腸内フローラ検査 「D判定」の理由 食物繊維不足、加齢の可能性

腸内細菌調べました 第3回 対策編

2022.07.29

 初めて体験した「サイキンソー」(本社・東京)での腸内フローラ検査の結果は、5段階評価で下から2番目の「D判定」=「ややバランスが悪い」でした。健康長寿に役立つ善玉菌の代表格であるビフィズス菌、酪酸産生菌が少ないことなどがわかり、少し落胆しています。さて、今回の検査結果をどう受け止め、どんな対策をとればいいのでしょうか。サイキンソーの顧問であり、ウンチ博士として知られる一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長の辨野義己博士にアドバイスをいただきました。

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D判定

生活を改善すれば、腸内フローラは変化する

 まず、簡単に検査結果のおさらいをします。

 腸内細菌の多様性は「平均的」。健康長寿の人の腸内に多い「ビフィズス菌」「酪酸産生菌」が「2種とも不足気味」。疾患別リスク判定では「機能性下痢」が「中」で、高血圧、糖尿病の人に似た腸内フローラの特徴がありました。大腸がんや大腸ポリープとの関連が指摘されている菌はほぼ検出されませんでした。腸管免疫に重要な影響を与えていると考えられている「バクテロイデーテス門」が平均以上。「やせ菌」といわれる「クリステンセネラ」は検出限界以下で、「肥満菌」といわれる「ステレラ」などは要改善の割合でした。

 一方、私の身体・健康データです。身長174.9センチ。体重は96.2キロ。1日3食を食べ、コロナ禍による在宅勤務によって運動不足気味です。治療中の疾患は、高血圧、糖尿病、脂質異常、甲状腺機能低下。いずれも薬を飲んでいます。

 さて、この結果を、辨野先生はどうみたのでしょうか。

 「まあ、腸内細菌については、まだまだわかっていない部分も多いので、そんなに気にすることはありませんよ。生活を改善すれば、腸内フローラの様子も変わってきます。ビフィズス菌も、うまくすると5倍に増やすこともできるでしょう。肉の量を減らし、食物繊維をたくさんとれば、誰もが持っている酪酸菌の酪酸産生量を増やせます。これからですよ」と慰めてくれました。

原因は「ストレス」「運動不足」「動物性脂肪過剰摂取」「加齢」…

 いまの状態はなぜ起きているのでしょうか。

 辨野先生によると、健康にとって大敵なのは、肥満とストレスだそうです。

 わたしの場合、身長から計算した標準体重は67.3キロで、約29キロもオーバーしています。仕事柄、結構ストレスフルな生活も送っています。ここにまず、問題があるということです。

 それに加え、私の場合は比較的肉料理が多いという食生活や運動不足といった生活習慣が、腸内細菌のバランスを崩す大きな原因になっていると考えられるそうです。

 辨野先生は「生活の偏り、運動不足、ストレス過多、睡眠不足などが、あらゆる疾患の引き金になりえます。その結果、腸内細菌の変動が起こり、それがますます、疾患を促進してしまうと考えるのが正しい見方です。『この菌がいるから大腸がんになる』のではなく、『この菌群の多さとライフスタイルの改善・維持が持続されているから、大腸がんになりにくい』というような捉え方が正しいです」と話しています。

 一方、細菌によって疾患が引き起こされるケースもあります。胃の粘膜に生息するピロリ菌が一例です。

  1970年代、辨野先生が研究を始めたころ、がんと細菌の関係について論じると、一部の研究者から細菌との関係を否定され、「がん、がん、いいなさんな」と言われたそうです。しかし、胃がんに関与するピロリが胃の中の常在菌として発見され、消化器がんの一部は細菌による「慢性感染症」であることがわかりました。

 次に、私のおなかにビフィズス菌が少なかったのは、なぜでしょうか。

 食生活の問題に加え、57歳という年齢から、加齢による減少の可能性も考えられるといいます。人は年を重ねると、どこかの段階で一気にビフィズス菌の数が減ってしまうからです。ヨーグルトなどでビフィズス菌をとっても、そのビフィズス菌は腸に居着いてくれません。しかし、外から入ったビフィズス菌が腸内の環境を良くしてくれれば、もとからいた自分のビフィズス菌が増えることが期待できるといいます。

 高血圧、糖尿病についてはどうでしょう。

 二つの病気とも感染症ではありません。高血圧は動脈硬化が原因となって引き起こされます。私のような後天性のⅡ型糖尿病の場合は主に食生活を中心とした生活習慣の偏りなどによって引き起こされます。そうした疾患が腸内細菌の「構成」に影響を与え、それぞれの疾患を発症し、促進していくと考えられています。

 従って、私の腸内細菌の様子が高血圧や糖尿病の人に似ているのは、疾病が原因で変化したと考えるべきだそうです。体重減少などで血圧や血糖値が改善されていけば、腸内細菌の様子も健康な状態に近づいていくということでした。

食物繊維が豊富な食材

 ビフィズス菌や酪酸産生菌などを増やすには、食事が大切だそうです。善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を十分にとる必要があるといいます。理想の割合は水溶性2に対し、不溶性が3。水溶性食物繊維が多い食材には豆類や根菜類、イモ類、海藻類などがあります。不溶性食物繊維が多い食材は穀類、野菜、豆類、キノコ類などです。こうした食材を組み合わせたメニューをとるように薦められました。

 さらに、たまねぎ、ねぎ、にんにく、アスパラガス、ブロッコリー、アボカド、豆類などオリゴ糖が多く含まれる食材や、ヨーグルトなどを食べることも腸内環境改善に効果があるといいます。

 運動も必要だそうです。1日6000歩のウォーキングをすると、基礎的な歩数と合わせて9000歩程度になるので、朝夕の危なくない時間帯に歩くことを進められました。

結果に一喜一憂せず、生活改善の努力を!

 「食生活に気をつけて、野菜も食べているつもりだったのに…」と私が言うと、辨野先生は「菊池さんの場合、足りていないのではなく、決定的に足りていないと思いますよ。生野菜はかさが多くて、あまり食べられないものです。温野菜にして、量をとる工夫が必要です。以前、とんかつ好きな男性タレントが、自分は他人の3倍もキャベツを食べていると言っていました。でも、キャベツの食物繊維量はたかがしれているんですよ」と言われました。

 確かに、100グラムあたりの水溶性と不溶性を合わせた食物繊維総量を確認すると、キャベツの繊維量は1.8グラムでした。同じ量のゴボウを食べると5.7グラムですから、3分の1以下しかありません。食物繊維など食べ物に含まれる栄養素などの成分を知りたい場合は、文部科学省が公表している「日本食品標準成分表」を参考にするといいでしょう。

 また、高脂肪(動物性脂肪)低食物繊維食は、大腸がんや乳がんを引き起こすことがわかってきているだけに、要注意だと言われました。

 辨野先生からは「腸内細菌を論じるとき、特定の菌群、菌種に光を当てて論じられることがありますが、『木をみて森を見てない』議論にならないように注意しなければなりません。全体像を評価しないと、見誤ってしまうことがあります。腸内細菌は、ある種類が少なくなっても、他がその働きを補ってくれることもあります。善玉菌の一部でさえ、発がんに関与することがあります。総合的な視点で結果を捉えることが肝要です。検査結果に一喜一憂するのではなく、現実の一端を知り、改善の努力をしていくことが大切なのです」とアドバイスしていただきました。

(Reライフ.net編集長 菊池功)

  • 辨野義己
  • 辨野 義己(べんの・よしみ)

    一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長 国立研究開発法人理化学研究所名誉研究員

    1948年、大阪生まれ。酪農学園大学獣医学科卒、東京農工大学大学院獣医学専攻をへて理化学研究所へ。同研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長、同研究所辨野特別研究室特別招聘研究員などを歴任して現職。半世紀にわたって腸内環境学・微生物分類学の研究に取り組んでいる。「『腸内細菌』が健康寿命を決める」(集英社インターナショナル)、「大便力」(朝日新聞出版)、「大便革命」(幻冬舎新書)、「長寿菌まで育てる最高の腸活」(宝島社)など著書多数。

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