健康である限り働き続けるか、それとも悠々自適の日々を過ごすか。読者会議のメンバーに定年後の働き方について聞いたところ、さまざまな意見が寄せられました。人生観に直結する問題であり、簡単には割り切れない実態が浮き彫りになりました。

「社会とのつながりを持ち続けたい」
定年後にどのような形で働いているか(定年前の人にはどのような形を想定しているか)を聞いたところ、6割以上の人が何らかの形で働いている(働きたい)ことがわかりました。定年前と「同じ会社で働いている」(25.1%)が、「違う会社で働いている」(22.8%)を上回り、「フリーランス・自営業」(16.6%)も一定の割合を占めています。

働いている人に、その理由を聞きました。「社会とのつながりを持ち続けたい」(60.4%)が、「自分や家族の今の生活資金のため」(57.6%)をわずかに上回りました。ただ、「趣味や娯楽を楽しむ資金のため」と「自分や家族の将来の生活資金のため」(ともに43.1%)が続いており、やはり「おカネ」と切り離して考えるのは難しいことがうかがえます。

「年収は定年前の5割」最も多く
定年後も働いている人は、どのくらいの年収を得ているのでしょうか。いまの日本企業の実態を反映してか、「定年前の5割程度」(36.4%)が最も多い結果となりました。「定年前の1割程度、あるいはそれ以下」(13.1%)という厳しい環境にある人が1割あまりいる一方、「定年前と同水準」(9.9%)や「定年前より増えた(増える)」(1.8%)という恵まれた人も同程度いるのが目を引きます。

働くうえでの不安も聞きました。上位に目立ったのが「体力の衰え」(62.9%)、「記憶力や学習能力の衰え」(47.7%)、「気力の衰え」(31.4%)という加齢に伴う不安でした。シニア世代ならば避けられないと思える一方、「不安・悩みはない」(7.4%)という人も少数ながらいました。

定年後に働かない人たちは、どういう理由からなのでしょう。「定年後も働くという発想・知識がない」(37.0%)という人が最も多かった反面、「自分の健康・体力面に不安」(31.5%)や「労働時間など勤務体系で、納得できる仕事が無い」(15.7%)、「培ってきた経験やスキルを生かせる仕事が無い」(11.1%)など、条件や環境さえととのえば働きたいと考えている人も多いことがうかがえます。

雇用延長に賛成6割 国施策へ憤りも
高齢者雇用安定法の改正により、2021年4月から企業には65歳までの雇用確保の義務に加え、70歳までの就業確保の努力義務が追加されました。この雇用延長について賛否を聞いたところ、62.4%が賛成と答えました。

その理由を聞いたところ、同じ賛成でも積極派と消極派に分かれました。神奈川県の50代男性は「高度成長時代はとっくに終わり、政府もGDPやインフレ率の目標が長年達成できない。ただでさえ経済的に厳しくなっているのだから働けるまで働きたいし、健康寿命も延びており生きがいを持ち続けるためには働くのが最も重要」と肯定的にとらえています。一方、消極的な賛成としては「年金が足りない。少しでも不足分をカバーした方がよい」(神奈川県70代男性)、「労働人口の維持のため、個人の生活維持のため必要」(兵庫県70代男性)といった声が寄せられました。
これに対し、反対派からは政府の施策に対する厳しい声が目立ちました。神奈川県の50代男性は「雇用延長は年金財源がないという政府の失策によるもので、労働者側の望んでいることではない。体力が衰えつつある60歳代に働かせるのはおかしい。国家による詐欺だと思う」。東京都の60代男性も「国の年金制度の失敗を民間企業に転嫁しているようで、承服できない。 そのような制度を作らなくても、有用な人材は企業側が自主的に残すと思う(待遇は別として)」といいます。
「わからない」と答えた人の声は複雑です。東京都の60代女性は「働きたい人に雇用機会を提供することは大事だが、能力の衰えた人がいると周囲の迷惑にもなる。 政治家が典型だが、高齢者は頑固で新しいことに挑戦できず、老害でしかないという場合もあり、何とも言えない」。また、北海道の60代女性は「雇用延長を希望する人にとってはいい体制だとは思いますが、若い人たちにとっては、偉そうな人が『給与が下がった』などの愚痴を言いながら職場でグタグタしているのは働く環境として好ましくないと思います。若い人たちがきちんと評価されて、仕事に見合った給与をもらえるのであればよいのですが、今はそうなっていない職場の方が多いのではないでしょうか」と見ています。
「生きがいになる」働き方求める
それでは、何歳まで働くことが理想なのでしょうか。「働き続けられればいつまでも働きたい」(29.4%)が最も多く、「70歳まで」(23.2%)、「65歳まで」(20.7%)と、年金制度の区切りとなる年齢が続きました。

定年後にふさわしい働き方を聞いたところ、トップは「生きがいにつながる」(48.3%)。どんなときに仕事のやりがいを感じるかについては、「自分の仕事を成し遂げたとき」(54.2%)が最も多く、たくさんの人が充実感を求めて働いていることがわかります。


寿命が延びれば経済的リスクも
最後に、「人生100年時代の働き方について、率直なご意見をお聞かせください」とお願いしたところ、「働けるのに働かないのって、人間として失格ではないかな」(東京都60代男性)という声から「働くのが人生なのでしょうか?!」(大阪府60代女性)という声まで、実に様々な意見が寄せられました。
まず目立ったのは、「人生100年」という言葉に対する違和感です。埼玉県の60代女性は「人生100年とかマスコミにあおられて、その気になって年金受給を遅らせて、その前に死ぬという未来が手に取るようにわかる。健康年齢をみんな覚えておいたほうがいい」。京都府の50代女性も「人生100年、正直ゾッとします。いつまで働かなきゃいけないのか? 健康でいられたら良いのですが、身体を壊さない生き方をしたいです。退職後はのんびり海外旅行を長期間楽しめる、そんな国になってほしいです」といいます。
こうした声の背景にあるのは、寿命が延びればその分、おカネの不安も大きくなるという思いのようです。神奈川県の60代男性は「大変な時代が来たものだ。健康寿命が長くなるのはいいが、経済寿命(年金など老後資金)は安心できるほど長くなっていないと思うので」と指摘。奈良県の60代女性も「働きたい人が働くことを選べる環境は大事だと思うが、経済的な事情から働かなければならない状況が、多くの人の現状なのではないか。経済的にはある程度保障されているうえで、『稼ぎ』のためだけではない『働き方』ができるような社会であってほしい」。
神奈川県の50代女性の以下の意見は、「定年」をどう捉えるべきかという点で、ひとつのヒントになりそうです。「55歳で長年正社員で勤めた会社を退職して、現在は派遣社員(無期雇用)で働いている。収入は5割ほどになったが、毎日の生活時間に余裕ができ、体力的にもとても楽になった。 収入が減った分、できるだけ長く働けたらいいと思っている」。
◇
調査は読者会議メンバーを対象にReライフプロジェクトのwebサイト「Reライフ.net」で2022年3月18日~4月21日に実施。有効回答は439人でした。
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