<連載> ワクチン接種Q&A

オミクロン対応ワクチン、BA.1とBA.5対応、どう違う? 効果は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(29)秋以降の接種動向 ・オミクロン対応ワクチンとは(上)

2022.10.19

 新型コロナウイルスのオミクロン株にも対応したワクチンの接種が本格的に始まりました。第7波は落ち着きをみせてきましたが、欧州などでは一度は落ちついた流行がぶり返してきています。日本の水際対策が緩和された10月以降、ワクチン接種はどうすればいいのでしょうか? 

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  • Q.6:オミクロン対応ワクチンの副反応は?
  • Q.7:オミクロン対応ワクチンは誰が打てるの?
  • Q.8:オミクロン対応ワクチンはいつ打てばいい? 前の接種からの期間は?
  • Q.9:どのオミクロン対応ワクチンを打てばいい? それまでと同じ種類?
  • Q.10:ワクチンは何回打たなければいけないの? 3回や4回じゃ足りない?
  • Q.11:国外の2価ワクチンの接種状況は?

Q.1:オミクロン対応ワクチンとは?

A:新型コロナウイルスの変異株オミクロン株に対する抗体もできるように設計されたワクチンです。9月20日から接種が始まりました。10月17日現在、ファイザー社製とモデルナ社製の2種類が特例承認されています。

 従来のワクチンは、世界的大流行が始まった初期の新型コロナウイルスに対する抗体ができるように設計されていました。パンデミックが長びくにつれ、アルファ株やデルタ株など遺伝情報に変化が起きた変異株がいくつも登場しましたが、ワクチンの効果は大きくは変わりませんでした。

 ところが、第6波や第7波の原因となり、今も国内で見つかるほとんどのウイルスを占めるオミクロン株は、従来の変異株に比べて変異の数が多く、ワクチンの効果が大きく低下しました(詳しくはワクチン連載(13)「オミクロン株、感染倍増の速度は?」や連載(16)「コロナワクチン 3回目接種の効果は? 」、連載(24)「オミクロン株BA.5、ワクチンは効く? 」をご覧ください)。このため、従来株だけでなく、オミクロン株に対する抗体もできるようなワクチンが開発されました。

新型コロナの系統の置き換わり

厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の資料(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000999226.pdf)から抜粋。オミクロン株はBA.1の流行で始まり、8月以降はBA.5が主流になった

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Q.2: 2価ワクチンとは? 新型コロナウイルス以外でもあるの?

A: オミクロン対応のワクチンは、従来のウイルス株とオミクロン株の2種類のウイルス株に対する抗体ができるように設計されています。このように、同じ病原体の2種類の株に対応するワクチンを「2価ワクチン」と呼びます。

 同じ病原体の異なる変異株に同時に対応するように設計されたワクチンが多値ワクチンです。たとえばインフルエンザワクチンは4種類の株(異型)に対応する4価のワクチンです。肺炎球菌に対するワクチンには23価のものがありますし、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスに対するワクチンには9価のものがあります。

 一方、異なる病原体に対応するワクチンは混合ワクチンと呼びます。たとえば、乳児が接種を受ける、ジフテリアと百日ぜき、破傷風、ポリオに対応する四種混合ワクチンがあります。

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Q.3:なぜ2価にする必要があるの?

A: 現時点ではオミクロン株が主流ですが、今後、どのような変異株が登場し、流行するのかわからないため、原型となる従来株にも対応するようにしてあります。

 国内では、新型コロナウイルスはこれまで、1種類の変異株が主流になって流行してきました。しかし、インフルエンザウイルスなど他の病原体では、同時に複数の変異株が流行するものもあります。新型コロナウイルスも将来的にはそうなる可能性もあります。

新型コロナウイルスの変異株の枝分かれ

厚生労働省のパンフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/000999261.pdf)から抜粋

 過去に流行したアルファ株やデルタ株は、異なる系統上(枝分かれ先)にありますが、どちらも従来株対応のワクチンが効きました。新型コロナウイルスの原型からつくられたため、個別株対応のワクチンより汎用性が高いとみこまれ、今後、登場する変異株に対しても、同様の効果をもつことが期待されているわけです。

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Q.4:オミクロンBA.1対応とBA.5対応の違いは?

A:オミクロン株には複数の系統があります。オミクロンBA.1対応ワクチンとBA.5対応ワクチンは、抗体ができるオミクロン株の系統が異なります。

 第6波の原因となったオミクロン株はBA.1系統、その後、第7波の原因となり、現在、国内で流行しているウイルスの大半を占めるのはBA.5系統です。ワクチン製造企業はまず、BA.1系統対応のワクチンを開発し、続いてBA.5系統に対応するワクチンを開発しました。

 米国で一時期、BA.5系統と同時に流行していたBA.4系統は、ウイルスの表面にあるスパイク(S)たんぱく質はまったく同じです。ワクチンの抗体は、Sたんぱく質を標的にしているため、BA.5系統対応のワクチンは、BA.4系統対応にもなります。このため、BA.5系統対応ワクチンは、正式には「BA.4-5対応」と呼ばれます。

 国内ではまず、ファイザー社とモデルナ社のBA.1対応ワクチンが特例承認され、接種が始まりました。10月5日にはファイザー社製のBA.4-5対応のワクチンも特例承認され、10月13日から接種が始まりました。モデルナ社も現在、BA.4-5対応ワクチンの承認を申請中です。

BA.1系統とBA.4-5系統の、スパイクたんぱく質の遺伝子の違い

米疾病対策センターのワクチン諮問委員会の資料(https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2022-09-01/08-covid-oliver-508.pdf)から抜粋。主要な違いが赤字で表記されている

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Q.5:オミクロン対応ワクチンの効果は?

A:BA.1系統のオミクロン対応ワクチンについては、接種約1カ月後にBA.1系統を攻撃する「中和抗体」の量が、従来型のワクチンに比べて1.5倍以上増えることが確認されています。接種した人に実際にどのような効果があるのかという臨床データはまだそろっていません。
 BA.4-5系統対応のワクチンについては、まだ動物実験の結果しかありません。特例承認に際して厚生労働省などは、マウスの実験結果から「現在流行しているオミクロン株BA.5を含む変異株に対して幅広い予防効果が期待される」としています。

 ファイザー社のBA.1対応2価ワクチンの臨床試験(治験)は、従来型ワクチンを3回接種し終えた56歳以上の341人を対象に、従来型ワクチンあるいはBA.1対応の2価ワクチンを4回目接種として打ちました。接種1カ月後、従来型ワクチンを打った人に対し、2価ワクチンを打った人は、オミクロン株BA.1を攻撃する「中和抗体」が1・56倍多くできていました。

ファイザー社オミクロン対応ワクチンの効果

米疾病対策センターのワクチン諮問委員会の資料(https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2022-09-01/07-COVID-Swanson-508.pdf)から抜粋

 モデルナ社の臨床試験は、同社製の従来ワクチンを3回接種し終えた18歳以上の594人を対象に、従来型ワクチンあるいはBA.1対応の2価ワクチンを4回目接種として打ちました。4回目接種の28日後の中和抗体は、4回目にオミクロン対応2価ワクチンを打った人の方が従来型ワクチンを打った人に比べて1・75倍多くできていました。

モデルナ社のオミクロン対応ワクチンの効果

米疾病対策センターのワクチン諮問委員会の資料(https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2022-09-01/06-COVID-Miller-508.pdf)から抜粋

 ワクチンの効果は、中和抗体価だけでは判定できませんが、これまでの知見から、相関関係のあることがわかっています。ただし、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会では、2価ワクチン接種後の中和抗体が従来のワクチンより1.5~1.7倍しか高くないのでは効果が不十分ではないか、という指摘も出ましたが、従来型ワクチンの効果がオミクロン株に対しては大きく下がるため、オミクロンにも対応するワクチンが必要だとして、特例承認されました。

 BA.4-5系統に対応するワクチンのマウス実験では、従来型ワクチンを2回接種した104日後に、従来型ワクチン、BA.1系統にのみ対応した1価ワクチン、BA.4-5系統にのみ対応した1価ワクチン、BA.4-5系統と従来株の両方に対応した2価ワクチンの4種類を接種し、従来株や複数種類のオミクロン株に対応する中和抗体価を調べました。その結果、今回、特例承認されたBA.4-5系統と従来株の両方に対応した2価ワクチンは、オミクロン株BA.4-5系統に対する中和抗体価が従来型ワクチンより2.6倍高いことがわかりました。

オミクロン対応ワクチンのマウス実験

左から順に、従来型ワクチン、BA.1系統にのみ対応した1価ワクチン、BA.4-5系統にのみ対応した1価ワクチン、BA.4-5系統と従来株の両方に対応した2価ワクチン。米疾病対策センターのワクチン諮問委員会の資料(https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2022-09-01/07-COVID-Swanson-508.pdf)から抜粋

 同じオミクロン株の中で系統が異なっても、ウイルスの性質は、別の変異株との違いに比べれば大きくは異ならず、ワクチンの応答も大きくことならないと想定されるとして、ファイザー社のBA.4-5系統2価ワクチンはマウスの実験結果で特例承認されました。すでにオミクロン株BA.1対応のワクチンが、臨床試験の結果に基づいて特例承認されているからです。厚労省は、今後、BA.4-5系統対応の2価ワクチンの接種を進めると同時に、ヒトでの臨床データの提出も求めるとしています。

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 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの4回目接種が本格化しています。感染・重症化予防の有効性は? 副反応への対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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