<連載> Reライフ山歩き部

装備をそろえよう(下) 電灯と水筒、ストックは必需品

近藤幸夫の山歩き部 第3回 

2022.08.18
近藤幸夫の山歩き部

 安全に山登りやハイキングを楽しむには、装備が必要です。前回は、「登山靴」「ザック」「雨具」の基本的な3点セットを紹介しました。今回は「必ず持参すべきもの」「あると便利で役立つもの」を紹介します。今回も、長野県松本市の登山用品店「石井スポーツ松本店」に勤務する佐藤祐樹さんに聞きました。

=近藤幸夫のReライフ山歩き部の記事はこちら

夜の山道を明かりなしで歩くのは危険 ヘッドライトは欠かせない

 信州大学山岳会OBの佐藤さんは、ヒマラヤなど海外登山の経験もある登山家です。日本山岳ガイド協会認定の「山岳ガイド」として登山者を安全に導いています。国立登山研修所の講師としても若手登山家らの育成にも努めています。

 安全登山に欠かせない装備として、佐藤さんはヘッドライトを挙げました。とくに夕暮れが早い秋は、下山が遅れた場合、山岳地帯は暗闇に包まれます。夜の山道を明かりなしで歩くのは、危険極まりないのです。道に迷ったり、滑落・転倒したりして、遭難につながりかねません。

山歩き部 ヘッドライト
頭につけるヘッドライト。軽量だが、LED電球は明るく暗闇でも安心だ=写真はいずれも長野県松本市の石井スポーツ松本店
山歩き部 ヘッドライト赤
白色と赤色の二つの電球のヘッドライト。赤いライトだと周囲の迷惑にならない

 使い勝手がいいのは、頭に装着するヘッドライトです。かつては単三電池4本が必要で、重量があるわりに光量が少ないタイプばかりでした。しかし、いまは電球はLEDになって明るくなり、軽い単四電池が主流になっています。

 北アルプスなどの山小屋は、午後9時消灯が多いです。消灯後は室内も暗くなるため、トイレなどに行く時にはヘッドライトが必要です。明るい白色のLED電球と、光量が低い赤色電球の二つを備えたタイプだと、周りで寝ている人に迷惑をかけません。

 ただ、電池が切れたり、ヘッドライトが壊れたりするケースもあります。山の中にはコンビニエンスストアなんてありませんから、必ず予備を持ち歩くようにしてください。

 佐藤さんは「僕は、ヘッドライトと小型の手持ちライトの2種類を持参します」と話していました。

 ヘッドライトの価格は、400ルーメン(明るさの単位)で5千円前後です。重量も電池込みで82グラムという軽量タイプもあります。

熱中症や脳こうそく 水分補給で危険を回避しよう

山歩き部 水筒1
透明なウォーターボトル

 気をつけなければならないのは水分補給です。水分が不足すると、夏場は熱中症の危険性が高まるばかりか、血液が濃くなることで脳梗塞(こうそく)など様々な障害が心配されます。

 鹿屋体育大学の山本正嘉教授(運動生理学)は、登山に必要な水分量として「体重(キロ)×行動時間(時間)×5」を提唱しています。例えば体重60キロの人が5時間行動するとすると、「1.5リットル」が必要という計算です。

 佐藤さんは「1リットルの水筒をザックに入れ、あとは、お茶やミネラルウォーターが入った500ミリリットルのペットボトルで量を調整するのが便利ですよ」と教えてくれました。

山歩き部 水筒2
行動中でも水分補給ができるハイドレーション。飲料水が入ったパックをザックに入れ、チューブの先の飲み口から水分を取る方式

 最近は、ザックに入れたソフトボトルから吸引チューブで水を飲む「ハイドレーション」を使う登山者が増えています。ハイドレーションだと、いちいち水筒を取り出さず、歩きながらでも水分補給ができます。登山に限らず、自転車競技の人たちも使っています。

 私も経験がありますが、夏場に北アルプスの燕岳を登ったとき、十分な水分を補給したにもかかわらず、足がつって行動できなくなりました。

 水だけ飲んでも、塩分補給を怠ると、体液が薄まり、ふくらはぎや太ももの筋がけいれんしやすくなります。塩だけでいいですが、塩あめを買って持って行くというのも一案です。

バランス支えるストック ひざの負担も軽減

 加齢と共に衰えてくるのが、バランス感覚です。とくに下山のときに踏ん張ることが難しくなり、転倒や滑落につながります。

 危険を避けるためには、ストック(トレッキングポール)がお薦めです。バランスが安定し、ひざへの負担が軽くなります。

山歩き部 ストック0
登山用のストック。下りでの膝への負担を減らす効果がある。伸縮可能で、使わないときはザックのサイドポケットなどに収容する

 登山用は伸縮方式で、ひじが直角になるような長さに調節します。登りはやや短め、下りはやや長めにします。私は、1本でバランスをとりますが、2本一組で使う人も多いようです。

 佐藤さんは「ストックの先には必ずゴムのキャップ(別売り)を付けてください。キャップを着けず、とがったままだと、登山道を痛めることになります」。環境を維持するのも、登山者の大切なマナーです。

紫外線対策 はば広の帽子で首筋保護 速乾素材を選べ

 忘れがちなのは、帽子です。夏山シーズン中の晴れた日、山の紫外線はとくに強いです。首筋など、やけどのように痛みを伴う日焼けとなることもあります。

山歩き部 つば広帽子
登山やハイキングでかぶる帽子は『つば広タイプ』がお薦め

 登山やハイキングでは、野球帽のようなキャップタイプでなく、首筋を太陽光から保護する「つば広」のものをお薦めします。防水性や透湿性に優れたゴアテックス製でなくとも構いませんが、汗を多くかくので乾きやすい素材のものがいいそうです。

 2回にわたって装備を紹介しましたが、いずれも必要最低限のものです。地図や磁石、手袋、防寒具なども必要ですし、山のレベルや季節によっても装備は変わります。登山用品店には、佐藤さんのような経験豊富なスタッフがいるので、装備品を購入する際、気軽に相談してください。

 長野県は、登山安全条例を制定し、北アルプスなどに登る場合、登山計画書の提出を義務づけています(https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/smartphone/tozankeikakusho.html)。長野県の登山計画書様式には、装備リストがあるので、こちらを参考にすれば、必要な装備がわかります。

(山岳ジャーナリスト 近藤幸夫)

  • 近藤幸夫
  • 近藤 幸夫(こんどう・ゆきお)

    山岳ジャーナリスト

    1959年生まれ。信州大学農学部を卒業後、86年に朝日新聞社に入社。初任地の富山支局(現富山総局)で山岳取材をスタートする。大阪本社編集局運動部(現スポーツ部)に異動後、南極や北極、ヒマラヤなど海外取材を多数経験。2013年、東京本社編集局スポーツ部から長野総局に異動し、山岳専門記者として活動。山岳遭難や山小屋、ライチョウなど山を巡る話題をテーマに記事を執筆。2022年1月、フリーランスになる。日本山岳会、日本ヒマラヤ協会、日本山岳文化学会に所属。長野市在住。

  • この連載について / Reライフ山歩き部

    大自然を満喫できる山歩きは、心と体の健康に最適です。しかし、準備不足や判断を間違えると、遭難の危険性もはらんでいます。初心者が楽しく、安全に山歩きができる極意を、山岳ジャーナリストの近藤幸夫さんが紹介します。

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