<連載> ワクチン接種Q&A

夏場のマスクの使い方 熱中症とコロナ感染、双方を防ぐには

疑問・質問「コロナとワクチン」(28)真夏のマスクとコロナ感染予防 屋外・屋外の使い分けは

2022.08.09

 新型コロナウイルスの第7波がなかなか収束しない一方、猛暑日が続きます。そうでなくても暑いのに、マスクをすると内部がむっとしたり、息苦しく感じたりすることがありませんか? 海外ではマスクをしていない人も大勢いる中、マスクとどう付き合えばいいのでしょうか。

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マスクをして買い物する女性

【質問一覧】

Q.1:マスクにはどのような効果が期待できますか?

A:感染するのをある程度、防いだり、他の人に感染を広げるのをある程度、防いだりする効果が期待できます。マスクのつけ方や素材によって効果は変わります。マスクはあくまで感染対策の一部で、マスクだけで感染を防げるわけではありません。

 新型コロナウイルスは主に、ウイルスが含まれる飛沫やエアロゾルを介して感染します。飛沫やエアロゾルは、感染した人が話をしたり、歌ったり、くしゃみをしたりする最中に飛び散ります。他の人がそれを吸い込んだり、付着したものを触った手などで口や目などをこすったりすることでウイルスが体内に入り、感染します。

 マスクは、ウイルスの含まれる飛沫やエアロゾルを吸い込む量を減らしたり、感染した人から放出される飛沫やエアロゾルの量を減らしたりする効果が期待できます。マスクの効果は100%ではありませんが、つけていない場合に比べれば、感染リスクを下げることができます。東京大学医科学研究所などの実験では、感染者と、50センチの距離で向き合っている人の両方が布マスクや不織布マスクをしていれば、飛沫などに含まれるウイルスの吸い込みを7割以上、抑える効果があるとわかりました。

 効果はマスクの素材やつけ方によって変わります。Q.6やQ.7を参照して下さい。

 世界保健機関(WHO)は、「マスクは総合的な感染対策の一部です。他の人と十分に距離をあける、人混みを避ける、屋内の換気をよくする、手をよく洗う、くしゃみや咳をするときには口や鼻を覆う、といった他の対策もしっかりとして下さい」と呼びかけています。

不織布マスクの効果
マスクの感染予防効果

画像はいずれも新型コロナ感染症対策に関する内閣官房のサイト(https://corona.go.jp/proposal/)の資料から抜粋

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Q.2: 真夏にマスクをつけると、熱中症のリスクが高まりませんか?

A: 厚生労働省や同省の専門家会議の有志メンバー、環境省などはこれまで、マスクは熱中症のリスクを高めると指摘してきました。一方、日本救急医学会などは、健康な若い成人の場合、マスクの着用によって熱中症のリスクが高まるという科学的な根拠はないとしています。マスクをしなければ熱中症のリスクが下がるわけではないため、マスクの有無にかかわらず熱中症対策は必要だとしています。

 熱中症は、高温多湿な環境で大量に汗をかくなどして、体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温の調節がうまくできなくなり、体内に熱がこもった状態になって起こります。めまいや立ちくらみ、頭痛、吐き気などさまざまな症状が出ます。厚労省などは、「高温・多湿な環境下では、マスク着用は熱中症のリスクが高くなります」と注意を呼びかけています。

 一方、日本救急医学会や日本呼吸器学会などの4つの医学系学会は、2022年7月に出した「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(第2版)」で、国内外の研究結果から、健康な若い成人の場合、マスクを着用すると熱中症の発症が多くなる、マスク着用が熱中症の危険因子になる、という科学的根拠はない、としています。

 たとえば、医療用不織布マスクをつけた6人と、つけない6人が、室温35度、湿度65%の環境で毎時6キロの速度でトレッドミル上を30分間歩いた実験では、体内深部の体温はどちらのグループも上がっていたものの、上がり方に統計学的に有意な差はありませんでした。また、別の研究では、室温28度の環境で、歩行20分、ランニング20分などの運動をした前後に体内深部の体温を比較しましたが、やはりマスクの有無などによって運動後の体温の上がり方に差はありませんでした。

 一方、室温40度、湿度20%で、医療用マスクのうちより目の詰まったマスクをして45分間の軽作業をした場合、マスクをした方のグループの方が、呼吸困難を訴える人が36%多くいました。

 こういった研究から、救急医学会などは、暑い中でマスクをすることにより、「呼吸困難感」が増すことはあっても、1時間程度の軽い運動や、20分程度のランニングといった運動の強度なら、マスクをしていない場合よりも体温が大きく上がることはなく、マスク着用そのものが熱中症のリスクとなる、という根拠はないと結論づけました。

 ただし、結論の基になった研究がすべて健康な若い成人を対象に行われた点には注意が必要です。65歳以上の高齢者や子どもの場合、18~64歳の成人に比べて、熱中症になる気温が低い傾向があるとの報告があります。

 救急医学会などは、マスクを着用しないからと言って、熱中症のリスクが軽減されるわけではないため、マスクの有無にかかわらず、「とくに運動をする場合や、高齢者や小児、肺疾患のある人は、エアコンや水分補給などの熱中症対策を継続するように」と呼びかけています。

マスクと熱中症のリスク

環境省と厚労省が作成した「熱中症予防×コロナ感染防止」のリーフレットから

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Q.3:マスクをつけた方がいいのはどのような場面ですか?

A: 政府がマスク着用を推奨するのは、高齢者に会う時や病院に行く時、他の人との距離を十分にとることのできない環境で会話をする時、会話はほとんどしないものの、通勤電車などで他の人との距離を十分にとることのできない場面などです。

 マスクをつける目的は、ウイルスが含まれた飛沫やエアロゾルを吸い込んだり、飛び散らすのを防ぐことです。ですからマスクを着用した方がいいのは、飛沫やエアロゾルが発生しやすく、吸い込みやすい場面です。

 飛沫やエアロゾルが発生しやすいのはしゃべったり、大きな声を出したり、くしゃみをしたり、せきをしたり、歌ったりする場面です。こういった行為が行われていても、屋外ならば、空気が循環しているので発生した飛沫やエアロゾルが1カ所に滞留することはなく、マスクをする必要性は下がります。ただし、政府は、屋外でも他の人と十分な距離が保てない場合には、マスクを着用した方がいいとしています。政府が推奨する他の人と距離は2メートル以上です。WHOは1メートル以上としています。現実的かどうかは別の問題として、離れているほど安全です。

マスクの使い方

屋外・屋内でのマスク着用に関する政府資料から抜粋(https://corona.go.jp/proposal/pdf/wearing_mask_2022056_01.pdf

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Q.4:子どももマスクが必要でしょうか?

A:政府は、2歳未満の子どもにはマスク着用を推奨しないとしています。2歳から就学前の子どもについては、一人ひとり発達の状況や体調が異なるため、他の人と十分に距離をあけられないとしても、マスク着用は一律には推奨しないとしています。小学生から高校生の子どもについては、成人と同じような基準でマスクの着用を推奨しています。ただし、屋内の体育館やプールも含めて、体育の授業中や部活動の最中、登下校の際にはマスクは必要ないとしています。

 政府は2022年2月、それまでよりも感染の広がりが速いオミクロン株の流行を受け、保育園や認定こども園などでは、2歳以上の未就学児でも、「マスク着用が無理なく可能と判断される児童は、可能な範囲で、一時的に、マスク着用を薦める」としました。しかし5月になり、従来よりも軽症のことが多いといったオミクロン株の特徴がわかり、しかも、気温が上昇してきたことから、マスク着用は一律に推奨しない、という、2月前の考え方に戻すことにしました。

 WHOは、「子どものマスク着用の有無を決める際に最優先されるべきなのは、どうするのが子どもに最も有益かという点である」と強調しています。子どもの成長や発達、健康には、遊びや学習、他の人の表情を見ることも含めてコミュニケーションをとることや、日々の活動が大切です。そういった子どもたちの活動が妨げられないよう、マスクの着用は柔軟に行うべきだとしています。そして、マスクの着用の有無によって、学校やさまざまな活動への参加を拒否するべきではないとしています。

 WHOと国連児童基金(UNICEF)は、実際にマスクを着用するかどうかは、各国政府の方針に従うべきだとしつつ、基本的な考え方としては、5歳以下の子どもは、自分では適切にマスクを着用することができないだろうから、マスクは着用する必要がないとしています。

子どもとマスク

子どものマスク着用に関する政府の資料(https://corona.go.jp/proposal/pdf/wearing_mask_2022056_02.pdf)から抜粋

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Q.5:運動をしている最中もマスクが必要でしょうか?

A:政府は、小学生から高校生の場合、屋内でも屋外でもプールでも、原則として体育の授業中や部活動中にはマスク着用は必要ないとしています。運動をすると呼吸量が増えます。WHOは、激しい運動をする場合、マスクをしていると十分に呼吸できなくなる可能性があるため、マスクを着用するべきではないとしています。ただし、運動の最中も他の人との距離を1メートル以上あけるよう呼びかけています。

 政府は、小中高校の体育の授業や部活で、格闘技など他の人と近距離で接する必要のある競技の場合には、各競技団体のガイドラインなどを参照するよう求めています。また、部活動の前後の更衣室内や、移動中、食事などの際には、他の人との距離などを考慮して適宜、マスクをつけた方がいいかどうか判断してほしいとしています。

 体育館やジムなど屋内で運動する場合は、運動する場所の換気が十分に行われているかどうかにも気をつけましょう。

マスクと運動
マスクと運動

画像はいずれもマスクに関するWHO(世界保健機関)の情報ページ(https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/when-and-how-to-use-masks)の資料から抜粋

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Q.6:正しいマスクのつけ方は?

A:鼻と口、あごを覆い、顔と隙間があかないよう、ぴったりとつけるようにするのが望ましいつけ方です。隙間が大きく開いていたり、鼻が出ていたりすると、感染予防効果が下がります。

タイトフィットとルーズフィットの違い
マスクのつけかた

画像はいずれも新型コロナに関する内閣官房の情報ページ(https://corona.go.jp/proposal/
)の資料から抜粋

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Q.7:マスクの素材は何がいいんですか?

A:不織布の方が、布製やウレタン製よりも感染予防効果が高いとされています。また、1層ではなく、何層かになっているものの方が高い効果があります。

マスクの素材による違い

新型コロナに関する内閣官房の情報ページ(https://corona.go.jp/proposal/
)の資料から抜粋

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Q.8:マスクの代わりにフェイスシールドを使ってもいいですか?

A:フェイスシールドの感染予防効果はマスクよりも低いとされています。ただしWHOは、語学の授業や、障害などがあってマスクができない子どもの場合などは、フェイスシールドはマスクの代わりになるとしています。その場合、フェイスシールドは口元だけでなくあごの下から顔の側面も含めて覆うようなものが好ましいとしています。また、フェイスシールドが壊れて目や顔を傷つけないよう、子どもたちの行動には注意を払う必要があるとしています。

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 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの4回目接種が本格化しています。感染・重症化予防の有効性は? 副反応への対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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