<連載> ワクチン接種Q&A

オミクロン株BA.5、ワクチンは効く? 再感染の可能性は? 予防策は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(24)新型コロナ、第7波始まる<下>

2022.07.15

 新型コロナウイルスのオミクロン株BA.5は、その伝播(でんぱ)性の高さが、新規感染者数の急拡大を引き起こしました。では、ワクチンの効き目は、従来株と比べてどの程度なのでしょう。別のオミクロン株に感染した人が再感染する可能性はあるのでしょうか。

 【連載「ワクチン接種Q&A」】記事一覧はこちら
 【連載「ワクチンを知ろう」】記事一覧はこちら

オミクロン株BA.5の変異・サムネイル用

【質問一覧 オミクロン株BA.5とは・下】

  • Q.1:オミクロン株BA.5はどんなウイルス?
  • Q.2:BA.5への感染はどれぐらい増えている?
  • Q.3:BA.5の感染が広がる速さは?
  • Q.4:BA.5に感染すると重症化しやすいの?

Q.5:BA.5に対するワクチンや薬の効果は?

重症化予防、対BA.2と同程度か? 実験レベルでは効果低下の指摘も

A:実世界でのワクチンの効果についてはまだデータが十分にありませんが、英国政府は、予備的なデータを見る限り、重症化を防ぐ効果はBA.2に対する効果とそれほど変わらないだろうとしています。ただし、実験レベルでは、ワクチンの効果が低下する可能性が指摘されています。治療薬の中には、効果が低下するとみられるものもあります。

 英国健康安全保障庁は6月24日に公表した報告書で、予備的なデータを見る限り、重症化を防ぐワクチンの効果はこれまで流行していたBA.2に対する効果と大きく差がないだろうとしています。このため、英国政府は、追加接種を含めて自分が接種できるワクチンをすべて打ち終わっていない人に対し、可能な限り速やかに接種するよう、呼びかけています。

 一方、英オックスフォード大などの研究チームは、科学誌「セル」に6月9日に発表した論文で、ワクチンの効果が低下する可能性を指摘しています。研究チームは、オミクロン株の様々な系統の特徴を持つ疑似ウイルスと、ワクチンを接種した後の人の血液を使い、ワクチンの効果を調べました。

様々なオミクロン株に対するワクチン効果の推定

 研究チームがみたのは、「中和抗体価」です。ワクチンの効果が発揮されるのは「抗体」と呼ばれる、ウイルスを攻撃する物質が体内にできるからです(詳細は、<連載> ワクチンを知ろう「そもそもワクチンとはなに? 新型コロナワクチンの一番の特徴は?」を参照して下さい)。ウイルスに対する抗体のうち、とくにウイルスの攻撃に重要な抗体を「中和抗体」と呼びます。

 研究チームは、ファイザー社製ワクチンを3回接種した人の血液と、様々な疑似ウイルスを反応させ、中和抗体価を調べました。ワクチン接種した人の血液中には、ウイルスに対する中和抗体ができています。反応で得られる中和抗体価が高ければ、それだけワクチンの効果も高いと考えられます。BA.5に対する中和抗体価はBA.2やBA.1に対する中和抗体価の約3分の1でした。

オミクロン株BA.1に感染した人が再感染する可能性

 研究チームは、ワクチン接種後に感染した、「ワクチン・ブレークスルー」の体験者14人の血液でも同様の実験を行いました。このうち12人の人はワクチン2回接種後にブレークスルー感染が起きていました。多くの人は、BA.1に感染しました。この実験では、BA.5に対してできる中和抗体価は、BA.1に対する中和抗体価の3分の1以下、BA.2のほぼ半分でした。

 これらの実験結果から、研究チームは「1度オミクロン株に感染した人の、再感染が起こるだろう」と注意喚起しています。ワクチンの効果を低下させるのは、452番目のアミノ酸と、486番目のアミノ酸に起きた変異とみられるそうです。

オミクロン株BA.4とBA.5に特徴的な変異

 ただし、実世界でのワクチンの効果は、中和抗体価だけでは評価できません。さらにデータが集まるのを待つ必要があります。

 その一方で、ワクチンを製造している製薬企業は、BA.5を含めたオミクロン株への効果がより高くなるよう改良されたワクチンの開発を進めつつあります。米食品医薬品局(FDA)も6月、製薬企業に対し、BA.5にもより効果のあるワクチン開発を推奨しました。

 治療薬のうち錠剤は、BA.5に対しても、他のオミクロン株に対するのと同じぐらいの効果があるとみられています。しかし、英国健康安全保障庁は、中和抗体を点滴で投与する「中和抗体薬」の一部については、486番目のアミノ酸に起きた変異で、ウイルスのたんぱく質の構造に変化が起きたため、抗体医薬が結合しにくくなり、効きにくくなる可能性があると指摘しています。

【質問一覧へ戻る】

Q.6: BA.5のどんな点が懸念されているの?

感染者数の急拡大が続けば、医療体制ひっ迫まねく恐れ

A: 感染が速く広がるため、新規感染者が急増することが懸念されています。重症化しにくくても感染者の絶対数が増えれば、保健所や医療機関の対応や受け入れが困難になります。濃厚接触者も増え、職場に行けなくなるために、交通機関や医療機関、福祉施設など公共・福祉サービスに支障が出る恐れもあります。

 BA.5の伝播性がBA.2より高い点だけでなく、これから連休や夏休みを迎えるというタイミングも心配材料の一つにあげられています。人の移動が増え、友人同士の集まりや親類の会合など、感染しやすい場面が増えるからです。

【質問一覧へ戻る】

Q.7:BA.5が流行する中で、どう対応すればいい?

A: BA.5に対する対応も、他の新型コロナウイルスへの対応と同じです。3密を避け、近距離で第3者と長時間、一緒にいる時にはマスクを着用し、屋内の換気をよくし、手洗いもしっかりして下さい。

 感染予防の基本的な対策は、これまでと変わりません。連載ワクチンQ&Aの第11回「新型コロナで自宅療養、症状悪化どうチェック? 救急車を呼ぶ目安は?」や第15回「オミクロン株の症状、デルタ株とどう違う? 自宅待機時の注意点は?」では、基本の感染予防策のほか、陽性反応がでて自宅待機となった際の注意点なども詳しく紹介しています。参考にしてみてください。

【質問一覧へ戻る】

Q.8:BA.5の後はどうなるの?

A:今後どうなるのかはわかりません。より感染の広がりやすい別のオミクロン株の系統が登場する可能性もありますし、新たな変異株が登場する可能性もあります。

 インドでは、今年6月に入り、新たなオミクロン株の仲間BA.2.75が増加しているとされています。インド以外に英国や米国、ドイツなどでも見つかっています。日本では検疫で見つかったほか、7月12日には神戸市で、渡航歴のない人の感染が判明しました。伝播性や病原性など詳しいことはまだわかりませんが、注意が必要です。

 オミクロン株とは大きく異なる、別の変異株が登場する可能性もあります。

 いずれの場合でも、個人レベルで実施する感染対策は変わりません。また、重症化リスクも大きくは変化しないと考えられます。自分の重症化リスクを把握した上で、適切な対策をとりましょう。

【質問一覧へ戻る】

【オミクロン株BA.5とは(上)】はこちら

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。

 記事へのコメントや質問をお寄せください。下記のボタンから投稿できます(Reライフ読者会議メンバー限定)。

投稿する

※Reライフ読者会議は、人生後半を自分らしく生きるためのコミュニティーです。入会すると、ウェビナーや座談会、新しい商品を試せる体験会などに参加できます。登録方法や詳細は「Reライフ読者会議ページ」をご覧ください。

<新型コロナとワクチン関連記事>

  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの4回目接種が本格化しています。感染・重症化予防の有効性は? 副反応への対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

関連記事

あわせて読みたい

おすすめ記事

PAGE TOP