<連載> 今すぐできる終活講座

老後の不安を消す最強の方法は、できるだけ長く働き続けること

自分らしいお金の使い方②

2023.01.30

 「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど、何からやればよいか迷っているという人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために、遺贈寄附推進機構代表取締役の齋藤弘道さんが今すぐ役立つ終活の基礎知識やヒントを紹介します。終活をめぐる悩みは人ぞれぞれですが、なかでも大きいのがお金のこと。お金の不安を少しでも減らして、自分らしいお金の使い方ができるように考えていきましょう。

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元気に長く働けば、さまざまな老後資金の制度を利用する上でも有利に。

お金の状況は人それぞれ

 お金の使い方や寄付の話をすると「そんな余裕はない」と言われることがあります。お金の状況は人それぞれです。資産が何億円もある富裕層の人から、生活保護を受けている人まで、状況はさまざまですから、お金の使い方についても一般論で語ることは難しいと思っています。

 せめて「お金持ち向け」「普通の人向け」「お金のない人向け」くらいに分けて考えないと、有効な対策にはなりません。特にお金持ちは、「企業オーナー」「地主」「金融資産家」などによって、考えるべきポイントが異なります。そこで、ここでは富裕層向けに限定した「お金の使い方」を考えるのではなく、「普通の人」を中心に考えたいと思います。

やみくもにお金を増やしても幸せにはなれない

 前回、お金の収支はダイエットに似ているとお伝えしました。収入(摂取カロリー)が支出(消費カロリー)よりも多ければ貯蓄(脂肪?)になります。この収支の積み重ねが現在の姿であり、将来の姿を予測することもできます。収支プラスの状態がずっと続くことが予想され、おなかつ手元にある程度の蓄えがあれば、お金の不安はないわけです。そうは言っても、「普通の人」がこの状態を実現することは、年齢にもよりますが、なかなか難しいものです。

 ここでは終活をテーマにしていますので、ある程度の年齢以上の方を想定しています。収入を増やす方法でも、「起業しましょう」「キャリアアップしましょう」「貯蓄を積極投資しましょう」とはご提案しません。

 また、やみくもにお金を増やすこともオススメしません。お金持ちになることが、必ずしも幸せになることではないことは皆さんもよくご存じだと思います。お金を増やす目的は、あくまでも「自分らしいお金の使い方」を実現するためで、お金はその手段だと考えています。

 チャプリンも、映画『ライムライト』の中で「人生に必要なものは、勇気と、想像力と、そして、少しのお金。」と言っています。チャプリンは子供の頃にとても貧しい経験をしているので、「お金は大切だ、絶対に必要だ」という意味で言っているようです。

収入を増やす方法は長く働くこと

 ある程度の年齢になった時に、期待できる収入にはどのようなものがあるでしょうか。

・給料

・事業収入

・配当収入

・公的年金

・私的年金

 このようなものがありそうです。

 この中でも、会社からもらう給料や個人事業で得る事業収入があれば、大きな支えになることが期待できます。退職時期を遅らせる、一度退職しても再雇用や別の仕事をして稼ぐことです。要するに「できるだけ長く働く」ことが肝要です。「そんなの当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、単に収入が得られるだけでなく、他の収入との関係でも有利になります。

やっぱり給料は最強

 例えば、会社員であれば、70歳まで厚生年金に加入できますので、会社で働いていれば給料の一部が年金の原資となり、その後の年金受取額が増えることになります。厚生年金の保険料は、事業主(会社)と被保険者(会社員)が半分ずつ負担しますので、全額を自力で積み立てるのに比べて2倍のペースで積み上がることになります。収入が増える以上の効果があるわけです。

 また、以前の年金制度では、働きながら年金を受け取る「在職老齢年金」は、60歳〜64歳までの間は、給料と年金の合計が月額28万円を超えると、厚生年金が減額される措置がありました。そこで、その期間は給料をあえて減らした働き方をする人もいました。しかし、2022年4月からは、65歳以上に適用される月額47万円超で年金が減額される制度と一本化されて、60歳以上の人に適用されることになりました。「働くのが損」という状況が解消されたことにより、ますます働いた方が有利になりました。

 私的年金には「iDeCo」「つみたてNISA」「企業年金」「個人年金保険」などがあります。企業年金には「確定給付年金」と「確定拠出年金」がありますが、いずれも掛金は企業が負担します。加入者(会社員)に負担はありませんので、ここでも働くことは有利です。

 iDeCoは正式名称を「個人型確定拠出年金」といい、60歳まで加入でき、掛け金の全額が所得控除の対象になり、運用益も非課税というお得な制度です。ただし、年金制度との関連があり、被保険者の資格(会社員・自営業者・専業主婦など)や企業年金の有無により、掛け金の上限額が定められています。また、60歳までは引き出すことができません。

 iDeCoは無職の人でも加入することはできますが、所得税がかかっていない人にとっては、掛け金の全額が所得控除できるメリットがありません。

 つみたてNISAは、20歳以上であれば何歳でも利用でき、運用益が非課税になる制度です。引き出しの年齢制限はありません。無職でも加入できますが、収入がないと積み立てる原資がないでしょう。

 このように、長く働くことが、さまざまな老後資金の制度を利用する上でも有利に働きます。また、働くことで社会との関わりが生まれ、お金の使い方の面でも、多様な生きた使い方を考えられる機会になるでしょう。

 次回は年金の制度について考えていきます。 

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  • 齋藤弘道
  • 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

    遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

    信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

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