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<連載> 腸戦者に訊く

第13回 母乳が赤ちゃんのビフィズス菌を増やす

順天堂大学教授で医学部附属順天堂医院副院長の清水俊明さん・森永乳業健康栄養科学研究所栄養機能研究室主任研究員の江原達弥さん 母乳の不思議編

2022.10.21

  生まれたばかりの赤ちゃんは、お母さんの母乳を飲むことによって健やかに育っていきます。それは、母乳の中に赤ちゃんの発育に必要な栄養だけではなく、赤ちゃんの健康を支える腸内のビフィズス菌を増やす成分が含まれているからです。小児の消化器を専門とする順天堂大学医学研究科主任教授で順天堂大学医学部附属順天堂医院副院長の清水俊明さんと、森永乳業で母子の栄養に関する研究をしている健康栄養科学研究所栄養機能研究室主任研究員の江原達弥さんに、赤ちゃんとビフィズス菌の関係についてうかがいました。

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腸戦者に訊く⑥清水先生吉本さnツーショット①

赤ちゃんのおなかにはビフィズス菌がいっぱい

 ――清水先生の専門は何でしょうか。

清水 わたしは小児科医です。専門は栄養・消化器で、腸内細菌についても興味をもって研究してきました。低出生体重児、つまり、小さく生まれてきた赤ちゃんには、一般的な体重で生まれてきた赤ちゃんと腸の状態が違うこと、善玉菌といわれるビフィズス菌が少ないことが分かりました。20年以上前から、どうすれば低出生体重児の腸内環境を改善することができるのか、ビフィズス菌を増やすことで、赤ちゃんの成長や発達をよくすることができないか、という視点で研究を続けています。

 

――江原さんは、どのような研究をされているのですか。

江原 わたしは企業研究者として、母子の栄養に関する研究を進めています。胎児期や乳児期にとった栄養が、長期的な健康にどのように影響を与えているのかを研究しています。とくに注目しているのが、腸内細菌です。乳児の腸内でどうすればビフィズス菌を増やすことができるのか、ビフィズス菌を増やすために適した栄養素は何か、といったことを明らかにしようとしています。

 

腸戦者に訊く⑥清水先生①

――さっそくうかがいます。赤ちゃんの腸内にはいつから細菌がすんでいるのでしょうか。

清水 最近の研究では、ごくわずかですが胎児期でも腸内細菌が存在すること分かってきました。

 しかし、赤ちゃんにとって必要な多くの菌は、生まれる過程や生まれてから獲得すると考えられています。大きな要因とされているのは、お母さんの産道を通って生まれてくるときに、周囲の菌が口から取り込まれることです。生まれた後も、母乳を吸ったり、お母さんや家族などと接したり、いろいろなものに触れたりすることで、細菌を獲得していきます。

 そうして様々な細菌が赤ちゃんのおなかに定着し、腸内細菌叢(さいきんそう)を形成します。赤ちゃんの腸内細菌叢には、善玉菌として有名なビフィズス菌が非常に多く含まれます。なぜなら、母乳にはビフィズス菌を優先的に増やす成分が含まれているからです。

 

江原達弥さん①

母乳のオリゴ糖がビフィズス菌のエサになる

――赤ちゃんの腸内は、生後1週間ほどでビフィズス菌が最優勢となり、離乳期になるまで、腸内細菌全体の半分以上を占める状態が続くとされていますね。

清水 母乳にはビフィズス菌のエサになるオリゴ糖と、有害な菌の増殖を抑える抗菌成分が含まれています。このため、母乳を飲んでいる期間は腸内にビフィズス菌が多くなります。

 ビフィズス菌は、オリゴ糖や水溶性食物繊維をエサにして大腸の中で「短鎖脂肪酸」の一つである「酢酸」を作り出します。赤ちゃんのうんちは大人のものと違い、独特なすっぱい匂いがしますが、これは赤ちゃんの大腸に特にビフィズス菌が多いことの証拠です。

 酢酸には腸を刺激して腸の活動を整えるだけでなく、有害な菌の増殖を抑えたり、感染から防いだりする作用があり、これらの有効性は早くから分かっていました。また最近では、免疫に対する作用や、大腸だけでなく全身の健康に大きくかかわることも明らかになってきています。

江原 特定のビフィズス菌を摂取することによるアレルギー予防の可能性など、ビフィズス菌の有効性については当社を含めて盛んに研究が行われています。

――赤ちゃんのおなかには、なぜたくさんのビフィズス菌がいるのでしょうか。

清水 まだ研究途上のことも多いですが、母乳がビフィズス菌を増やすような組成になっていることは明らかです。大人と比べ、赤ちゃんはすべての機能が未熟で、弱い存在です。そんな赤ちゃんを、ビフィズス菌がもたらす有益な作用で助けてあげるために、おなかにたくさんいるのかもしれませんね。

 次回は、赤ちゃんのおなかにいるビフィズス菌が果たしている役割に関する話です。

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(企画・製作:朝日新聞Reライフプロジェクト)

  • 清水 俊明
  • 清水 俊明(しみず・としあき)

    順天堂大学医学研究科主任教授

    1983年順天堂大学医学部卒業。1988年同大学院医学研究科修了。イエテボリ大学(スウェーデン)、アデレード大学(オーストラリア)に留学。順天堂大学小児科助教授を経て2007年から現職。日本小児科学会、日本母乳哺育学会、日本脂質栄養学会、日本ヘリコバクター学会などで理事を歴任。現在、日本小児栄養消化器肝臓学会の理事長。

  • 江原達弥
  • 江原 達弥(えはら・たつや)

    森永乳業研究本部健康栄養科学研究所栄養機能研究室主任研究員 博士(医学)

    2003年上智大学大学院 理工学研究科修了、同年森永乳業入社。デザート・クリーム製品の製造、機能性素材の研究等を経験したのち、2008~2013年、東京医科歯科大学との共同研究に参画し、胎児期・乳児期の栄養状態が将来の生活習慣病リスクに影響する分子機構の研究により博士(医学)取得、日本肥満学会YIA受賞。2012年より現職場にて周産期・乳幼児の栄養と健康に関する研究と、その成果を応用した育児用ミルク等の乳幼児用栄養食品の企画開発を推進。

  • この連載について / 腸戦者に訊く

    ビフィズス菌は1500万年にわたって人類と共存してきました。ヒトにすむビフィズス菌に50年以上にわたって向き合い、研究の成果を人々の暮らしに役立ててきた森永乳業の研究者たちに挑戦の軌跡を訊(き)きました。

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