
「最近なんだか目がかすむ、ぼやける」といった症状はありませんか?
目のかすみは、よほど不快でない限り、つい後回しになりがち。しかし目のかすみは病気のサインということもあり、注意が必要です。その原因や、治し方、病院に行くタイミングなどを理解し、早めの処置をおすすめします。
<目次>
- 1.目がかすむ……考えられる六つの原因とリスク
- (1)目がかすむ原因
- (2)目のかすみはそのままにしないほうがいい? 放置によるリスクは
- 2.目がかすんでいるときは? セルフケアや治療で対処を
- (1)セルフケアから始める? すぐに医師に相談すべき?
- (2)目のかすみに効果的なセルフケア三つ
- (3)医師へ相談するときに知っておきたいこと
- 3.目のかすみは予防が大切! 普段からしておきたい三つのこと
- (1)目を休ませ、目に優しい環境を整える
- (2)紫外線を対策する
- (3)メガネやコンタクトレンズで目をアシストする
- 4.目のかすみは、日ごろの予防と原因に応じた早期治療を
1.目がかすむ……考えられる六つの原因とリスク
「目のかすみ」と言っても人により表現はそれぞれです。一般的な症状は、視野がぼやける、もやがかかった感じがするなど、はっきりと見えない状態を言います。なぜこうした症状が起こるのでしょうか?
(1)目がかすむ原因
① 老眼・乱視などの屈折異常
屈折異常とは、網膜にピントが合わない状態を言います。40代以上になると、加齢により老眼や乱視が生じ、見ているものがぼやけ、はっきりと見えなくなる「かすみ」として感じる人が増えてきます。乱視が原因で、片目だけかすみを感じるということも起こります。
② ドライアイ
私たちの角膜は三つの層からできた涙で覆われていますが、その涙の蒸発のし過ぎで涙の成分やバランスに異常をきたし、涙が不安定になります。これをドライアイといいます。「目が乾く」などの自覚症状がでる人もいますが、実は自覚症状のないドライアイの人も多く、検査時には既に角膜に傷がついているケースもあります。
今や自宅や職場をはじめ、常に冷房や暖房の利いた部屋の中で過ごすことが多いのではないでしょうか。コロナ禍で在宅勤務が長くなり、空気が乾燥した中でパソコンやタブレット端末をじっと見続けるという人が増えています。そうした状態を長時間続けるとドライアイになり、角膜が傷つきやすくなります。これが目のかすみを引き起こす原因にもなるのです。

引用:ドライアイ・ドライアイにおける涙液膜の崩れ(黒く筋状に見えている部分)と眼の表面のキズ(点状に色素で染まっている部分)丨日本眼科学会
③ ピント調節機能障害【眼精疲労】
通常私たちは、レンズ(水晶体)に作用する筋肉(毛様体筋)を伸び縮みさせることにより、レンズの厚みを変えながらピントを合わせています。ところが、この筋肉を使いすぎることにより調節機能が落ちてくると、眼精疲労を起こし目のかすみにつながります。
「目のかすみ」は、加齢による生理現象や生活環境が原因であることが多いのですが、以下のような病気が原因であるケースもあるので、注意が必要です。
④ 白内障・緑内障、ほか目の病気
白内障は、加齢などによって、通常は透明である水晶体に濁りが生じてしまう病気です。濁った水晶体を通してものを見るため、視界がかすんできます。

また、視神経が障害されることで視野が欠ける「緑内障」。病気そのものの自覚症状は感じにくいですが、かすみを初期症状として発見に至るケースもあります。
さらには、網膜の中心部にある黄斑部が病的に変性し、ゆがみや視力低下などの症状を引き起こす「黄斑変性」、瞳孔の周り(虹彩〈こうさい〉や網膜)に炎症が起こる「ぶどう膜炎」などでも、目のかすみを感じることがあります。
⑤ 高血圧や糖尿病による合併症
高血圧で血圧が高い状態、また糖尿病で血糖が高い状態が続くと、全身の細い血管や神経に異常が起こります。そして、網膜の細い血管に障害を与え、出血や血流障害を引き起こし、視力の低下やかすみを感じるようになります。最悪の場合は、失明に至る合併症として注意が必要です。
⑥ 自律神経失調症
「自律神経失調症」は、強いストレスを受けて自律神経のバランスが崩れることにより、さまざまな障害が体内に起こる病気です。一見、目とは関係なさそうに思えますが、自律神経は全身の器官や臓器をコントロールするため、実は目にも、かすみや眼精疲労などを引き起こすことがあります。
(2)目のかすみはそのままにしないほうがいい? 放置によるリスクは
目のかすみの多くは、老眼、乱視、ドライアイ、眼精疲労のことが多いですが、早期に適切な処置をすることで、目への負担は軽減でき、症状も改善しやすくなります。
一方、軽い症状でも、放置してしまうと眼病や目以外の病気の発見が遅れることもあり、できるだけ早めのケアが必要です。
2.目がかすんでいるときは? セルフケアや治療で対処を
「目がかすんでいる……」そう感じたときに、すぐに病院に行くべきなのでしょうか?
自分でできるセルフケア、病院に行くべきタイミング、そして医師に相談する前に確認するとよいチェック項目を準備しておくと、診断に役立つことがあります。
(1)セルフケアから始める? すぐに医師に相談すべき?
目のかすみを感じたら、まずは以下のセルフケアを試してみましょう。それでも解消されない場合は眼科専門医の診断をおすすめします。
ただし、症状の感じ方は個人差があります。該当しない場合でも、少しでも気にかかることがある場合は、すぐに医師に相談してください。
(2)目のかすみに効果的なセルフケア三つ
①目を休める
縮まった目の奥の筋肉をリラックスさせるために、遠くの景色を見るようにしましょう。またパソコン、タブレットの時間は控えめに。睡眠をしっかりとり、マッサージで目のツボ周辺をほぐすことも、大変有効です。
②目を温める
目の使い過ぎで目周りの筋肉が硬くなり、血行が悪くなることがあります。ホットタオルや市販のホットアイマスクなどを上手に利用し、目を温めてください。眼精疲労による目のかすみならば、休める・温めることで改善が見込めるでしょう。
③市販の目薬を使う
疲れ目やドライアイ対策の目薬を使ってみましょう。ビタミンB入りの目薬は目の新陳代謝を促し、眼精疲労によるかすみの解消も期待できます。また目の表面の潤いが充足されるため、ドライアイによる不快が軽減されるでしょう。
ところで、さしたときに清涼感のあるクール成分入り目薬を好む人がいます。もちろん一定量の有効成分が入っていますが、清涼感は単に感覚(心理)的なところが多いでしょう。症状改善に有効な濃度の目薬は、医師処方のものが確実ですが、薬局などで買う場合は医薬品(OTC医薬品)を選ぶことをおすすめします。
(3)医師へ相談するときに知っておきたいこと
上記のセルフケアをしても改善がない場合は、なるべく早期に医師に相談するようにしてください。次に医師へ相談するときに知っておくとよいことをご説明します。
①医師へ相談するときのポイント
まずは、相談しやすい眼科専門医のいる病院を選びましょう。エイジング世代は、定期的なチェックが必要。通院しやすい場所、また先生との相性なども大切なポイントです。
また、症状により、散瞳(さんどう)検査(目薬を使って瞳孔をひらき眼底を詳しく見る検査)をすることがあります。診察が終わる間際よりも、余裕を持って検査ができる時間の来院がよいでしょう。
あわせて、医師にかかる前に、症状をメモやスマホに残しておくことをおすすめします。診察中、言うべきことを忘れ、後から思い出すという経験をされた人も多いのではないでしょうか。どんな時間・何をしている時にかすむのか、一瞬で戻るのか・ずっと続くのか、また両目か片目なのか、などご自身でまとめておくと、スムーズな診療につながります。
②目のかすみに対して行われる治療方法
目のかすみに対して行われる治療、かかる期間や費用は、原因によって異なります。症状ごとにご紹介しましょう。なお、記載した費用はあくまで参考値となります。
・屈折異常(老眼・乱視)
老眼や乱視の場合は、目そのものの治療というより、眼鏡やコンタクトレンズでの矯正が基本方針となります。費用は5,000円からが一般的です。
・ドライアイや眼精疲労
環境改善や目薬での治療が主流となります。またドライアイの程度により、涙点プラグを使うこともあります。これは、涙の出口(涙点)にプラグでふたをすることで目の表面に涙が留まるようにする治療で、ドライアイの目薬と併用して使います。改善にかかる時間と費用は個人差が大きくなります。

・白内障
白内障がかすみの原因の場合は、白内障手術を受けることですぐに解消できます。費用相場は片目で6万円(3割負担の場合)です。眼内に入れるレンズにより変動します。
・緑内障
緑内障の場合は、基本的には半永久の点眼治療となりますが、適切に点眼をしていくことで、視力の低下やかすみなどを抑えていくことができます。早期の発見が最も大切です。
・黄斑変性
網膜内や網膜下の異常な血管(新生血管)が原因で視力低下、かすみやゆがみが生じますが、硝子体内注射をすることで、症状を抑えることができます。通常、数回繰り返すことで、効果が確実に表れてきます。片目で1回あたり6万円からが相場でしょう。
・糖尿病による合併症「糖尿病網膜症」
改善に困難を極める治療です。度々の診察やレーザー、硝子体内注射、そして手術が治療法となりますが、やはり糖尿病自体の治療が鍵を握ります。また、糖尿病が改善したとしても、目のチェックは少なくとも5年は続けることを推奨します。
3.目のかすみは予防が大切! 普段からしておきたい三つのこと
目のかすみによって考えられる症状はさまざまであり、セルフケアで改善が見られることもあれば、費用をかけて治療をしなければならないこともあります。
そのため、日頃から以下のようなことを心がけ、目のかすみを予防することが大切です。
(1)目を休ませ、目に優しい環境を整える
スマホやパソコンなど近くを見る場合、20分見続けたら/20秒間/20フィート(6m先)を見て目を休めましょう。また、特にエアコンの利いた部屋で見続けるときは、手元に目薬を置き、適宜点眼しながら作業をすることで、かすみを予防することができます。
(2)紫外線を対策する
紫外線は目の中にダメージを与え、それが蓄積されると、さまざまな眼病につながるので注意が必要です。特に、白内障の進行が早くなるケースがよく見られます。光の反射が激しい芝の上、海、雪の上でのスポーツなどをする場合はもちろん、日頃から、サングラスやUVカットのできるコンタクトを装着したり、つばの広い帽子をかぶったりして、紫外線から目を守りましょう。
(3)メガネやコンタクトレンズで目をアシストする
目の筋肉の負担を軽くするために、積極的にメガネやコンタクトレンズでアシストしてあげるのもよい方法です。実は近年、老眼が始まる年齢、または進行してきた人は「遠近コンタクトレンズ」を使用するのがトレンド。メガネを持ち歩く必要もなく、快適に過ごすことができます。
また、眼精疲労が強い人は、ピント調節の負担を軽減できるコンタクトレンズの使用もよいでしょう。通常のコンタクト同様、遠くを見たときに視力を矯正できるうえ、近くを見たときのピント調整もできるレンズです。目の筋肉への負担が軽減され、かすみ対策にも有効です。
4.目のかすみは、日ごろの予防と原因に応じた早期治療を
目のかすみは、さまざまな原因で起こることがおわかりいただけたでしょうか。病気を進行させないためにも、単なる疲れ目と放置せず、セルフチェックや早めの医師相談を心がけましょう。
平均寿命は年々伸びていきますが、生涯視野も正常に保っていきたいもの。日ごろのケアは、ぜひしっかりとしていきたいですね。
(シンガポール日系クリニック 眼科専門医・岡野 喜一朗)
関連記事
あわせて読みたい
おすすめ記事
\ アンケート・モニター応募受付中! /
アンケート・モニター
-
-
[受付中]「ブルーゾーン 世界の100歳人に学ぶ」と「自分史上最高の柔軟性」贈呈
2023/01/31
-
-
[受付中]自分らしくいこう!「ポジティブな生き方」に関するアンケート
2023/01/24
-
-
[受付中]528点の写真掲載「羽生結弦 アマチュア時代 全記録」をプレゼント
2023/01/17
\ 学ぼう、参加しよう!ただいま募集中 /
講座・イベント
-
-
[受付中]「Reライフフェスティバル2023春」を取材しませんか? 読者リポーター募集
2023/02/03
-
-
[受付終了]「お孫さんの教育」に関する座談会の参加者募集
2023/01/17
これまでの活動をリポート
-
-
家事を楽にするのは、家族の気持ちと「ありがとう」の言葉
2023/01/12
-
-
ウェルビーイングのための腸活セミナー 見逃し配信中!
2022/12/19
-
-
あの日 よみがえる一枚 第1回「こころの風景」秀作を紹介
2022/12/04