暑さのなか、たんぱく質は十分にとれていますか 夏のメニュー対策

管理栄養士・板垣好恵さんがアドバイス

2022.08.12

 猛暑が続き、夏バテや食欲不振に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そんなときだからこそ、毎日の食事が大切です。しかし、暑いと、ついつい簡単に済ませてしまいがちではないですか。そこに落とし穴があるようです。体をつくり、健康に保つために必要なたんぱく質が十分にとれていない可能性があります。暑さを乗り切る夏のたんぱく質対策について、管理栄養士で食の専門家ユニット「フードリング」代表の板垣好恵さんにうかがいました。

食事の写真

暑さによる体力消耗が食欲不振を助長

 ――夏の食欲不振はなぜ起きるのですか?

 一番大きいのは、暑さによる体力消耗だといわれています。消耗して疲労感やだるさを感じ、食欲も低下してしまいます。暑い屋外からエアコンが効いた涼しい室内に入ると、急激な温度変化によって自律神経が乱れやすくなるのですが、自律神経の乱れも消化機能の低下を引き起こします。また、湿度の高さも原因の一つです。湿度が高いと汗の蒸発が妨げられ、発汗異常が起きやすくなります。汗をうまく出せないと、体内に熱がこもって体温調節がうまくいかなくなり、これも食欲不振を助長します。

 ――Reライフプロジェクトが行った「夏の食事に関するアンケート」では、夏に食べたいものとして、「冷たいもの」「酸っぱいもの」「油分の少ないさっぱりしたもの」がトップ3でした。

 体温が上がると暑さを和らげるために冷たいものが欲しくなりますよね。体内に余分な熱がこもっていたり、口が渇いたりしていると冷たいものをとり入れたくなりますが、冷たい食品が消化器官に接することで、一時的に体が冷やされた感じがするだけで、体全体で体温が変化するわけではないんです。むしろ、冷たい食事や飲み物で消化器官を冷やすと、内臓の機能を低下させる原因になります。そのためまた食欲がなくなってしまう。だから食べ過ぎないことが大切です。

 酸っぱいものを体が欲するというのは、疲れが要因の一つです。人は体内に乳酸が増えることで疲れを感じるわけですが、乳酸を分解するのがクエン酸です。お酢やレモンなどの酸味成分ですね。疲れているときに自然と体が酸っぱい物を欲しがるのは、そうした仕組みからです。またクエン酸は消化液の分泌を促して胃の働きを促進してくれるので、夏バテからくる消化不良や胃もたれ解消も期待できます。

 消化機能が低下すると、脂っぽいものを受け付けなくなります。脂質の多い料理を食べると余計に内臓に負担がかかりますので、さっぱりとした、のどごしのよいものを食べたくなるんです。

板垣さん
板垣好恵さん

食欲不振が栄養不足を招く

 ――夏ならではの食事で気を付けないといけないことはなんですか。

 そもそも食欲不振から食事量が減ってしまうので、エネルギー(カロリー)や栄養素の不足が心配されます。食事の回数や品数が減ることを考えると、とくにたんぱく質不足が懸念されます。

 たんぱく質が不足すると、筋肉量の低下につながります。筋肉を動かすことでエネルギーを消費しますが、その筋肉が減ると基礎代謝量が落ちてしまうので、太りやすくなるんです。

 さらに熱を生み出す力が弱くなるので、冷え性の原因にもなります。

 たんぱく質は、意欲や学習能力にかかわるドーパミンや、精神を安定させるセロトニンなど神経伝達物質の原料になっています。このため不足すると、集中力が低下したり、ぼんやりして疲れやすくなったりして、精神面の不安定にもつながってくると考えられます。

 たんぱく質は免疫細胞や抗体のもとになるので、不足すると免疫力が下がり、夏風邪やさまざまなウイルスへの感染リスクを高める原因になるともいわれています。

たんぱく質摂取量
レベルⅠ=生活の大部分が座位で静的な活動が中心の場合▽レベルⅡ=座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合▽レベルⅢ=移動や立位の多い仕事への従事者。あるいはスポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合(日本人の食事摂取基準2020年版)

 ――たんぱく質の必要な摂取量は年代によっても違いますが、毎食きちんととることが大切と言われます。たとえば、成人男性だと1食30グラム前後が目標量とされます。夏によく食べられる「冷やしそうめん」「冷やし中華」「カレーライス」ですが、それぞれ、どれぐらいのたんぱく質がとれるものでしょうか。

そうめん

 特に栄養価が低いのが冷やしそうめんです。こちらの写真のように、麺とめんつゆ、少々の薬味といった内容ですと、エネルギーはおよそ361kcalしかなく、5歳の子どもの1食分(430kcal程度)にさえ足りません。たんぱく質も9.9グラム程度です。

冷やし中華

 冷やし中華は、そうめんに比べると、卵、カニカマ、蒸し鶏といった具をのせて食べることが多いので、そのぶん、たんぱく質が摂取できます。こちらの写真のような具だくさんの冷やし中華ですと、およそ21.6グラムです。

カレーライス

 カレーライスのような辛いものは、食べると汗をかき、体を冷やす効果があるんですよ。栄養面ではエネルギーと脂質はしっかりとれます。ジャガイモやニンジンなどの根菜とご飯で、食物繊維はこの三つのメニューのなかでいちばん多いです。ただし、たんぱく質は目標量を下回る、およそ13.4グラムしかありません。

たんぱく質を補う工夫とは

 ――たんぱく質を補うにはどう工夫するとよいでしょう。

 そうめんは具だくさんにすることです。豚しゃぶ100グラムをのせれば、たんぱく質12.8グラムをとれるので一気に栄養価を底上げできます。また、ツナ缶も80グラムで、たんぱく質10.4グラムをとれます。ゆで卵を添えたり、豆乳をつゆに加えたりするのもいいでしょう。

 冷やし中華は、のせる具の量を増やすことです。エビなどを含むシーフードミックスも手軽でおすすめです。サバ缶も冷やし中華と相性がいいですよ。

 カレーライスは肉の量を増やすのが手軽ですが、そうすると脂質が気になってきます。おすすめは大豆で、スーパーで売られている水煮の缶詰や蒸し大豆のパウチが便利です。大豆50グラムで、たんぱく質6.3グラムがとれます。ヨーグルトと牛乳をまぜてラッシーのようなドリンクを作り、カレーライスに添えるのもよいと思います。

 ――手軽に夏場にたんぱく質を補う工夫を教えてください。

 冷ややっこがおすすめです。よくスーパーで小パックを三つまとめて売られていますが、1パックはだいたい150グラムで、たんぱく質は絹豆腐で約8グラム、木綿豆腐なら10グラムです。私も冷ややっこをいただく頻度が多いんですよ。でも毎回同じでは飽きるので、キムチやのりをのせたり、肉みそやジャコ、トマトやキュウリをのせたりすれば、和洋中でもアレンジが楽しめます。調理がとても簡単で、豆腐は比較的日持ちもするから便利ですよね。

 また、栄養補助食品も手軽で役立ちます。外食などで好きな食事を楽しみつつ、たんぱく質を補いたいなというとき、すぐに使えるよう常備しておくとよいでしょう。

 飲みものをカフェオレやミルクココアにするのもいいですね。ミルクを使うことで、たんぱく質をとれますから。

ビタミンB1不足にも注意して

 ――ほかに、夏に注意すべき栄養素はありますか。

 みそ汁や煮物、鍋料理は野菜の供給源なんですが、夏場はこのような温かい料理を食べる頻度が少なくなり、どうしても野菜の摂取量が減ってしまいます。ビタミンもそうですが、食物繊維も不足しがちになります。食物繊維は腸内細菌のエサになりますから、腸の機能を維持するためにぜひとりたいですね。

 ビタミンでは、とくに夏場に不足しやすいといわれているのはビタミンB1です。アイスクリームや清涼飲料水など甘いものは糖質が主成分ですが、これをエネルギーに変えるのに必要なのがビタミンB₁なんです。不足すると疲れやすくなり、倦怠(けんたい)感や食欲不振を助長します。豚肉、うなぎ、たらこ、大豆、玄米などB1が多く含まれるものを食べることが大切です。どうか、どうしたら十分に栄養がとれるのかを考えながら、暑さを乗り切ってください。

  • 板垣好恵
  • 板垣 好恵(いたがき・よしえ)

    管理栄養士・フードリング代表

    大手料理教室に6年間勤め、2015年に独立。自身の妊娠・出産経験からプレママ〜産後ママの食生活、子どもの発育における食育の重要性を実感し、食育活動に注力。「心とカラダを豊かにする食育」をモットーに、ママ向けに食育の情報発信、レシピ開発、料理教室、イベント出演などを行う傍ら、埼玉県の認可保育園の専任管理栄養士も務める。「オリーブオイル」の専門家としても活動。企業向けにレシピ提供や撮影、コラム執筆、料理イベント講師、雑誌掲載、テレビ等メディア出演。2児の母。

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