脳の老化を防ぐ対策は 新井平伊・順天堂大名誉教授が講演

認知症予防に向けて 「記憶対策アカデミーin健脳カフェ」(上)

2022.11.04

 働く世代に向けた「記憶対策アカデミーin健脳カフェ」(森永乳業主催)が9月、認知症予防アルツクリニックPETラボ内(東京・四谷)で期間限定で開催されました。国際アルツハイマー病協会が世界保健機関(WHO)と共同で制定した記念日「世界アルツハイマーデー」に合わせた催しで、多くの人が参加しました。

新井平伊先生
新井平伊先生の講演

 「健脳カフェ」は2021年4月、順天堂大学医学部名誉教授である新井平伊さんが立ち上げた場所です。新井さんは、1999年に当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設し、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した認知症治療の第一人者です。カフェでは認知症になる前の主観的認知機能低下(SCD)や軽度認知障害(MCI)の人を対象に、運動やボディーケア(むくみマッサージ)、エンタメ視聴、カウンセリングなど一人ひとりにあったプログラムを提供しています。

 

 「記憶対策アカデミーin健脳カフェ」では、新井さんが「働く世代のためのもの忘れ・記憶対策」と題して講演したほか、森永乳業の健康サポート栄養士による「腸内環境・食事・生活習慣改善に役立つ情報」と、スポーツクラブ ルネサンスのインストラクターの「科学的な根拠から開発された『シナプロソジー』」の紹介など、「学習」「栄養」「運動」の3部構成で行われました。すべてが、認知症の発症を予防する生活習慣につながるものでした。今回は、新井さんの講演の中から主な発言を紹介します。

 

アルツハイマー型認知症の原因物質は20年以上前から脳内に蓄積

 「脳の老化で一番影響を受ける部位は前頭葉です。脳の司令塔といわれ、自分の欲望をコントロールするところです。意欲や注意・集中、推理、意思決定、情動制御、行動抑制などに関わる部位です。ここをいかに刺激するか、それが脳の老化対策になります。昔は『健常か認知症か』の二分法でした。しかし、今は『健常』『主観的認知機能低下(SCD)』『軽度認知障害(MCI)』『認知症』の4つに分かれています。『健常』は普通に仕事ができるレベルで、『SCD』は、自分だけが気付くレベル。『MCI』は他人にも気づかれるレベル。『認知症』になると仕事などにも支障が出るというものです」

 

 「認知症の中でも最も多いタイプが『アルツハイマー型』で、全体の7割弱を占めています。原因は、アミロイドβたんぱくの蓄積と、タウたんぱくの異常とみられています。進行すると脳全体の萎縮へとつながります。βたんぱくがたまっても無症状な時期があり、MCIの時期を含む認知症の全期間を表す用語として『アルツハイマー病』が使われています」

 

 「70歳で発症する人は、45~50歳ぐらいからアミロイドβの蓄積が始まっているということが最近の研究で分かっています。つまり働く世代、40~50代の方が老年期より認知症を考えるのに重要であると考えます。中年期は『聴力低下』『頭部外傷』『高血圧』『飲酒』『肥満』、老年期には『喫煙』『うつ病』『社会的孤立』『運動不足』『大気汚染』『糖尿病』などを避けることが大切です。そうすることで患者は40%減少するというデータもあります。特に生活習慣病(高血圧、肥満、糖尿病)がある人は治療を続けることが大事です。飲酒やたばこ、社会的孤立などの予防については、世界的に重要視されています。そうすると、SCDやMCIの段階で予防をすると、16~41%回復すると言われているからです」

 

「脳」と「腸」は自律神経で結ばれている

 「近年ホットなトピックが『脳腸相関』です。腸と脳は自律神経で強く結ばれていて、影響を与えあっています。誰でもストレスを感じたりするとおなかがグルグルしたり、下痢をしたりすると思います。これはまさに自律神経が腸のぜんどう運動と関係しているからです。逆に腸内細菌の状況が脳のストレス反応や認知機能にも関係するということがわかってきています。論文数は年々増えております。その中でもビフィズス菌MCC1274に注目しています。アルツハイマー型認知症発症を抑制する可能性がある菌種だからです」

 「国際的に一番信用がおけるエビデンスをまとめた『ALZFORUM』の中でも、サプリメントの中で唯一MCIに効果があるのが『ビフィズス菌MCC1274』として挙げられています。ナレッジワイヤ社(学術コンテンツの著作権処理の会社)も『ヒト臨床試験において単一のビフィズス菌生菌体のみで加齢に伴い低下する認知機能(記憶力)を維持する働きが世界で初めて論文報告された』とまとめています。『腸内細菌による脳腸相関』という観点ではこのビフィズス菌がとても有用なのではないか、と考えています」

 次回は、栄養と運動に関するプログラムについて紹介します。

(ライター・大崎百紀)

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