<連載> 絶対知っておきたい! 病気のお金

70歳になると医療費負担はどう変わる? 「限度額適用認定証」取得を

ファイナンシャルプランナー深田晶恵さんが解説(2)

2022.06.29

 将来必要になるかもしれない医療費への備えについて、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんが解説する連載の2回目です。7月27日(水)午後には、深田さんを講師にお招きし、Reライフ読者会議サロン「絶対知りたい! Reライフ世代の病気のお金」を朝日新聞東京本社(東京・築地)で開催予定です。参加無料、定員20名。参加希望の方は、下記からご応募ください(読者会議メンバー限定)。募集は7月12日まで。

7/27(水)開催 Reライフ読者会議サロン「絶対知りたい! Reライフ世代の病気のお金」 応募はこちら(読者会議メンバー限定)

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高額療養費 70歳以上編

<目次>

医療費の自己負担、70歳以上は10月から1~3割へ

 前回は、「医療費が高額になったとき 頼りになる『高額療養費制度』とは? 」と題して、医療費には一定の限度額が設けられており、超過分は払い戻しを受けられるという話をしました。

 実は「高額療養費制度」は、「70歳」を境に限度額が異なります。前回は「70歳未満」について解説したので、今回は「70歳以上」の医療費負担について見てみましょう。

 まず窓口負担の割合は、70歳未満(未就学児を除く)は3割です。70歳になると次のように変わります。

◆70~74歳:原則2割(現役並み所得者は3割)
◆75歳以上:原則1割(現役並み所得者は3割)

 「現役並み所得者」とは、高所得者のこと。年金に加え、給与収入などもあり所得が高い人です。公的年金のみで暮らしている人は、「一般所得者」に該当します。70~74歳は2割負担、75歳以上になると加入する保険が「後期高齢者医療制度」に変わり、1割負担になります。

 ニュースを目にした人も多いと思いますが、75歳以上について今年10月から改正が実施されます。その内容は、現在は1割負担となっている人のうち一定の所得のある人を2割負担にするというものです。

 これにより75歳以上の全体の約20%が1割負担から2割負担にアップする見込みです。つまり、75歳以上の窓口負担は、2022年10月以降は1割、2割、3割負担の3パターンになります。複雑に感じるかもしれませんが、ご自身の負担割合は9月末ごろまでに送付される「後期高齢者医療被保険者証(いわゆる保険証)」に記載されているので、確認してみましょう。

高額療養費制度、70歳以上の限度額はいくら?

 所得に応じて1~3割の窓口負担をしても、その金額が一定額を超えると「高額療養費制度」の対象となり、超過分が払い戻されます。

 図1は70歳以上の「高額療養費制度」の自己負担限度額の一覧です。

T2)絶対知っておきたい! 病気のお金 第2回 図1
図1

 「70歳以上」の所得区分は現在6段階に分かれています。所得が多い「現役並み所得者」の限度額は「70歳未満」と同じです。高齢になっても「現役並み」に所得が高い人はそれなりに負担をしてくださいということなのでしょう。

 収入が公的年金のみであれば、「一般所得者」です。この区分の該当者が多いので、「70歳未満」と「70歳以上」で限度額を比較してみましょう。
 「70歳未満」の場合、「高額療養費制度」では一般所得者は「区分(ウ)」と「区分(エ)」に分かれています。

◆70歳未満
 区分(ウ):健保 月収28万~50万円/国保 所得210万~600万円
  月8万100円+α(金額ベースで計9万円前後)

 区分(エ):健保 月収26万円以下/国保 所得210万円以下
  月5万7600円

 ※「健保」は健康保険、「国保」は国民健康保険
 ※「月収」は社会保険料を計算する根拠の「標準報酬月額」のこと(各種手当込みの金額)
 ※「所得」は、収入から給与所得控除または公的年金等控除額を差し引いた金額

◆70歳以上
 外来:月1万8000円
 入院+外来:月5万7600円

 70歳になると限度額が下がり、負担軽減になることがわかります。特に、外来での限度額が月1万8000円なのは、ありがたいことですね。国民医療費の削減のため、できるだけ長い入院はさせずに、外来で治療をするのが国の方針です。外来での治療費が高額になったとき、「高額療養費制度」が助けてくれます。

 がんになると、手術の際には入院が必要なことが多いですが、1カ月を超える入院になることはまれです。
 外来で抗がん剤治療や放射線治療を受けた時の医療費は、1割負担でも数万円かかることがありますが、「高額療養費制度」により月1万8000円が上限となります。

「限度額適用認定証」をあらかじめ入手しましょう

 高齢期を迎えると、若い時よりも病院通いが増えます。突然、入院することもありえます。Reライフ世代があらかじめ準備しておくと安心できる「手続き」があります。

 それは、加入している健康保険から「限度額適用認定証」をとっておくことです。国民健康保険または後期高齢者医療保険に加入している年金生活者は、住んでいる自治体の窓口でとれます。勤務先の健康保険に入っている人は、保険者から取り寄せます。

 70歳以上の人は、保険証に1~3割の窓口負担が明記されていますが、「高額療養費」の限度額の記載はありません。「限度額適用認定証」という手のひらサイズの書類には、ご自身の限度額の適用区分が明記されています。

 入院する時や、抗がん剤治療など外来で高額な治療を受ける時に病院窓口にこの認定証を見せると、「高額療養費」の限度額だけの支払いで済むのです。

高額療養費 70歳以上編2

 具体例で見てみましょう。70~74歳の一般所得者(限度額は、入院と外来で月5万7600円、外来のみは月1万8000円)で、窓口負担が2割の人の例です。

【ケース①がんの手術を受けて3週間入院】

 10割分の医療費が100万円かかったとしましょう。窓口負担が2割の人は、20万円支払うことになります。退院後に役所で「高額療養費」の申請をすると、1カ月当たりの限度額である5万7600円を超過する14万2400円が申請により戻ってきます(食事代の自己負担は別途かかる)。

 一方、入院時に「限度額適用認定証」を病院に提示をすると、2割負担の金額(20万円)ではなく、限度額の5万7600円を支払えば済みます。

 限度額のみ支払えばいいのは家計においても助かりますし、退院後に「高額療養費」の払い戻し申請をしなくていいのもメリットです。

 「限度額適用認定証」を取得する際に、「高額療養費」の払い戻し分が振り込まれる銀行口座の登録をしておくと、より便利です。

【ケース②毎週1回の抗がん剤治療を受ける】

 抗がん剤治療にかかる医療費は、薬剤や投与頻度によりそれぞれ異なりますが、仮に2割負担で1回3万円かかるとします。

 毎週1回3万円を支払うと、月に4回で12万円の出費です。外来での限度額は1万8000円なので、「高額療養費」の申請をすると超過分は戻ってきます。

 ところが、病院で「限度額適用認定証」を提示しておくと、その月の初回治療日に外来限度額の1万8000円を支払うだけ。同月の2~4回目の治療日は医療費の支払いは発生しません。「えっ、ウソみたい」と思うかもしれませんが、本当です。

 また、超過分の払い戻し先の口座を登録しておくと、他の病院への通院や薬局での薬代との合算分が限度額を超過したとき、超過分が数カ月後に自動的に振り込まれます。

 「限度額適用認定証」の取得と、超過分の振込先の登録。この2つの手続きは元気なうちに済ませておくと安心ですね。

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<深田晶恵さんの記事>

連載(1)医療費が高額になったとき 頼りになる「高額療養費制度」とは?

  • 深田晶恵
  • 深田 晶恵(ふかた・あきえ)

    ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士) (株)生活設計塾クルー取締役

    1967年、北海道生まれ。外資系電機メーカー勤務を経て96年にFP資格を取得。現在は、特定の金融機関に属さない「生活設計塾クルー」のメンバーとして、個人向けのコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じてマネー情報を発信している。ダイヤモンドオンラインなどでマネーコラムを連載中。著書に『これからの生活どうなる? に備える 記入式 年金生活ビギナーのための家計練習帳』『かんたん年金家計ノート 2022』『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』など。

    深田晶恵さんのウェブサイトはこちら

  • この連載について / 絶対知っておきたい! 病気のお金

    教育費や住宅ローンには終わりがありますが、いつ、どんな病気をするかは誰にもわからず、治療が長期間続く場合もあります。計画が立てづらい医療費にどう備えるべきか。専門家の解説などを紹介します。

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