実家の片付けにうんざりしないために 円滑に行うコツや手順

人生100年時代を生きるキーワード:実家の片付け

2022.08.29

 

「実家の片付け」親とスムーズに進めるコツ
(デザイン:西條那菜)

 

 「実家の片付けでもめて疲れた」「整理してもすぐ散らかる」など、親の老いとセットでやってくる実家の片付け問題。この記事では、実際に相談のあった実例や散らかる原因、スムーズに片付けるためのコツや手順をご紹介します。

<目次>

1.悩んでいる人は意外と多い! 実家の片付け問題

 平均寿命が延びて親に育てられた期間よりも、親子は大人として付き合う期間が大幅に延びました。親子といえども、価値観がまったく違う他人です。だからといって簡単に付き合いをやめることはできません。実家の片付け問題は、親子の新たな局面です。

(1) 実家の片付けに悩むタイミング

実家の片付けに悩むタイミング

 くつろげるはずの実家が「なんとなく落ち着かない」「散らかっていると感じる」など、実家の片付けに悩んでいる方は多いです。まずは、今まで相談のあった実例も交えながらながらご紹介します。

・久しぶりの帰省で目の当たりに
 2年ぶりに子連れで帰省したところ、実家の床がモノだらけで驚いたという相談がありました。
 このところの物価高や品薄への不安から、トイレットペーパーやマスクなどの日常品を多めに買い、モノが増えてしまっているとのこと。使いきれないモノの上には埃(ほこり)がたまっていくため、掃除も大変になります。

・想定外の同居
 実家を離れたのち、さまざまな事情で再び同居をするケースもあります。ある方は、都会で働いていましたが、給料の減額があり、家賃を支払うのが苦しくなりました。そんな折、リモートワーク推進の流れにのって、20年ぶりに実家に戻ることに。

 仕事のスペースくらいあるだろうと考えていたそうですが、モノだらけで落ち着いて仕事ができず、喧嘩(けんか)になってしまったそうです。“なぜ散らかっているのか”を考えず、お互いの意見を理解しないまま片付けをしてしまうと、もめる原因になります。

・生前整理、遺品整理、相続のトリプル進行

遺品整理

 高齢の親のどちらかが先に亡くなり一人暮らしになることがあります。特に祖父母と同居していた場合、祖父母と亡くなった親の3人分の遺品整理と、残された親が一人暮らしをするための生前整理が、一挙に子どもの肩にかかってきます。

・主のいない“空き家予備軍”に奔走
 親御さんがご存命でも施設に入れば、主のいない“空き家予備軍”になります。さらに義理の両親の実家が空き家になっていたり、親だけでなく、独身の叔父や叔母宅の片付けに通っていたりする人もいます。
 核家族化が進行しているため、中年になった子世代に、自分の実家だけでなく、2軒、3軒と空き家や空き家予備軍の問題がふりかかるのです。

(2)片付けが進まない、散らかる原因

片付けが進まない

 「片付けてもすぐに散らかる」「片付け方がわからない」など、実家に住んでいる親自身も実は悩んでいる場合があります。
 まずは実家が散らかってしまう原因を考えてみましょう。

・実家に住む人が減ってもモノが増え続ける理由

増え続けるモノ

 実家に住む人数が減ったからといってモノが減るわけではありません。例えば、かつて7人家族で、現在老親一人暮らしの場合、使わない7人分の布団と客布団などが、 “死蔵品”として眠ったままになっていることがあります。また、キッチンには家族で住んでいた頃の大きな鍋や大量の食器がそのままあり、その上で1人用の小さな軽い鍋や食器を新しく購入しているなど、捨てずに買い足しているケースも。そうすると必然とモノの数が増え続けてしまいます。

・健康不安をモノで埋めがち
 実家にある段ボールに入ったままの運動マシンや、大量に床置きされた健康飲料は、健康不安が原因で増えたモノです。一般的に、景気の先が見えない働き盛りの中年の子世代よりも、今の親世代は経済的に余裕があります。年金生活を脅かさない程度だったら、健康食品や健康グッズで手軽に不安を埋めたいという気持ちが働くのも無理はありません。

・潤沢な収納スペースが裏目に
 核家族化が進み、かつて3世帯が住んでいた実家であっても、祖父母が亡くなり、子が独立して夫婦2人暮らしになり、どちらかが先立てば一人暮らしになります。生活用品をまとめ買いしても、家族が減ったので収納スペースに困りません。新しい大型の収納棚も気兼ねなく買えます。こうして、モノがどんどん増えていくのです。

・「もったいない」世代VS.ミニマリズムの子世代の“深い溝”
 親御さんの世代は、戦後のモノが少なく大変な時代から高度経済成長期を経てきたことから、家やモノを「豊かさの象徴」と考える傾向にあります。モノを捨てることは「もったいない」し、「悪いこと」です。すべて “いる”モノであり、いつか“使う”ので、とっておこうと考えます。

 一方、子世代は、少ないモノで暮らすミニマリズムがはやっています。価値観の善しあしは抜きにしても、親と子のモノの持ち方には、深い溝があります。無理に子どもが片付けてもリバウンドしたり、喧嘩になったりします。

(3)実家を片付けるメリット

実家片付けのメリット

 「こんなに大変ならこのままでも良いかも」と思ってしまうこともありますよね。しかし、いずれ片付けなければいけない時が来るので、親が元気なうちに実家を片付けるメリットを知っておくと、片付けに対する気持ちも前向きになります。

メリット① 親が安全・清潔に暮らせる
 東京消防庁の調査によると、救急搬送された高齢者の多くが、転倒によるものです。
 家の中が片付いていれば、親の転倒を防ぐことができます。地震や台風などの自然災害や停電はいつ起きるかわかりませんし、コロナ対策も必要です。片付ければ掃除がしやすくなり、清潔に暮らすことができます。

メリット② 介護不安が減る
 日頃から実家を片付けておくことで、将来的に在宅で適切な介護や介助を受けやすくなります。それは家族にとっても、精神的・経済的な不安や負担を減らすことにつながります。
 近年は、医療技術の進歩と、政府による政策により、入院から退院までの入院日数が短くなっています。万が一入院し、いざ退院といわれた時に、介護ベッドや歩行器などが入らないということがなく、緊急の片付けをしなくても済みます。

メリット③ “長期空き家化”のリスク回避になる
 実家を片付けないまま親が亡くなると、すぐに遺品整理をしようと思っても思い出が蘇り片付けの手が進まなくなります。貴重品が見つからず困ることも。片付けが進まないまま空き家の状態が長期化すると、管理費や固定資産税など金銭面の負担が増え、同時に遠くの実家に通う体力や気力も消耗していきます。
 親が元気なうちに片付いていれば、いざという時に、売却や賃貸など次の一手を打ちやすく、“負”動産のリスク回避をしやすくなります。

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2.実家を片付ける前に意識したい3つのポイント

実家片付け前に意識したいポイント

 親子といえども、自宅の片付けとは全く違うアプローチが必要です。

(1)実家にあるモノはすべて親の人生の一部と心得る

 いずれ自分が相続するし、荷物の整理で自分が迷惑をかけられるからといって勝手に捨てると親の機嫌を損ねる可能性があります。
 実家にあるモノはすべて親の人生の一部、生きた証しであるということを、忘れないようにしましょう。

(2) 捨てる判断は親自身が3秒程度で

 親にとって実家にあるのはすべては「いる」モノで、将来「使うかもしれない」モノです。
 そこで、3秒程度の短い時間に「捨てる」と判断できなかったら、「一時保管」にするように促してみましょう。捨てずに「移動するだけ」なので納得しやすくなります。
 「一時保管」にしたものは、段ボールやゴミ袋に入れて、目につきにくい場所へ移動します。捨てるわけではないので、安心して片付けが進みやすくなります。

(3)スッキリ片付けすぎない

 モノを持つことが豊かであると捉えている親御さんは、部屋に空間や隙間があると、寂しいと感じて、またモノを置き、片付けてもリバンウンドしてしまうことがあります。
 見た目がスッキリしていなくても、災害時の避難経路をふさいでいない、転んだり物が落ちる危険がないといった程度であればよしとして、子どものセンスを押し付けないようにしましょう。

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3.「親ともめない」片付けの始めかた

いる・いらないの判断は

 片付けることに親が納得したら、限られた時間で効率よく片付けたいものです。なるべく摩擦の少ない手順を踏むとよいでしょう。

ステップ1:帰省前から準備をしておく

 帰省する前に、粗大ゴミの処分場・受付時間・分別方法をインターネットなどで調べて計画を立てましょう。ハサミ、軍手、粘着テープなどの道具類も、事前に自宅からもっていくと時短になります。

ステップ2:もめにくい「かつての子ども部屋」から手をつける

 モノを捨てても喧嘩になりにくいのは、かつての子ども部屋です。都会の狭い家に住む子どもが、衣替えのたびに持ち込んだ服や、使わないレジャー用品、幼い頃の学習机や本棚などの不要な家具類を、先に処分しましょう。 
 子どものモノを撤去するついでに、死蔵品になっている親の不用品も「“ついでに”処分しようか」と提案してみてください。あくまでも“ついで”というのがポイント。親の「捨てたくない」という心の壁を乗り越えやすくなります。

ステップ3:防災・減災・避難経路を片付ける

 片付ける理由を「年寄りだから転ぶかも」と言ったら、反感を持たれます。停電や地震に備えるという、防災を理由にすると、親に納得してもらいやすくなります。
 玄関や廊下、トイレにつながる動線を片付けたり、リビングや寝室の床置きや崩れそうな頭上にあるモノを安全な場所に移動したりしていきましょう。

そのほかに意識しておきたいコツ・ポイント

・モノの数や大きさを今住んでいる人数に合わせる
 実家には、家族全員分の食器や大きな鍋など、今住んでいる人数以上のモノがあります。老親2人暮らしだったら、2人分程度に減らしましょう。
 2年程度着なかったものは、地域のリサイクルに出す方法などを提案するのがおすすめです。

・思い出の品は後回しに
 趣味のモノや思い出の品は、親の思い入れが強いので、なかなか片付ける気持ちになりにくいものです。思い出の品は後回しにして、片付けに慣れてから取り掛かると、作業が進みやすくなります。

・リフォーム予算などは片付けながらさりげなく把握
 床がへこんだり、壁紙が汚れたりしていたら、リフォームや修理の予算があるか聞いてみましょう。予算に余裕があるかどうかというお金の話も、片付けながらなら、自然な会話になりやすいでしょう。

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4.片付けを円滑にスタートするために、外部サービスの活用も

実家片付けには外部サービスも使いましょう

 親がこの先ずっと実家で暮らすにしても、施設に入るにしても、売ったり人に貸したりするにしても、いずれも片付けは必要です。スムーズにスタートできるように、自分や家族に合う片付けサービスの選び方や方法について知っておきましょう。

(1)増えつつある片付けサービス

 離れて住む子世代はすでに中年です。体力的にも、時間的にも経済的にも余裕がありません。片付けを家族でなんとかできるというのは、すでに幻想になりつつあります。
 介護が保険として社会化されて約20年、引っ越しサービスも以前は家族で行っていましたが、この50年ほどで当たり前になりました。片付けサービスが社会化されていくのは、自然の流れでしょう。
 親戚や知人、信頼できる人の体験談を聞いてみたり、片付け講座に参加したりして学ぶ方法もあります。少しでも手に余るようだったら、片付けサービスを活用するのがおすすめです。

(2)片付けサービスの選び方

 片付けサービスは、たとえ有料であっても、体力的な負担が減るので、大切なモノの整理に集中できます。親子で話し合う時間や、精神的な余裕が生まれます。

・自治体サービスの確認
 自治体によっては、低料金で持ち込み処分ができたり、高齢世帯への処分費の優遇措置があったりします。まずは、何をどのくらい処分したいのかを明確にし、使える制度がないか、最寄りの清掃局などに問い合わせてみましょう。

・片付けサービスの種類と選び方
 見積もりや依頼をする際には、「何を捨てたいのか」「誰がどのように使う部屋なのか」「予算の上限」などの希望を、はっきりと伝えるのがポイントです。
 片付けサービスには大きく分けて2つあります。

① 収納・仕分け中心のアドバイザー
 クローゼットだけ、キッチンだけというようにエリアを決めて、通常1〜3人で、依頼主と一緒に、暮らしやすさ・使いやすさを相談しながら片付けを行います。廃棄物業者を入れる前のクローゼット内の服、宝飾品といった女性モノの片付けを依頼するのにも重宝します。

② 廃棄物処理業者
 忙しい方は、廃棄までしてくれる、生前整理や遺品整理が得意な廃棄物業者を選びましょう。通常、トラックの大きさと台数、モノの種類と量、人数などで料金は変わります。
 業者によって得意分野があり、買い取りできるものを査定してくれるところ、細かい仕分けをしてくれるところがあります。処分に応じた適切な免許をもっているかなどを確認しながら、いくつか見積もりをとるのが理想です。
 なかなか帰省できない人や、大物の家具がたくさんある場合に、上手に活用するとよいでしょう。

(3)何はともあれ、早めの動き出しを

 実家の片付けは、日本はおろか世界中、誰もが経験したことがない急速な少子高齢化社会の表れです。
 安全に長く実家で暮らしてもらうことは、親御さんにとっても、周りの家族にとっても、大きなリスク回避となります。
 実家を売るのか、貸すのか、誰が住むのか、何も決まっていなくても、何はともあれ早めに片付けをスタートさせましょう。その後の生活を安心して過ごすことにつながります。

((一社)実家片づけ整理協会代表理事・渡部亜矢)

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  • 渡部亜矢
  • 渡部 亜矢(わたなべ・あや)

    (一社)実家片づけ整理協会代表理事

    都市銀行、出版社などを経て現職。実家片づけアドバイザー®育成講座、生前整理、終活講座などを開講。著書『カツオが磯野家を片づける日〜後悔しない「親の家」片づけ入門』『片づけの基本』ほか。筑波大院カウンセリングコース修了。

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