<連載> ワクチン接種Q&A

ノババックス製ワクチン、3回目接種の効果は? 海外での使用実績は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(20)初の「組み換えたんぱく」型<下> その仕組み・なぜ必要か

2022.04.27

 米ノババックス社製の新型コロナウイルスワクチンは、5月下旬にも全国で接種が始まる見通しです。既存のワクチンと異なる「組み換えたんぱく」のワクチンは、どのような仕組みなのか。海外での使用実績は。なぜ4種類目のワクチンが必要なのか。Q&Aにまとめました。

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ワクチンの瓶をもつ手

【質問一覧 ノババックス製ワクチンとは・下】

  • (1)ノババックス社製ワクチンの特徴は?
  • (2)ファイザー社製、モデルナ社製などとの違いは?
  • (3)新型コロナの予防効果は、どの程度?
  • (4)副反応は? 発熱頻度が低いって本当?
  • (5)他のワクチンを打てない人でも打てる?

◆3回目接種にノババックス製で「一定の効果あり」

Q6: 3回目にいきなり打っても大丈夫なの?

A:厚労省はこれまで、3回目接種には、種類は問わずmRNAワクチンを打つ、としてきました。海外でも、3回目にはmRNAワクチンを推奨している国が多いです。mRNAワクチンの方が、中和抗体産生など免疫を上げる効果が高いとみられるからです。しかし、厚労省はノババックス社製ワクチンの承認に際し、海外のデータから、1、2回目は異なる種類のワクチンを打っている人が3回目でノババックス社製を打っても一定の効果があり、副反応も許容される範囲内なので、3回目接種にノババックス社製を接種するのも可能だとしています。

 1、2回目と異なる種類のワクチンを3回目に打つことを「交互接種」と呼びます。ノババックス社製ワクチンを3回目に打つ、交互接種についての臨床試験や研究はまだわずかしかありません。厚労省が根拠にしているのは、英サウスハンプトン大学などの医師らでつくる、ブースター(追加)接種に関する研究チームが2021年6月に実施し、12月に英医学誌「ランセット」に発表した臨床試験の結果です。

 1、2回目にファイザー社製かアストラゼネカ社製のワクチンを打った約2900人を約100人ずつのグループに分け、3回目接種として、ノババックスやファイザー、アストラゼネカ、モデルナなど7種類のワクチンや、比較対照とするために髄膜炎菌ワクチンを打ちました。そして、免疫反応や副反応を調べました。

 ファイザー社製ワクチンを最初の2回打った人に対し、ノババックス社製ワクチンを1回分全量接種した人の接種後28日目のデルタ株に対する中和抗体価は、比較対照として髄膜炎菌ワクチンを打った人の4.94倍、ノババックス社製ワクチン半量を接種した人は3.27倍と、一定の効果があることがわかりました。

 ただし、同じ臨床試験で、ファイザー社製2回の後に、交互接種でモデルナ社製を打った人の中和抗体価は対照群の12.58倍と、ノババックス社製ワクチンよりかなり高い値でした。また、3回目も引き続きファイザー社製を打った人の中和抗体価も半量接種で7.39倍と、ノババックス社製より高い値でした。

 ノババックス社製ワクチンをファイザー社製ワクチンの後に打った場合の副反応の発生頻度は、全量接種でも半量接種でも、発熱や倦怠感、痛みなど全身や局所の反応を含めてすべて、重い副反応は5%未満でした。一方、モデルナ社製ワクチンの場合、70歳未満に限ってみると、5%を超える人が比較的重症の気分の悪さや痛み、倦怠感などを経験していました。

3回目接種後の中和抗体価

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◆欧州連合は21年末に使用認める 米国は審議中

Q7: 海外では、どんな形で使用されていますか?

A: 欧州連合(EU)が2021年12月20日、世界で初めて使用を認めました。次いで、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストにも採用されました。英国やドイツ、カナダ、フランスは、18歳以上に対し、1、2回目の接種としての使用を認めました。米国では22年4月26日現在、緊急使用を承認するかどうか審議中です。3回目接種として使用した実績のある国はありません。インドでは、同社とライセンス契約を結んだ血清学研究所が作るワクチンに対し、12歳以上に緊急使用が認められています。

 ノババックス社にはもともと自前のワクチン生産工場が無く、他の企業に委託生産していました。生産に遅れが生じて臨床試験に影響が出るなどして、米国内で緊急使用の承認申請を出すのが2022年1月末にずれこみました。米国以外でもまだあまり使われていません。

 一方、日本国内では、武田薬品工業がノババックス社と日本国内での製造・販売についてライセンス契約を結び、政府の補助金も受け、承認前から国内に生産拠点を準備していました。

ノババックス製ワクチンの海外での接種方針

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◆5月下旬から発送開始の予定、対象は18歳以上

Q8: いつごろから打てるのですか? 接種の対象者は? 選べますか?

A: 5月23日の週から発送が始まる予定です。対象は18歳以上です。厚労省の「コロナワクチンナビ」では、各接種会場でどの種類のワクチンを接種しているか書いてあります。接種会場を選ぶことで、接種するワクチンの種類を選ぶことができます。

※コロナワクチンナビ:https://v-sys.mhlw.go.jp/

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◆人工的にたんぱく質生産、子宮頸がんワクチンなどでも

Q9: 「組み換えたんぱくワクチン」って、どんな仕組み?

A:主成分に、病原体のたんぱく質とよく似た、人工的に作ったたんぱく質を使ったワクチンです。たんぱく質を作る際に、遺伝子組み換え技術を使うので「組み換えたんぱく」と呼ばれます。

 ノババックス社製のワクチン生産過程では、バキュロウイルスという昆虫にだけ感染するウイルスに、遺伝子組み換え技術で新型コロナウイルスのSたんぱく質の遺伝子を組み込み、それを昆虫(ガの1種)の細胞に感染させ、細胞を培養します。すると、昆虫の細胞がSたんぱく質をたくさん作ります。培養液からSたんぱく質だけを精製し、ナノ粒子状にしたものがワクチンの主成分です。

 組み換えたんぱくワクチンには、B型肝炎ワクチンや、ヒトパピローマウイルス(HPV、子宮頸がん)ワクチン、帯状疱疹ワクチンなどがあります。ただし、組み換えたんぱく質を作る方法は様々です。B型肝炎ワクチンの「ビームゲン」(KMバイオロジクス)は酵母を使ってたんぱく質を製造しています。

 HPVワクチンのうち「サーバリックス」(グラクソ・スミスクライン社)はバキュロウイルスと昆虫の細胞を使っていますが、使っている昆虫の細胞の種類が違うほか、主成分として使うウイルスのたんぱく質の処理の仕方など、相違点は多数あります。また、塩野義製薬が開発中の新型コロナウイルスワクチンもバキュロウイルスと昆虫細胞を使っていますが、やはりノババックス社の作り方とは異なります。

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ノババックス製ワクチンの製造プロセス

◆選択肢増で変異に備え 国内生産で安定供給

Q10: そもそも、なぜ4種類目のワクチンが必要なのですか?

A: 厚労省や専門家は、多様なワクチンが接種可能な状態になっている方が、副反応などを考慮した際に選択肢が増えるだけでなく、今後、様々な変異株が登場した際の選択肢も増えるので望ましいとしています。また、政府は、ノババックス社製は国内で生産できるため、2021年当初のように海外で生産されたワクチンに輸出制限が課された場合でも一定量を確保できるという意味からも意義があるとしています。先行きの不透明なパンデミックなので、仕方ない部分はありますが、ワクチンが国内ではだぶつく可能性もあります。

 特定のワクチンの成分にアレルギーがある人は、その成分の入っていないワクチンを選ぶことができます。また、mRNAワクチン、とくにモデルナ社製のワクチンは、全体的な頻度は低いもののワクチンを打たない場合に比べると、若い男性で心筋・心膜炎の発生頻度が上がるとされています。そのリスクを避けたい人は、別の種類のワクチンを打つのも一つの選択肢かもしれません。副反応を考慮して打つワクチンの種類を選ぶ際には、自分で決めずに、医師ら医療従事者に相談してから選ぶようにして下さい。

 後藤茂之厚労相は、ノババックス社のワクチンを承認した4月19日の閣議後会見で、承認の意義を「海外の輸出規制の可能性に備えて、ワクチン供給の安定性を確保する」と強調しました。政府はノババックス社から今後1年間で1億5000万回分の供給を受ける契約を結んでいます。ただ、現時点で国民の80%は2回目までのワクチン接種を終えています。政府はファイザー社やモデルナ社と3回目接種に必要な量の供給を受ける契約もすでに結んでいます。3回目の接種率があまり上がらない中、国内ではワクチンがだぶつき、使う前に期限がきてしまうものが出てくる可能性もあります。世界には、まだ2回目まで接種できていない人も大勢いる点を考慮し、有効な使い方を検討する必要がありそうです。

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◆複数国内メーカーが臨床試験中、承認申請まで半年以上か

Q11:ほかに申請中のワクチンはありますか?

A:申請中のワクチンはありません。複数の国内メーカーが、最終段階の臨床試験を実施中です。早ければ、年内に承認申請する企業もあるかもしれません。海外では、新型コロナウイルスとインフルエンザを同時に防ぐワクチンの開発が始まっています。

 国内では、組み換えたんぱくワクチンや、ウイルスの全粒子を不活化したワクチン、mRNAワクチンなどが開発されつつあります。承認申請までにはまだ半年以上かかる見通しです。

国内メーカーの新型コロナワクチン開発状況

 海外では、新型コロナウイルスだけでなく、同じ呼吸器感染症であるインフルエンザも同時に予防できるワクチンの開発をしている企業がノババックス社をはじめ、複数あります。ノババックス社は4月20日、最初の段階の臨床試験で、両者を組み合わせたワクチンの安全性を確認した、と公表しました。年内には、次の段階の臨床試験に進む予定だそうです。

新型コロナとインフルエンザを同時予防するワクチンのイメージ

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 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議:メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。

※Reライフプロジェクトでは、読者会議メンバーの皆さんを対象に「ポストコロナ(コロナ後)」の健康管理に関するアンケートを実施中です。ぜひ、ご参加ください。
「ポストコロナ」の健康管理、どうする? 何に気をつけたいですか?

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの4回目接種が本格化しています。感染・重症化予防の有効性は? 副反応への対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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