療養型病院の費用について解説! 高額な支払いが発生した時の対処方法
人生100年時代を生きるキーワード:療養型病院

「療養型病院ってどんなところ? 」
「入院が続くことで費用が心配」
「療養費を抑える制度はないの? 」
と悩んでいませんか?
療養型病院は、継続的に治療が必要となった方が利用する病院で「療養病床」とも呼ばれています。
継続的な治療が必要なため一般的な介護施設の利用が難しく、自宅での生活が困難な方には選択肢のひとつとなるでしょう。
療養型病院の費用目安は以下の通りです。
【療養型病院(医療療養病床)の費用と特徴まとめ】
● 事前費用:0円
● 入院費用の目安:月額10~20万円(食費込み)
● 保険:医療保険の適用が可能
● 自己負担となるもの:おむつ・衣服・タオル代・テレビ代など
今回は、介護歴18年、現役介護相談員をしている経験から、療養型病院の費用について解説していきます。また、費用が高額になったときの対処方法についても紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
1.療養型病院(医療療養病床)とは?
療養型病院とは、医療療養病床を指します。以下に療養型病院の特徴を紹介していますので、確認していきましょう。
(1)慢性期の患者の治療を中心とした施設
療養型病院では、主に治療が必要な方が入院する病院です。
医療療養病床は急性期を終え、慢性期の方を中心に生活支援やリハビリテーションなどのサービスを提供しています。
①対象者
利用対象となる方は、慢性期の患者です。2006年より医療区分が導入され、療養型病院は区分2、3の人が優先的に受け入れられています。医療区分は病状や必要な医療ケアによって異なります。
疾患や状態 | 医療ケア | |
医療区分3 | ● スモン ● 医師・看護師が常に管理する必要な状態 |
● 中心静脈 ● 24時間点滴 ● 人工呼吸器 ● 感染隔離室での管理 ● 酸素療法 など |
医療区分2 | ● 筋ジストロフィー ● 多発性硬化症 ● パーキンソン病関連疾患 ● 肺気腫 ● 神経難病以外の難病 ● 多発性硬化症 ● 褥瘡(じょくそう) など |
● 透析 ● 喀痰(かくたん)吸引 ● 血糖チェック ● 気管切開 ● 発熱または嘔吐(おうと)を伴う場合の経管栄養 ● 手術創のケア など |
医療区分1 | 上記に該当しない方 |
医療区分2、3の方が優先されるため、医療区分1の方の入院が難しくなりました。
②療養型病院の設備や人員の体制
一般の病院と比べ、各スペースにゆとりのある設計の病院が多いです。病院によって異なりますが、病室は複数人で利用する大部屋と1人で利用できる個室があります。個室にトイレやシャワー室が設置されている病院もあります。
一般的にはトイレや浴室は共同で利用する場合が多いでしょう。病院によって入浴方法や回数は様々です。入浴方法には、一般的な家庭にある個浴の浴槽や寝たきりで入れるストレッチャー浴などがあります。また、病室にはベッドとサイドテーブル、チェストや衣装棚が備え付けられているところが多い傾向です。
人員に関して、一般療養病棟では「患者48人に対して、医師が1名」「患者4人に対して、看護師1名」「看護補助者が1名」と基準が定められています。介護士については定めはありません。
③他の介護施設とのちがい
療養型病院と、高齢になると入居を検討する方が多い特別養護老人ホームの費用やサービス内容を比較してみました。
療養型病院 | 特別養護老人ホーム | |
費用 | 10~20万円/月 | 10~20万円/月 |
対象者 | 慢性期の患者 | 要介護認定3以上の高齢者 |
人員配置 | 4:1 | 3:1 |
医療ケア | 設備が整っている スタッフが充実 |
検査や治療の設備がない 夜間帯に看護師がいないことが多い |
利用期間 | 3~6カ月 | 終身まで可能な場合が多い |
適用保険 | 医療保険 | 介護保険 |
療養型病院と特別養護老人ホームでは、目的が大きく違います。療養型病院は、急性期病院と比べると、介護ニーズが高い方が入院する病院です。医療ケアが必要な場合、特別養護老人ホームでは対応が困難になるので、入居できない場合が多いでしょう。
(2)療養型病院のメリット・デメリット
ここからは、療養型病院のメリット・デメリットについてみていきましょう。
メリット
● 継続的な医療ケアが必要でも利用可能
● 介護施設では対応が困難な方でも利用可能
● 有料老人ホームや一般病院よりも安価な費用で利用可能
● 介護・看護・リハビリなど様々な職種が常駐
医療ケアと介護の両方を担ってくれるところが大きなポイントといえます。
デメリット
● 実費(医療保険外)費用が高額になりやすい
● 継続して利用ができず、転院や退院がある
費用が介護施設よりも高額になる場合があり、長期間の利用が難しい点があげられます。費用の目安は次で紹介します。
2.療養型病院の費用の目安は? ケースごとに解説
療養型病院は、医療保険が適用されます。費用の目安は以下の通りです。
費用の目安(1カ月あたり) | |||
医療区分Ⅰ | 医療区分Ⅱ | 医療区分Ⅲ | |
入院費 | 24,450~29,040円 | 36,960円~42,420円 | 44,130円~54,390円 |
食費 | 9,000円~41,400円 ※所得により変動 |
||
居住費 | 0円~11,100円 ※所得により変動 |
||
その他自己負担費用 | 15,000円~50,000円 | ||
計 | 48,450~131,540円 | 60,960~144,920円 | 68,130~156,890円 |
入院費は個人の治療内容やサービスによって異なります。また、自己負担費用も利用状況によって大きく異なるため、上記の金額はあくまでも参考値として確認してください。
(1)入院費
入院費は利用される方のADL(日常生活自立度)によって区分され変動します。例えば「ベッド上でどれだけ動けるのか」「食事摂取できるか」「トイレが使用できるか」などから評価点を算出し、区分されます。
区分 | 医療区分Ⅰ | 医療区分Ⅱ | 医療区分Ⅲ |
ADL区分Ⅰ | 815円 | 1,232円 | 1,471円 |
ADL区分Ⅱ | 920円 | 1,386円 | 1,758円 |
ADL区分Ⅲ | 968円 | 1,414円 | 1,813円 |
この医療点数は、あくまでも基本入院費なので、個別に必要なケアを受けた分の点数は加算されていきます。例えば、特別食や褥瘡対策への加算が該当します。
(2)食費
食費は所得に応じた料金設定があり、1食あたり100〜460円かかります。
区分 | 医療区分Ⅰ | 医療区分Ⅱ・Ⅲ | 難病指定 |
課税世帯 | 460円 | 460円 | 260円 |
低所得者Ⅱ | 210円 | ||
低所得者Ⅰ | 100円または130円 |
入院期間が90日を超えた場合は費用が安くなる区分もありますが、その分病院側の利益が出ない仕組みのため、退院や転居を提案される場合もあります。
(3)居住費
居住費は基本的に安く設定されているため、費用目安は0〜370円です。
区分 | 医療区分Ⅰ | 医療区分Ⅱ・Ⅲ | 難病指定 |
課税世帯 | 370円 | 370円 | 0円 |
低所得者Ⅱ | 370円 | ||
低所得者Ⅰ | 370円 |
食費同様に所得に応じた料金設定があり、難病指定を受けている方は無料になります。個室を利用する場合は別途個室代が必要となることが多いです。
(4)その他自己負担となる費用
以下、紹介する費用は医療保険が適用されないため全額自費負担となります。
①おむつ代 約30,000円/月
おむつを使用する場合、尿とりパッドやリハビリパンツなども含めると1日1,000円と仮定すると約30,000円必要になるでしょう。
②病衣代 約10,000円~15,000円/月
病衣を必要としている病院と、必要ない病院がありますが、病衣をレンタルする場合10,000円~15,000円くらいが相場になります。
③個室代 約30,000円/月
個室を希望した場合は、特別に室料がかかることがあります。病院によって、それぞれ室料は異なるため確認しておくとよいでしょう。個室代の相場は1,000円~3,000円/日です。
④テレビなどの施設利用料 約5,000〜10,000円/月
病室にテレビがついている場合は、テレビカードや電気代として請求する病院もあります。使用頻度によりますが、月々5,000円~10,000円程度でしょう。
3.療養型病院の費用が払えない…そんなときの制度
受ける医療ケアやサービスによってかかる費用が大きく異なります。そのため、支払いが困難になる場合もあるでしょう。そんなときは以下の制度を検討してみましょう。
(1)高額療養費制度
①概要
高額療養費制度とは、医療費が高額になった場合に生活が困窮してしまわないように、1カ月で支払う医療費の上限額を設ける制度です。年齢や収入によって区分されます。
高額療養費制度では、設定された医療費の上限を超えた場合、差額が払い戻されます。医療保険サービスのみ適用されるため、食費やオムツ代などの自己負担分は含まれません。
健康保険加入者が70歳以上の場合 | |||
区分 | 1月の上限額(世帯) | ||
外来 (個人単位) |
外来+入院 (世帯単位) |
||
現役並み所得 | 年収約1,160万円以上 | 252,600円+(医療費-842,000)×1% | |
年収約770万円以上約1159万円未満 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% | ||
年収約370万円以上約769万円未満 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% | ||
一般 | 年収156万円以上約369万円 | 18,000円 (年144,000円) |
57,600円 |
住民税非課税 | 区分Ⅱ 住民税非課税世帯 |
外来ごと 8,000円 |
24,600円 |
区分Ⅰ 住民税非課税世帯 ※年収80万円以下 |
15,000円 |
一つの病院で上限額を超えない場合でも、同月に支払った医療費があれば合算して申請が可能です。
②申請方法
自己負担額をすべて支払ったあとに保険者(保険証に記載あり)に「高額療養費支給申請書」を提出します。また、超過した支払いがあったことの通知が来る場合もあるので、通知内容に従い、申請を行いましょう。
通知を待つ場合、3~4カ月程対応が遅れる場合があります。
いったん、支払うことが難しい場合は、事前申請も可能です。事前に保険者に対して「限度額適用認定証」の発行手続きをおこないましょう。限度額適用認定証を病院に提示すると、超過分を支払いせずに済みます。
(2)高額療養貸付制度
①概要
医療費の自己負担が困難な場合は、高額療養貸付制度を利用しましょう。後日支給される高額療養費の8割相当を無利子で借りることができます。
高額療養費の払い戻しには、数カ月かかる場合があるため、払い戻し分の8~9割相当の貸し付けができます。無利子のため、安全に借りることが可能です。
②申請方法
申請先は保険証に記載があるので、確認しておくとよいでしょう。「限度額適用認定証」の発行手続きをおこないましょう。限度額適用認定証を病院に提示すると、超過分を支払いせずに済みます。
(3)高額療養費受領委任払い制度
①概要
すべての自治体ではないですが、保険者が病院に直接支払いをしてくれる制度です。
市町村区によって対応が変わりますので、お住まいの自治体に確認しておきましょう。
②申請方法
高額療養費受領委任払いは、国民健康保険に加入している場合に利用できます。発行している役所などに相談するとよいでしょう。
(4)病院によっては分割払いに応じてくれる場合も
病院によっては、分割払いが可能なケースもあります。まずは病院のソーシャルワーカーに相談してみるとよいでしょう。
4.療養型病院の相談はソーシャルワーカーへ
療養型病院は、慢性的な医療ケアと介護サービスを必要とする方には最適な施設です。比較的費用も安い傾向なのが特徴です。しかし、長期的に利用を目的とした施設ではないため、3〜6カ月程度で転院や退院となります。介護施設を利用したいけれど、医療ケアが必要で断られたという方には受け皿となる施設でしょう。ソーシャルワーカーやケアマネジャーと相談して、一度検討してみてはいかがでしょうか。
(介護支援相談員兼ライター・渡口将生)
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