認知症による預金凍結トラブルに注意! リスクや対策方法を弁護士が解説

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2022.07.04
認知症による預金凍結トラブルに注意

 親が認知症になったら、預金凍結されてしまう可能性があります。介護や医療にかかる費用ばかりか生活費まで出せなくなり、家族に負担が及ぶケースが少なくありません。預金凍結に備えるには家族信託や任意後見制度の利用などが考えられます。認知症になって預金凍結されるリスクや対策方法を弁護士が解説します。

  • 藤本弁護士
  • 藤本広太

    川崎相続遺言法律事務所 弁護士

    中央大学卒業。神奈川県弁護士会川崎支部所属。所属する川崎相続遺言法律事務所は、相続遺言問題に非常に力を入れている。専門サイトを立ち上げ、家族信託や任意後見などの生前対策にも注力。
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認知症になったら預金凍結される

 現在の超高齢社会においては、認知症などによる判断能力の低下・喪失によって本人の資産を本人や家族が自由に動かせなくなる、いわゆる「資産凍結リスク」があります。

 たとえば、認知症の親名義の定期預金を解約したり、不動産を売却したりして介護資金などの費用を捻出したいと思っても、父親本人や母親本人の意思が確認できなければ、預金を解約することも不動産を売却することもできません。その場合、介護資金などの費用は家族が立て替えるしかありません。

凍結される預金口座の種類

 認知症が発覚した場合、銀行や信用金庫、ゆうちょ、JA、労働金庫などのすべての金融機関で預金が凍結される可能性があります。普通預金や定期預金など口座の種類も問いません。

預金凍結されるタイミング

 金融機関に本人が認知症にかかっていることを知られたときや本人が銀行に行って認知症と疑われる行動をとったときなどに預金凍結のリスクがあるでしょう。そして、金融機関からは、本人の財産保護の観点から、親族等に成年後見制度等の利用を促されるのが一般的です。

全銀協による新指針について

 全国銀行協会が、2021年2月18日に新指針を示しました。その指針によれば、本人の判断能力が低下・喪失していても、本人の医療費など、本人の利益に適合することが明らかな場合には、親族からの払い戻し(振込)の依頼に応じうることになっています。

 ただし、あくまでも指針であって、個別の金融機関が応じてくれるかどうかは明らかではありません。使途も限定されていますから、限界があるでしょう。資産凍結リスクに備え、本人が元気なうちから対策をとっておく必要性があることに変わりはありません。

認知症による預金凍結に備える方法

 上記の「資産凍結リスク」に備える具体的な方法を解説します。そのなかでも近年特に着目されているのは家族信託です。

家族信託

 家族信託とは、財産を持つ人が、自分の老後の生活や介護などの必要な資産の管理や財産の承継などの特定の目的のために、不動産や預金などを信頼できる家族や親族などに託し、管理・処分を任せる仕組みです。基本的な当事者は、下記の3名で、委託者と受託者との間で信託契約をします。一般的には、信託契約書の作成を弁護士や司法書士などの専門家に依頼し、公証役場で公正証書という形で契約をします。

家族信託の中で登場する委託者、受託者、受益者について

資金凍結リスクの対策となる理由

 受託者に託した財産(信託財産)は委託者の財産から独立した別の財産として、信託契約に定められた目的に従って、受託者が管理・処分することができます。具体的にいえば、金銭を信託財産とした場合、その金銭は信託口口座という専用の口座で受託者が管理することになり、本人の判断能力が低下・喪失したとしても同口座は凍結されません。

家族信託のデメリットや注意点

 家族信託を専門家の関与なくして行うのは困難です。そのため、専門家に依頼する手間や費用がかかることは想定しておかなければなりません。専門家によって費用が異なるため一概にはいえませんが、信託財産の1.2%~2%程度がかかります。

 また、成年後見や任意後見と違って裁判所や監督人による監督がありません。そのため、安心して財産を託せる家族や親族の存在が欠かせません。

任意後見制度

 任意後見制度とは、本人に十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を、公証人の作成する公正証書によって結んでおくものです。

 なお、契約をしたからといってすぐに効力が生じるわけではありません。契約の効力が発生するのは本人の判断能力が不十分な状態になってからです。

資金凍結リスクの対策となる理由

 本人の判断能力が不十分な状態になった場合でも、任意後見人に預金に関する事務の代理権が与えられていれば、任意後見人が本人に代わって預金を管理できます。

任意後見契約のデメリットや注意点

 任意後見契約の効力を発生させるには、本人などが任意後見監督人の選任を申し立て、家庭裁判所によって任意後見監督人(通常は弁護士や司法書士など)が選任されることが必要です。したがって、任意後見人は、任意後見監督人や裁判所の監督を受けることになります。任意後見人に対する報酬も発生します。

 そして、成年後見と同様、本人の財産は現状維持が原則で、本人にとって損害が生じうるような資産運用や相続税対策のための生前贈与・財産の組み換えなどを行うことは通常許されません。

生前贈与

 元気なうちに預金や不動産などの資産を家族などに贈与しておけば、それらの財産の凍結を避けることができます。しかし、贈与税の負担には注意が必要です。税理士にも相談をして、十分な調査をしたうえで実行すべきでしょう。

認知症で預金凍結されたときの対処方法

成年後見人選任の申立方法

 何ら対応策を講じずに本人が認知症になって預金が凍結されてしまった場合、成年後見制度を利用するしかありません。同制度を利用すれば、成年後見人の立場で、本人の預金を管理することが可能です。

 ただし、任意後見と同様、本人の財産は現状維持が原則で、本人にとって損害が生じうるような資産運用や相続税対策のための生前贈与・財産の組み換えなどを行うことは通常許されません。

認知症や預金凍結が心配なときの相談先

 家族信託や後見を扱っている弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。

 特に家族信託は医学でいう最先端医療にたとえられる分野で、家族信託の実務を熟知している専門家は多くありません。そのため、家族信託の利用を選択肢として考えている場合は、家族信託に精通した専門家に相談することが大切です。なお、贈与税などの税金が心配な場合は税理士に相談しましょう。

まとめ

 認知症が進んで預金が凍結されると、お金を自由に使えなくなって支障が生ずるケースも少なくありません。元気なうちに専門家に相談して適切な対策をとっておくことが大切です。

(「相続会議」より転載。内容は2022年1月1日時点の情報に基づいています)

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