 独身のAさんが亡くなり、相続人には故Aの姉Bと弟Cがいます。弟Cは音信不通の状態が数年間続いています。姉Bは故Aの死亡を弟Cに知らせようと、戸籍の附(ふ)票(住所の履歴情報)を役所で取得し、手紙を送りましたが「あて所に尋ねあたりません」と表示されて戻ってきてしまいます。

 このままでは、故Aの財産は凍結された状態が続き、Bさんは使うことができません。そこで、Bさんは家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の選任を申し立てします。こうすることで、選任された不在者財産管理人は弟Cに代わって、Bさんと遺産分割協議をすることができ、Bさんは協議により取得した財産を使うことができます。

 この例は相続人が「住民票上の住所にいない」状態ですが、住民票が「職権消除」(市区町村が実態調査などにより住民票を抹消する)の状態や、外国に移住したまま連絡が取れない状態などもあります。

不在者財産管理人の選任 申し立てで注意する点

 相続人がいない窮地を脱する制度ですが、注意すべき点がいくつかあります。

●誰が不在者財産管理人になるのか?

 家庭裁判所に選任申し立てするときに、管理人の候補者を立てることもできますが、利害関係のある人は認められません。適当な人がいない場合は、弁護士などが選任されます。

●自由に遺産分割協議できるのか?

 通常の遺産分割協議では、相続人全員が合意すれば、どのように財産を分けようが自由です。しかし、不在者財産管理人が遺産分割協議に入った場合、管理人は不在者のために財産を管理する義務を負いますので、好き勝手に分割することはできません。ケース・バイ・ケースですが、不在者の取得割合が法定相続分より少ない遺産分割協議は、家庭裁判所が認めないと考えた方が良いでしょう。

●不在者財産管理人の職務はずっと続く

 不在者財産管理人の職務は、不在者の財産を管理するだけでなく、財産目録などを作成して家庭裁判所へ定期的に報告する義務があります。遺産分割協議が終わった後も、職務が終了するまで不在者財産管理人の仕事はずっと続きます。

 不在者財産管理人の職務が終了するのは、次のいずれかがあったときです。


①不在者が見つかったとき
→現れた不在者に管理財産を引き渡して終了となります。

②不在者の死亡が確認されたとき
→相続人に管理財産を引き渡して終了となります。

③不在者に失踪宣告がされたとき
→失踪宣告されると法的に死亡したことになりますので、②と同じです。

④管理財産がなくなったとき
→不在者の債務や財産管理の報酬・費用を支払って、財産がなくなったときに終了します。

⑤不在者が財産管理人を選任したとき
→不在者が財産管理人を選任することは考えにくいのですが、理論的には有り得ます。

●不在者財産管理人の報酬がかかる

 これもケース・バイ・ケースですが、申し立て時の予納金が数十万円、報酬が月額数万円かかることが多いようです。上記の終了事由があるまで、報酬がかかり続けることになりますので、申し立てをする際にはコストバランスも検討すべきでしょう。

不在者財産管理人の権限

 不在者財産管理人の権限には、「保存行為」「利用行為」「改良行為」の三つがあると言われています。

・保存行為:財産を維持するのに必要な行為です。例えば、家屋を修繕する契約などです。
・利用行為:財産の収益を図る行為です。預金で利息を得る、物を賃貸するなどです。
・改良行為:財産の価値を増加する行為です。建物にエアコンを付ける契約などです。

 これらに対して、「処分行為」(財産の形質を変化させる行為。物の売却など)は権限外だとされています。たとえば、管理財産に不動産があるものの、建物が老朽化して賃貸できず、固定資産税が支払えないので不動産を売却したい場合がこれに該当します。

 このような時には「権限外行為許可」を家庭裁判所に申し立てします。

 私が信託銀行で相続手続きをしている時に、あやうく権限外行為となりそうなことがありました。不在者財産管理人が入って遺産分割協議をした後に、その分割協議書に従って相続手続きをしていた時に、預貯金や投資信託を解約して配分しようとしました。

 ところが、同じ解約でも、投資信託は有価証券ですから、この解約・換金は「処分行為」となります。感覚的には預貯金と変わらないのですが、家庭裁判所へ「権限外行為許可」の申し立てが必要です。もう少しで申し立てせずに解約するところでしたが、直前で気づきました。

 このように、不在者財産管理人の制度を利用した場合には、注意すべき点がいろいろとあります。音信不通・所在不明の相続人がいる場合は、専門家に相談し、所在の調査を徹底的に行った上で、どうしても他に手段がない場合に申し立てを検討すると良いでしょう。

 

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  • 齋藤弘道
  • 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

    遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

    信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

  • この連載について / 今すぐできる終活講座

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