第1回Reライフ文学賞最優秀賞「ハルジオンの花」が出版 著者・鷹栖律子さんに聞く

里子のコウヘイさんとの日々 20年の記録

2022.10.02

 第二の人生に巻き起こる家族の物語をテーマにした「Reライフ文学賞」。文芸社と朝日新聞社が昨年度に創設した投稿文学コンテストで、2022年度も10月末まで第2回の作品を募集しています。長編部門の最優秀賞は文芸社から書籍化されることになっており、第1回受賞作の「ハルジオンの花」が9月に出版されました。著者の鷹栖律子さん(81)=栃木県那須塩原市=に聞きました。

鷹栖律子さん

成長も世間の目も 残すのは「私の役目」

 「ハルジオンの花」は里子のコウヘイさんとの20年の日々をつづった作品。鷹栖さんは地元で女性問題などに長年携わってきた。栃木県西那須野町(現・那須塩原市)の議員として活動していたこともある。約30年前にがんになったのを機に、「限りある命を、次代を担う子どもたちのために役立てたい」と思い、里親活動に取り組むようになったという。

 約20年前、2歳10カ月だったコウヘイさんと乳児院で出会った。
 クリスマスソングを「クリチュマチュ」「タンタクローチュ」とたどたどしく歌う声は低くうつろで、クリスマスを心から楽しんでいるようには聞こえなかった。鷹栖さんは胸が締め付けられるように感じ、「精いっぱい可愛がって育てよう」と里親になることを決心した。

 1年あまり経ったころ、なかなか心を開いてくれなかったコウヘイさんが「大好きなおばあちゃんに」とハルジオンの花を手渡してくれた。鷹栖さんはこの瞬間に心がつながったと感じ、やがて成長したときのために育てた記録を残していこうと思ったという。

 文章を書くのが好きだった鷹栖さんは、折々に感じたことを新聞に投稿したり、エッセーにまとめたりしてきた。朝日新聞の「ひととき」欄に、コウヘイさんの幼少期や反抗期を迎えた中学生のころを書いた投稿が掲載されたこともある。

成人式を迎えたコウヘイさんとの記念撮影
成人式を迎えたコウヘイさん(右)との記念撮影=2019年、鷹栖さん提供

 

 コウヘイさんの大学卒業をめどに、自費出版でいいから、これまでの日々を1冊の本にまとめられないかと構想を練っていたが、脳梗塞(こうそく)や大腸がん、パーキンソン病など複数の病気の影響で、2020年12月から約7カ月間入院しなければならなかった。「これだけは書いておかなくては、私の役目が終わらない」と病床にパソコンを持ち込み、ほぼ横になったまま連日執筆を続けた。できあがった時期がReライフ文学賞の募集の時期と重なっていたので応募したところ、「圧倒される作品」(特別選考委員の内館牧子さん)と高い評価を受け、最優秀賞に決まった。

 「ハルジオンの花」には、コウヘイさんがサッカーに打ち込んで成長するなど明るい話だけでなく、「施設育ちの子は預かりたくなかった」と幼稚園側から心ない言葉を言われたことや、小学校時代のコウヘイさんが「あなたが生まれた時の親の気持ち」をテーマに宿題を出されて「僕には書けない」と泣いていたことなど、周囲の無理解や偏見に悩まされたことも率直に記した。

 「単なる成長記録ではなく、社会へのメッセージにもなるようにと思って書いた。里親や里子について、読んだ人が少しでも認識を深めてくれたらうれしい」

 鷹栖さんはいまも車いすを使うなど体に不自由はあるが、次回作の構想を練っている。次はパーキンソン病患者の実態を書きたいという。

 「ハルジオンの花」の単行本を抽選で10名様にプレゼントします。締め切りは10月24日。詳細はこちら

読者会議メンバーから選考委員 11月から公募予定

 Reライフ文学賞は、公募で選ばれたReライフ読者会議のメンバーが選考委員となって、読者賞を選考するのも特徴だ。今年度も11月ごろから選考委員の公募を予定している。

読者会議メンバーによるオンライン選考会

 昨年度の選考会議は今年2月にオンラインで開催。50~70代の6人が、長編部門の入賞候補6作品を事前に読み込んで参加した。

 「六つの作品にそれぞれの作者の熱い人生、熱い思いがこもっていた」「読むほどにそれぞれ味わいが深くて、心をこめて書かれた心情がひしひしと伝わってきた。本当に読みごたえがある」。選考委員はそう振り返った。

 「Reライフ読者賞」に杉村眞知子さん(神奈川県)の「Reスタート 寄りそう日々」を選び、次点となった室土猩さん(東京都)の「春を待つ手紙」にも急きょ設けた「Reライフ読者特別賞」を贈った。

 両作品はReライフ.netで全文を公開中。特別選考委員をつとめる内館牧子さんの講評も掲載している。

<関連記事>

  • Reライフ文学賞ロゴ
  • 「家族のかたち~第二の人生の物語~」をテーマにした小説・ノンフィクションの投稿コンテスト「Reライフ文学賞」では、2022年10月31日まで第2回の作品を募っています。Reライフプロジェクトが文芸社とともに創設した文学賞で、第1回は2251件の応募がありました。人生後半戦を懸命に生きる人たちの奮闘記を通じて、生きる喜びを自らの筆で描き、発信していける場を提供したいと考えています。第1回に続き、内館牧子さんが特別選考委員を務めます。大賞作品は書籍化し全国発売を予定しています。詳しくはこちら(https://www.asahi.com/relife/award)
  • 鷹栖律子
  • 鷹栖 律子(たかのす・りつこ)

    第1回Reライフ文学賞 長編部門最優秀賞

    栃木県出身。1941年1月生まれ。61年、東洋大学短期大学部卒、中学校教諭免許を取得。元栃木県西那須野町(現・那須塩原市)町議会議員。約30年前、がんを患ったのをきっかけに、限りある命を他者のために役立てたいとつよく思うようになり、里親活動に取り組むようになった。里子のコウヘイさんとの約20年間の暮らしを描いた「ハルジオンの花」で、第1回Reライフ文学賞長編部門最優秀賞を受賞。

関連記事

あわせて読みたい

おすすめ記事

PAGE TOP