Reライフ文学賞最優秀賞の鷹栖律子さん「記録に残したい執念がエネルギーに」

読者賞の杉村眞知子さん「自分の人生の『Reスタート』になった」

2022.05.25

 3月にオンライン配信された朝日新聞Reライフフェスティバル2022春で、第1回Reライフ文学賞の授賞式が開かれました。全国から2251件の応募があり、里子を迎え入れて育てた20年間の家族愛をつづった、鷹栖律子さん(栃木県)の「ハルジオンの花」が長編部門の最優秀賞に選ばれました。

 Reライフ読者会議メンバーが選考した「Reライフ読者賞」には、東日本大震災で故郷から両親を移住させようと奮闘する様子を描いた杉村眞知子さん(神奈川県)の「Reスタート 寄りそう日々」が選ばれました。また、惜しくも次点となった室土猩(むろと・しょう)さん(東京都)の「春を待つ手紙」には、「Reライフ読者特別賞」が贈られることが決まりました。

 授賞式に出席した鷹栖さん、杉村さんの受賞の言葉の抄録を掲載します。

Reライフ文学賞ロゴ

<目次>

長編部門最優秀賞「ハルジオンの花」 鷹栖律子さんの受賞あいさつ

Reライフ文学賞の第一回受賞
最優秀賞に選ばれた鷹栖律子さん

 ご紹介いただきました鷹栖律子でございます。

 まず皆さん最初にお願いがございます。私はパーキンソン病を患っております。パーキンソン病の病状として声が出ない。話がよくできないということで、皆様方に声が届きますか不安です。どうぞご理解いただいてちょっとお耳を拝借させていただきたいと思います。

 このコロナ禍の2年間、私は病魔に襲われて、がんで大腸摘出、脳梗塞(こうそく)、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)による圧迫骨折など難しい病気で苦しむばかりでした。作品の中のコウヘイという子を育ててまいりましたが、闘病のつらさのなかで、とにかくこの子と暮らした20年間を書いておかなければ私の役目は終わらないのではないか、という思いが、強く自分の中で押し寄せてきました。その時から、寝返りもできない、足先すらもベッドから離れない状態でパソコンを顔の横に置いてもらいまして、画面に傾斜をつけてちょっと仰向けで画面を見られるようにして、指1本で文字をさぐりながら原稿を書いていきました。

 彼は本来なら18歳で里親の家庭を出なければならないのですが、看護師になりたいという強い希望がありましたので、18歳を過ぎてからも大学に行かせました。多くの人のお世話になって今日があるので、「これからは看護師として、病める人のために働く仕事がしたい」という彼の強い執念があり、かなえさせてやりたいという思いで、やってまいりました。

 もしかしたら今晩寝ると明日は明けない、明日はもう眠ったままになっちゃう、という中で主治医の先生に、「あまりの苦しさにもうこれ以上は生きられないかもしれないから必要のない治療は施さなくていいです」ということをお願いしましたが、主治医の先生は「もう病気とか加療、治療の域を超えてあなたが今考えていることは哲学なのだと、だから私どもは医療を施すことをやめるわけにはいかない」と言われました。今日、明日を生きなければならないのはなんとしてもこの20年の彼との生活を文字に起こしておく。記録に残したいという執念が私の中でエネルギーに変わったのだと思います。

 ひたすらもう間に合わないかもしれないと思いながら、書きつづった作品です。それが今日こんな晴れの日に私を参加させてくださった。本来なら家から高速道路で2時間かけてくるほどの体力も気力もないはずですが、このコウヘイのためにどんなことがあっても、この日を迎えたかったというのが正直な気持ちでございます。

 彼は今、国試(国家試験)の発表を待っていますが、大学病院で看護助手として働いています。晴れの姿をおばあちゃんに見てほしいから自分は頑張る、「おばあちゃんが今日この賞をいただいたということは、ぼくにも幸運が巡ってくるよね」ということで仕事に行っています。そんな中で今日のこの瞬間を迎えられましたことを本当にうれしく思います。まだまだ未熟な作品を賞にあげてくださって次への希望につなげてくださった先生方、それから多くの皆様方に感謝をいたしまして、今日の日を次のステップのエネルギーにしたいと思います。今日はありがとうございました。

(2022年3月5日、授賞式で)

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Reライフ読者賞「Reスタート 寄りそう日々」 杉村眞知子さんの受賞あいさつ

杉村眞知子さん
「Reライフ読者賞」に選ばれた杉村眞知子さん=いずれも東京都内、伊藤菜々子撮影

 この度、拙作『Reスタート寄りそう日々』が「第1回朝日新聞Reライフ文学賞Reライフ読者賞」を受賞致しました。2251点の中から最優秀賞1人、読者賞1人の選出でしたが、そこに選ばれたことは、実に幸運なことだったと感謝しております。

 東日本大震災に見舞われた被災地から連れてきた両親が亡くなって3年。その間、時が経つに連れて、大変だったことも楽しかったことも、細かなことを忘れていくので、まとめて記録しておきたいと思っていました。
 書き始めていくうちにどんどん思い出し、本当に多くの方々にお世話になったことに改めて気づき、感謝の念と共に様々な感慨にふけったり、記録しておけば、詳しく語ってこなかった子供たちも、いつか読んでくれるかもしれないと思ったり。
 書くこと自体が楽しくなっていきました。そして書き終えたことで、自分の人生の再起動(Reスタート)になったことにも気づきました。これから晩年を過ごす自分の区切りとしても、書いて良かったと実感しました。

 この受賞を、自分のことのように喜んでくれた、被災地から関東に避難したままずっと暮らしている叔母が、「本当にうれしい! でもまだ読めないと思う。ごめんね」と言っていました。
 叔母のその言葉で、まだまだ心が取り残された人々がたくさんいるということを改めて知り、再び悲しみが押し寄せてきました。
 今年で11回目の3.11を迎えます。
 被災者ではない私とて、3.11を迎えて涙がこぼれるのはここ数年です。それ以前は、心がこわ張りすぎて涙することさえ出来ませんでした。

 それでも、いつか叔母がこれを読んでくれることを願い、またこの作品が、災害に関わらず様々な痛みや重荷を抱えている人々に、寄りそうものになれば、これ以上の喜びはありません。
 今回は誠にありがとうございました。

(2022年3月5日寄稿)

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 Reライフ読者賞の「Reスタート 寄りそう日々」は5月25日から、Reライフ読者特別賞の「春を待つ手紙」は5月30日から、Reライフ.netでそれぞれ公開します。最優秀賞の「ハルジオンの花」は、文芸社から年内に書籍として出版される予定です。

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